「このマンガがすごい!」にランクインしなかったけどすごい! 2014――を選んでみました:虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第11回(2/4 ページ)
第1位「事件記者トトコ!」(丸山薫)
今年の1位はマンガ誌「ハルタ」(KADOKAWA)にて連載中、丸山薫先生の「事件記者トトコ!」(第1巻、以下続刊)です。
レンガ造りの建物、気球で逃げる悪党団――「大正浪漫」という言葉がよく似合うレトロスペクティブな世界観は、この種のレトロ好きにとってまさに直球ど真ん中。ジャンルは違いますが冬目景先生の「幻影博覧会」(幻冬舎)の世界が好きな人ならきっと楽しめるはず。
悪役でさえ憎めない魅力的な登場人物たち、全く嫌みのないほのぼのとしたストーリー展開、丁寧に描き込まれた画面構成、どれを取ってもハイレベルで、普段あまりマンガを読まない人でも老若男女問わず安心しておすすめできる良作です。
作品の見どころは数あれど、やっぱり主役の新米記者「トトコ」こと薙澤兎々子(なぎさわととこ)の存在感が飛び抜けています。食いしん坊で天真爛漫、好奇心旺盛だけど、記者としては半人前どころか十分の一人前、それでいて憎めない愛らしさは決して揺るがない本作の軸。タイトルを「トトコ」ではなく、「トトコ!」としたのは大正解です。
いやもうね、本当にかわいいのですよ。周りから記者の才能ゼロと言われるトトコに、お菓子を与えて甘やかす敏腕美人デスクの気持ちがよく分かる。くるくる変わる表情でコマの中を所狭しと駆け回るトトコを見ているだけでも、十分楽しめます。
「このマンガ〜」は毎年、読者の意表を突くアイデア性ある作品が高評価を受ける傾向が強く、本作のような、マンガ読みから見て「素直な作品」にはなかなかスポットライトが当たりづらいところがあります。
そういう意味でも、「トトコ!」はまさに「ランクインしなかったけどすごい!」の1位を飾るにふさわしいマンガだったと言えます。同じ「ハルタ」掲載作として、今年は「坂本ですが?」(佐野菜見)が広く注目を集めましたが、社主は「トトコ!」を強くプッシュします。多くの人にとって今はまだ「トトコ?」かもしれませんが、来年の今頃はきっと「トトコ!」になっているはずです!
第2位「彼とカレット。」(tugeneko)
第2位はIT情報誌「週刊アスキー」(KADOKAWA)にて連載中の4コママンガ「彼とカレット。」です。
本作の主役は家政婦ロボのカレットさんと、家政婦が送り込まれた下宿に住む大学生のイケダくん。いや、失礼しました。正しくは「家政婦ロボなのに一切家事をしない暴力ロボのカレットさんと、すがすがしいほどのエロ大学生イケダくん」でした。
4コママンガなのでストーリー的なものはあまりないですが、本作の見どころはセクハラ大学生イケダくんのくじけぬエロ心……ですかね。ただ、エロと言っても生々しいものではなく、四季折々に合わせてスカートをのぞいたり、胸やお尻を触ったり、スク水や靴下の匂いを嗅いだりといったエロに目覚めたばかりの中学生的な行為がほとんど。またその相手はカレットさんだけでなく、カレットの生みの親・コバヤシさん、カレットの弟機・コロンくんの主・ミヤちゃんなど、女であれば誰にでも分け隔てなくセクハラに乗り出します。
当然その代償は高くつくわけで、コバヤシくんは毎回セクハラの報いとして壁に血痕が残るほど殴られ、指を折られ、口から血を吐かされ、埋められ、2階から投げ飛ばされ、まるで「サウスパーク」のケニーのごとく酷い目にあわされます。それなのに、くじけることなくまた次の新たなセクハラに臨むのは男という生き物の性(さが)でしょうか。
もちろん、全ページ全4コマがセクハラで埋め尽くされているわけではなく、カレットさんとイケダくんとの日常生活も描かれています。けれどもこのカレットさん、家政婦として働かないのはもういいとして、いつも眉間にしわを寄せながら「知るか」「アホか」とぶっきらぼうに話す様子は、どう見ても無愛想な大阪のおっさんです。そしておっさん化しているはずなのに、「スイカの種を食べたらお腹から芽が出てくる」というイケダくんの冗談を真に受けておびえてしまう子どもっぽさもまた良し。
本作を第2位に選んだのは、tugeneko先生の描くパステル調のかわいいキャラたちと、それに不似合いな暴力描写というギャップの魅力、そして「このマンガ〜」ではあまり4コママンガがノミネートされないという事情も含め、これもやはり「ランクインしなかったけどすごい!」にふさわしい作品だと思ったからです。
ちなみに、tugeneko先生は今年2作目となる4ページマンガ「すくみズ!」(全1巻/星海社)も上梓されているので、「カレット。」が気に入った方はこちらもぜひ読んでみてください。1巻で終わらせたのがもったいないくらい、いい感じに仕上がっていますよ。
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