虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!:恋愛戦線、中破大破総撃沈の残念ラブコメマンガ――第3回「青春しょんぼりクラブ」
主要キャラの1人、イケメン女装男子の隠岐島に影響されて(?)社主も女装してみました。
ねとらぼ読者のみなさん、こんにちは。虚構新聞・社主のUKです。長く暑かった8月を乗り越え、9月になりましたが、いかがお過ごしでしょうか。まだまだ残暑は厳しいですが、季節は秋へと移り変わる今日この頃です。
秋と言えば言うまでもなく「スポーツの秋」「芸術の秋」そして「食欲の秋」。いいですね。それに加え、異世界には「恋愛の秋」という言葉もあるそうです。社主は記者として十数年、社会と関わってきましたが、きっと都市伝説の類でしょう。そんな秋など経験したことがありません。
さて連載「虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!」の第3回は、そんな恋愛の秋(仮)にぴったりの少女マンガ、アサダニッキ先生の「青春しょんぼりクラブ」(1〜6巻、以下続刊)を紹介します。「しょんぼり」は「月刊プリンセス」(秋田書店)にて好評連載中です。まずは簡単にストーリーを紹介。
ストーリー紹介
好きになった男子に告白しようと思うと、目の前に別の女子が現れ、意中の男子がかっさらわれてしまう――主人公の桃里にまは、“超当て馬体質”な女子高生。
そんな特異体質の彼女に近づき、「もっと観察させてほしい」と声をかけたのは、男女の恋愛を調査するために結成した「青年心理学研究会(青心研)」部長で理事長の娘・三刀屋依子だった。
同じく部員で見目麗しい女装男子・隠岐島武、美形なのに2次元しか愛せない・簸川諒を加えた青心研メンバー4人と、それを取り巻くやっぱり少しヘンな人たちが繰り広げるラブコメ群像劇。
……というわけで、前回の「僕らはみんな河合荘」に引き続き、今回も個性的な人物満載でお届けします。
まず、青心研のメンバー4人に共通するのは、彼ら全員冒頭3話で次々と失恋、轟沈するところ。まさしく「青春」で! 「しょんぼり」な! 「クラブ」! その看板に偽りはありません。というより、この看板でストレートな純愛マンガだったら逆に詐欺です。そして4人のメンバーそれぞれに、それぞれの失恋エピソードがあるわけですが、社主としてはイケメン女装男子・隠岐島の話が最も心に残りました。
そもそも隠岐島が女装するきっかけになったのは、幼なじみで現在女子大生・美保さんの影響。モテすぎた反動で筋金入りの男嫌いになってしまった彼女のために、彼は髪を伸ばし、女子の服を着ることを続けてきたのです。
そんな美保さんが、高校の文化祭を訪問。依子とにまに気づいて声をかけてきた彼女の隣で腕を組んでいたのは、何と隠岐島とは似ても似つかぬ体育会系のマッチョ男。普通の男ならともかく、よりにもよって憧れの美保さんが隠岐島とは真逆のタイプの男と付き合っていることを知ってしまうのは酷だろうと察した2人は、美保さんを隠岐島に会わせないよう奔走します。
隠岐島のクラスが開いているメイド喫茶に興味を持った美保さん。それに対して2人は「メイド喫茶にはいかつい坊主の野球部員しかいません!」「メイド喫茶には青汁しか置いてませんっ!」などと言い訳し、何とかしてメイド喫茶に近づかせないよう頑張りますが、その努力も空しくついに美保さんはメイド姿の隠岐島と対面してしまいます。しかも今日マッチョ男からプロポーズされ、婚約者になったという報告つきで。
そんなショッキングな報告を受けたにもかかわらず、隠岐島は静かにやさしく微笑み、「そう、おめでとう」とだけ語りかけ、そして彼女のために伸ばしてきた髪を切りました。
社主はこのエピソードにやられました。これを読んだ当時、まだ単行本になっていなかった「しょんぼり」ですが、単行本化してから、この回は何度も何度も読み返しました。社主にも初恋の幼なじみを想って何年も積み重ねてきたことが、一瞬のうちに目の前で崩れていった経験があるのです。
このように書くと、少し重いマンガのように聞こえるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
このマンガの魅力は、叙情的ラブだけでなく、ある意味それを上回るコメの面白さです。マンガにおいて、恋愛要素はある種テンプレ展開が可能ですが、コメディにはテンプレなど存在しません。それゆえコメディを通して作者のセンスが如実に見えてくるのです。社主もこれまでいろいろなラブコメを読んできましたが、この2つを高いレベルで両立させている作品は、本当に指折り数えるほどしかありません。
「本当に素晴らしいラブコメは読者の男女を問わない」というのが社主の持論ですが、この「しょんぼり」もまた、そういった理由で男子読者にもおすすめできる作品です。
中でも印象的だったのは、「付き合っては振る」を繰り返す悪女・三郷香菜とにまがケンカするシーン。女子のケンカといえば、それこそ靴の中に画びょうを入れるとか、制服が盗まれるとか、ある日を境に急にクラスメイトから無視されるとか、基本的に陰湿なものが多いのですが、「しょんぼり」ではにまと香菜は胸ぐらをつかみ合い、殴り合い、髪を引っ張り……と物理的に戦います。しかもにまは香菜がまだ話している途中に不意打ちでビンタをかますという主人公にあるまじき先制攻撃。「どこのリクームだよ!」と、これにはさすがにツッコまざるを得ませんでした。
それにしても女子がガチで取っ組み合って殴り合う恋愛ものなんて、前代未聞、まずありえません。しかも2人がボロボロになるまで取っ組み合った結果、お互い相手を分かりあい仲良くなるなんて、今日日少年マンガですら見かけない展開です。でも、そこが良い。最初はひどい悪女に思われた香菜も、このケンカをきっかけとして、以降ツンデレ風の良女子になっていきます。
この後ストーリーは、青心研存続の危機、世話焼きの生徒会長(通称「オカン」)登場、にまの初デート、偽隠岐島出現など次々と展開。またそれに伴って愉快な仲間たちもどんどん登場していきます。どれも面白いエピソードぞろいなので、詳しくはぜひ手に取って確かめてみてください。
最後に少し補足になりますが、アサダニッキ先生は、現在この「しょんぼり」のほかに「BE・LOVE」(講談社)にて「ナビガトリア」(1巻、以下続刊)も連載しています。こちらは先生の地元・島根を舞台にした、対象年齢が少し高めの恋愛もの。例によってコメな要素も含まれていますが、「しょんぼり」と比べると、少し落ち着いた大人の恋愛を描いています。
そして最後の最後。「しょんぼり」の最新6巻の発売日である8月16日、京都・恵文社にて「アサダニッキWEBサイン会」がありました。先着50人でアサダ先生のサイン入り単行本が手に入るというまたとない機会なので、滋賀在住の社主は電車に乗って駆けつけ、一番乗りで申し込みを済ませました。どうやら9月中に手に入るとのことなので、手元に届き次第、このコーナーでご紹介(と言う名の自慢を)します。
それにしても現在、サイン会と言えば、そのほとんどが東京都内での開催なのはなんとかならないでしょうか。好きなマンガ家先生のサイン会の告知を見ては、その会場が池袋や秋葉原であることに血の涙を流す毎日です。早く青山あたりに土地を買って東京支社を立ち上げ、逆にマンガ家先生を呼びつけてサインを書かせられるような身分になりたいです。ビッグになろう。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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虚構新聞の社主UKが知られざるパーソナリティを(思わず)吐露しつつ、大好きなマンガを語りまくります。
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