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» 2014年01月10日 10時00分 公開

少女マンガ重量打線「別マ」で今1番応援したいヒロイン! 真面目で報われない女子の恋描く「藤代さん系。」虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第12回

「そうだ 私は 藤代さん系 真面目で 報われなくて でも ひたすら頑張る系」――「普通の女の子」を地で行く主人公・藤代さんの恋の行方は!? 連載「虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!」新年1発目は初心に帰ってイチオシの少女マンガをご紹介します。

[虚構新聞・社主UK,ねとらぼ]

 ねとらぼ読者のみなさん、あけましておめでとうございます。虚構新聞の社主UKです。

 2014年の今ここにこうして掲載されているということで、何とか10週打ち切りコースを乗り越えることができました。これもひとえにみなさまからの「虚構新聞の人間が事実を書くんじゃねえ!」というお叱りのおかげです。今後は「こち亀」を目標に、このねとらぼがITの藻くずと化すまでマンガを紹介していくつもりです。本年もどうぞよろしくお願いします。



 まずは、昨年末に掲載した第11回「『このマンガがすごい!』にランクインしなかったけどすごい!2014」についてですが、ありがたいことに関係各方面から社主の想像を超える大きな反響をいただきました。

 PCからこのねとらぼを開いてもらうと、右側に「ねとらぼアクセスランキング」としてアクセスの多い上位10記事が表示されるのですが、昨年8月の連載開始以降、社主は「いつかこのランキングに入ってやる……」と、虎視眈々とランクインの機会をうかがっていました。とは言え、ねとらぼお得意の「子猫がスヤァ……」のような破壊力ある動画記事には到底かなわず、もはや「子社主がスヤァ……」しか道が残されていないのではないかと、半ばあきらめつつ執筆を続けてきました。

 しかし、前回記事の掲載後、まもなく美人編集M女史から「ランキング入りましたよ!」との連絡をいただきました。それではベスト10入賞の瞬間をご覧ください。

画像 お分かりいただけただろうか

 というわけで、晴れて念願のランクインを果たすことができました。多くの方にご覧いただき、ありがとうございました。

 また、掲載後には予想外の出来事もありました。

 第1位に選んだ「事件記者トトコ!」の丸山薫先生、2位「彼とカレット。」のtugeneko先生、5位「向ヒ兎堂日記」の鷹野久先生、8位「千歳ヲチコチ」のD・キッサン先生にはそれぞれご自身のツイッターのアカウントから、またほかの作品についても連載誌編集部のアカウントから本連載をご紹介くださいました。ぶっちゃけ一個人が気に入ったマンガを紹介しただけなので、入賞したところで何の権威も栄誉もないのですが、それでも先生方には喜んでいただけたようで、社主としても頑張って書いてよかったと、その喜びをかみしめています。

 これら10作品は本当にどれも面白いと自信をもって太鼓判を押せるものばかりなので、マンガ好きの方もそうでない方も、だまされたと思ってぜひ読んでみてください。

新年1発目は初心に帰って少女マンガです

 さて、今年最初に取り上げる作品は、初心に帰って少女マンガ誌「別冊マーガレット」(集英社)からお届けします。同誌からの作品紹介は第4回「花と落雷」(渡辺カナ)に続いて2度目になります。

 「別マ」の愛称で知られる「別冊マーガレット」は、大ヒット作「君に届け」(椎名軽穂)を筆頭に、「このマンガがすごい!2013」オンナ編で1位に輝いた「俺物語!!」(原作・河原和音、作画・アルコ)、現在人気急上昇中の「オオカミ少女と黒王子」(八田鮎子)、渡辺先生の新作「ステラとミルフイユ」、アニメ化が決まった咲坂伊緒先生の「アオハライド」など、読みごたえある話題作がひしめき合う総合力の高い少女マンガ誌。また1月特大号では、別マ50周年を記念し、尾田栄一郎先生、荒木飛呂彦先生など「週刊少年ジャンプ」の連載陣による「超豪華トリビュート別冊ふろく」がついたことでも話題を集めました。

 そんな超重量打線に目を奪われがちな「別マ」ですが、昨年の2013年6月号から、少し毛色の違う2作品が同時に連載を始めました。

画像 「藤代さん系。」です

 1つ目は尾崎あきら、改め、オザキアキラ先生の「ハル×キヨ」(1巻、以下続刊)。本作はもともと読み切り短編だった「キヨハル」(「太田川純情ラバーズ」所収)がレギュラー昇格した作品です。先生の単行本は、社主好みのツンな眼鏡女子が登場する「あたしのバンビ」(全1巻)をきっかけに買い始めましたが、この「ハル×キヨ」も「高飛車メガネ少年×気弱な巨人女」という変化球的なシチュエーションかつ、そもそもこんな2人で恋愛が成り立つのかというところも含め、続きが気になるラブコメ作品です。

 そしてもう1作は、湯木のじん先生の「藤代さん系。」(1〜2巻、以下続刊)。どちらを紹介するか最後まで悩みましたが、本作が先生にとって初めての連載作品ということもあり、応援の意味も込め、今回はこちら「藤代さん系。」をご紹介します。

真面目なのに報われない、華もない……「藤代さん系。」の恋

 先ほど少し触れた「君に届け」などでもそうですが、少女マンガについて、みなさんの周りにこんなことを言う人はいませんか。

 「自分は平凡な女で恋愛が苦手だとか、男に興味がないとか、性格に問題があるって言っても、ヒロインは元々の素材がいいから付き合えるんだよ。ブサイクで同じことやってみろ」――。

 こういう無粋なことを言うのは大抵男ですが、「※ただしイケメンに限る」の女子版と言ったところで、確かに一理なくはない。「君に届け」の爽子も「となりの怪物くん」の雫も、服のセンスはともかく、見た目は平均より上なので、しかるべき処置を施せば2人とも化けます。と言うより、そもそもこの種の指摘は少女マンガにおいてはタブーなのです。それを言ったらお話が成り立たない。

 では、その素材までもが本当に十人並みだったら……?

 容姿に華のない女子は少女マンガのヒロインになれるのか――。最近ヒットした少女マンガのヒロインたちが軒並み「性格に難あり、だけど基本的にかわいい」だったことを考えると、「性格は普通、見た目も普通」な女子はイケメン男子とどんな恋愛をするのか。これはとても興味深いテーマです。

 そんな偏差値50ど真ん中な女の子をヒロインに据えたのが、この「藤代さん系。」なのです。というわけで、まずは本作のヒロイン藤代かよさんをご覧ください。

画像

 地味な見た目と真面目な性格、「普通の女の子」を地で行く藤代さん。オタク的観点ならオプションとしてアホ毛の1本でもつけてあげたくなるほどに普通です。

 そんな彼女の隣りの席に座るのは、遅刻とサボリの常習犯ながら成績は常に学年トップ、本気を出せば運動能力も上々の久世静。彼にとって、まじめに勉強してもテストは中の下、そのうえ運動神経もにぶい藤代さんは興味深い存在らしく、以降藤代さんが何か話すと「フーン、面白いこと言うね」「フーン、いいねそういうの」など、一定の距離は置きながらも、次第に藤代さんとの関わりを深めていきます。

画像

 その結果、久世くんがたどり着いたのは、タイトルにもなっている「藤代さん系」という言葉。そしてその意味は「真面目で報われない系」。身もふたもなくそう言われた藤代さんは、ショックで一晩眠れなくなるものの、「人をむやみに嫌ってはいけないよ」というお父さんの教えのため、久世くんを憎むわけにもいかず……。どれだけ律儀なんだ、藤代さん。

 その後、クラスで着る体育祭の衣装デザインも、頑張って悩んで描きあげた藤代さんの案は0票。そして採用されたのは10分ほどであっさりと描いた久世くんのデザイン。まさに真面目で報われない藤代さん系を象徴するかのようなエピソードで、これまで「人は人、自分は自分」とマイペースを貫いてきた藤代さんも、さすがに目に涙を浮かべてしまいます。

 たまたまその姿を見てしまった久世くんですが、この時、彼が藤代さんをバカにしていたのではないことが分かります。確かに才能が努力を上回るという世の中の不条理はあるけれど、だからと言って久世くんは努力する藤代さんを見下しているわけではなかったのです。久世くんの言葉を聞いた藤代さんは立ち直り、自信を取り戻します。

そうだ

私は

藤代さん系

真面目で

報われなくて

でも ひたすら頑張る系

 「真面目にやったけれど結果が出ない」「いくら努力しても才能には勝てない」というのは、残念ながら一面の真理ではあります。しかし、だからと言って、努力が無駄になるわけではないのです。久世くんのように、その「ひたすら頑張る系」の姿に好意を示してくれる人は必ずどこかにいるのです。

 よく指摘されることですが、昨今のマンガ、特に少年マンガでは「努力より才能」「努力より素質」が重視された結果、スポ根ものが廃れ、また修行という概念も影をひそめるようになりました。「汗をかく」が読者の共感を呼びにくくなったのです。社主も幼いころ、手足に重りをつけて走ったり、傘を使った天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)や二重の極みを試してみたりしたクチですが、近頃はそういう「ひょっとして自分でも頑張ればできるんじゃないか」と思わせるような作品が減ってしまったように思います。残念ながら社主の体はゴムのように伸びないし、ポテチの袋に小型テレビを隠すような天才的知能もありません。

 そう言う意味では、本作「藤代さん系。」は、意外にも少年マンガが切り捨てつつあった「努力すること」、そしてそれがテストの点数やアンケートの票数という目に見える結果として報われなくても、その懸命に取り組む姿を見てくれる人は必ずどこかにいるのだという、才能至上主義とは異なる希望を与えてくれる作品なのかもしれません。

 冒頭で藤代さんの見た目と才能を「偏差値50ど真ん中」と書きましたが、才能のかたまりである久世くんを引きつけた彼女の魅力は、きっと自分にはない「努力値」という隠しパラメーターだったのでしょう。「藤代さん系」という言葉がいつの日か「真面目がいつか報われる系」という意味になればいいなと思いつつ、これにて筆を置きます。

 今回も最後までお読みくださりありがとうございました。


 あ、書き忘れていましたが、「藤代さん系。」最新3巻が今月24日に発売されます。本作に触れるよい機会になれば幸いです。

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