なぜブーム再来?  “拡張子”の枠を飛び越える「GIFアニメ」

短いループに広がるドラマ。

» 2015年01月09日 09時57分 公開
[與座ひかる,ねとらぼ]

 2014年12月、GIFアニメコンテスト「theGIFs -Award of GIF Creator-」の表彰式が行われました。主催はGIF作品投稿・共有サービス「GIFMAGAZINE」とAdobe。応募総数は全238作品。審査員にはアニメーション作家の水江未来さん、CGアニメーターのダイノサトウさん、デイリーポータルZ編集長の林雄司さん……など豪華な面々がそろい、最優秀賞1作品、優秀賞6作品が決定しました。

 多くの作品の中から最優秀賞に輝いたのは、若井麻奈美さんの「言わなくてもいいことを言った人」です。

GIFアニメコンテスト 最優秀作品「言わなくてもいいことを言った人」

 その他優秀作品、審査員賞受賞作品も見応えのある作品ばかり。審査会では、GIFの特性である「ループすること」と「短編的であること」をうまく生かした作品が高評価となったそうです。

GIFアニメコンテスト 優秀賞「理想と現実」/Hama-House(濱口博文)

GIFアニメコンテスト 優秀賞・GIFMAGAZINE賞「MOMOTARO」/関口和希

GIFアニメコンテスト 水江未来賞 「家の中の虫」/村本咲

ところでなんで今「GIF」なの?

GIFアニメコンテスト Creativebox 取締役の大野さん(左)、CTOの中坂さん(右)

 実はこの「TheGIFs」は今回が初開催。どうして今GIFのコンテストを始めたのでしょうか? GIFってちょっと前に流行ったイメージのような……。GIFMAGAZINEを運営するcreativebox取締役・大野 謙介さんにお話を伺いました。

―― なぜ今GIFにまつわるサービスやコンテストの運営を始めたのですか?

大野さん Flash誕生以降、GIFの需要は下がってしまったというのが通説だと思います。Googleの検索ボリュームで見ても「GIF」というワードの検索数は2004年を境にがくっと落ちていくんですね。ですが、グラフを見るとちょうどスマホが普及してきた2010年頃からV字回復していくんです。

 スマホの登場によってトイレでの1分間や、電車での短い移動時間などでもコンテンツを楽しめるようになりました。そういった「より短い時間」でコンテンツを消費するとなると、20分の短編アニメでも重く感じてしまいます。

 GIFの良いところは短く、クリックレスで、記事の中に差し込んでも読み込み画面を見ることなく表示できる手軽さ。そんなGIFの特性ってモバイルと親和性が高いのではないか? と考えて立ち上げたのが「GIFMAGAZINE」というサービスです。

GIFアニメコンテスト GIFMAGAZINE Webサイト

―― 実際立ち上げての反応はいかがでしたか?

大野さん 立ち上げたのが2014年の1月で、12月には月間投稿数が1万2000を超えました。ハイレベルな作品から、いい意味でチープな(笑)作品まであったりして……。運営していく中で、せっかくいろんな方が創造性を発揮する場所がGIFMAGAZINEにあるなら、この場からお仕事につながるような場所を設けて、クリエイターの方を支援したいなと思い始めました。

 そこで開催したのが今回のコンテストで、「この受賞を期にアニメーターとして活躍できるようになりました」と受賞者の方に言ってもらえるよう、来年以降も続けて行きたいです。

「もはや拡張子の話ではない」――GIFは新たなステージへ

―― 一方で「GIFってもういいのでは?」という説もあると思うのですが。

大野さん もちろん、GIFには欠点もあります。長いループだと重くなってしまったり……。それは受け止めなければいけないんですが、今後フォーマットは変わって行くと思うんですよ。例えばmp4だったり、xngだったり。

 僕らの立場からすると、仮にGIF以外に移っても全然良くて、GIFという言葉自体が「短編でループして、クリックレスなモバイルに適した素材」という認識に移っていくと考えています。GIFMAGAZINEは、そういった単なる拡張子の話をしたいのではなく、「短編のコンテンツ」として学校の休み時間に見るとか、日常に溢れたコンテンツの消費体験として寄り添っていくことを目標にしています。

なぜGIFアニメを作るのか? 受賞者に聞いてみた

 大野さんのお話から、“GIF=超短編のコンテンツ”として需要が高まっていることが分かりました。では、コンテンツの作り手であるクリエイターの皆さんは、なぜGIFアニメ作品を作るのでしょうか? 最優秀賞を受賞された若井さんにお聞きしました。

GIFアニメコンテスト 最優秀賞受賞の若井さん(開催リポートより)

―― 元々お仕事でアニメを制作されているのでしょうか?

若井さん そうですね。いまはフリーのアニメーション作家という形でなんですけど、今年の3月に大学院を出たばっかりで。あんまりその仕事らしい仕事っていうのはなく……いま駆け出しの段階ですね。

―― GIFアニメはよく作成されますか?

若井さん いや、コンテストに向けて作ったものは1つもありません。私が作っているアニメーションは10分前後のものですが、制作に1年ほどかかってしまうんですね。そんな中、Twitterでイラストレーターの方々がどんどん作品をアップしているのをみて、ちょっと悲しかったというか。「自分はまだアップできない……」みたいな(笑)。そんな隙間を埋めるためにGIFアニメを2〜3時間で制作して、「私もまだいるよ!」というアピールをしています。

―― アニメを作るときと、GIFアニメを作るときに違いはありますか?

若井さん アニメーションを作る時はやっぱ「1年かかる!」と思うと悩んじゃって……このネタに自分が1年付き合えるかどうかみたいなところをすごい考えて、頑張って調べたりとか、本を読んだりしたりとかして作るんですけど。GIFアニメは本当にその場の思いつきで(笑)。本当に落ち込んだ時に、気分を晴らすために……みたいな動機で作っています。

 今回の受賞作もそんな経緯で作りました。アニメーションを作ってるとずっと地中に潜っているような感覚になるのでそういうときにGIFアニメで表現できる場所が増えてきたのはすごくうれしいです。

新たな表現形態として広がるGIF

 合同主催者であるAdobeの轟啓介さんにもお話をお聞きしたところ、「はじめはなぜ今更GIF? と思ったのですが、映像作家の方がポートフォリオに使うことも多いと聞いて、今回の大会を楽しみにしていました」とのこと。実際に審査を通して、GIFの可能性に驚いたそうです。

 開催リポートによると、応募者の66%が美術学生、クリエイターで占められたそう。作り手と消費者、両方に求められているGIFは今後さらなるステージへ飛躍していくのかもしれません。


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