店や家族すべて失っても「笑ってほしい」 ノリノリすぎると話題の「女川ポスター展」背景には復興への想い

明るいんでねくて、あがるぐしてんのさ。

» 2015年02月25日 20時48分 公開
[たまごまご,ねとらぼ]

 現在、宮城県牡鹿郡女川町で女川ポスター展が開かれているのですが、その内容がノリノリだと話題になっています。


画像 「ツイッター? やってないけどつぶ焼くよ。」うまい! 「男は黙って、ひと串入魂」も熱い、「串焼きたろう」さんの広告

画像 バーのようなおしゃれなポスターですが、店名とお酒に浮いているものを、よーーく見てください

画像 いやいやいやいや、おそろっちゃだめだろう

画像 女川のサッカーチームCobaltore ONAGAWAのポスター。ネタと熱さが同居したナイスデザイン

 女川町の42店舗が参加。合計200枚以上作成されました。デザイナー・コピーライターなど製作者は60人くらいで、9割が仙台在住。お店の様子を取材し製作、写真に写っているのは店主や関係者です。


画像 「壁ドンより女川ドン」か、かわいい……

画像 「よ〜いドンより女川ドン。」「LONDONよりONAGAWA-DON」。まだまだバリエーションあります

 この女川丼、ものっすごい大盛り。ハーフでも吉野家の並はあるくらいです。以前ももいろクローバーZが来た時に食べきることが出来ず、こんなエピソードも。




おいしく楽しく、盛り上がりまくりの飲食店

 女川町は、東日本大震災の際に町の8割が津波で流されました。今回の企画は「今できることプロジェクト」の一環。「女川ポスター総選挙」と題した投票企画も行われていますが、これ以外にも町中に多彩なポスターが貼られており、活気があふれています。


画像 投票所の様子。これはほんの一部。町中にはもっとたくさん、イカしたポスターが貼られています

画像 「はみ出し注意」。セクシーなおしりより、おっちゃんの鼻毛が気になるんですが!

画像 店内の様子。ラーメンどんぶりのような丼に、さらにはみ出すでかい穴子が乗っているそうです

画像 「よい子は半メニューにしよう。」女川町は食べ物がおいしい+山盛りです

画像 なんてセクシーな! 「女」の使い方がうまい

画像 「味に自信。オレ独身。」「味に一心。まだ独身。」繁盛も伴侶もお願いしますとのこと

 港町で、飲食店が多い女川町。数多くのオリジナルメニューが観光のウリです。特に、でかい! 新鮮! うまい! がモットーなお店が多いです。漁港も元気に動いています。今回のイベント発起人は関西人で「女川に来る度に……太るんですよね」(女川さいがいFMより)と語っていました。



明るいんでねくて、あがるぐしてんのさ

 発起人の電通・日下慶太はこう語ります。

「元々大阪でやってたんですよ。新世界というシャッター商店街で、なんかおもろいことできたらなと。それが意外と評判になって、2回目また大阪市阿倍野区の下町でやったら、今度は世界中のFacebookなどでも翻訳されて評判になって。それを知った河北新報社の人が、被災地の女川でやりたいと。店主さんたちや店の取材した写真を見て(デザイナーが)イメージしてつくりました。(店主さんの中には)笑う人もいれば、目が潤む人もいて。ポスターをお店に渡す空間は、みんなで共有できました。お店同士で『おまえんとこどんなの』『お前の面白いな』とか話し合っていて。いいですよね」(女川さいがいFMより)


画像 カラオケ風のポスター。これはなんとも味わい深い

 「居酒屋ようこ」の店主さんは、自分のポスターに対して「写真ってよりは女優になったみたいですね」(女川さいがいFMより)と語ります。自分がポスターになる経験ってほとんどないですよね。


画像 超気合満々な本屋さん、ダッシュしてお届け!

画像 外観はこんなかんじ。店舗は流されたため、プレハブで営業中です

 ほとんどの人が家やお店を失った状態の中で、プレハブをお店に改装したり、高校の校庭を潰して作られた木造の仮設商店街で営業しています。

「最初は震災の印象が強くて、来たら更地になって何もなくて。色がなかった。でも人に会うと、みんな結構元気で、立ち直ってるんだなと思ったんです。震災の後に『面白いポスター』とか不謹慎じゃないのかなと思ったんですよ。でもみんな『面白いほうがいいよ!』とカラッとしていて、陽気な感じ」(電通・日下慶太/女川さいがいFMより)


画像 「明るいんでねくて、あがるぐしてんのさ。」オンとオフはあっけどね。電気屋さんのポスター

画像 左のポスターでは、被災報道の人にカメラを向けられると、なんかいいこと言ってしまう、なんてぶっちゃけたネタも

 女川の人達はみなイベント企画にノリノリでした。

「とは言えみなさん、実はやっぱり心の底からは元気になってない。この先不安を抱えているのがわかった。さらに最近分かってきたのは『でもやるんだ』ってなってきていること。だからポスターがそのきっかけになればいいなと思うし、ようやく上を向き始めたみなさんの背中を押せるポスター、加速できるポスターになればいいなって思っています」(電通・日下慶太/女川さいがいFMより)



とにかく笑ってほしい


画像 尻見せるのも、尻を持つのも、アホの仕事だろ。

 裸でおどけている男性、女川町で唯一のスーパーだった「おんまえや」の現社長。30歳前後です。身体を張ってます。

 彼は店を流されただけでなく、元社長だった親や家族すべて亡くし、従姉妹の中学生と自分だけ生き残りました。

 しかし店は「従業員がいるから」と続け、仕入れの車を使って巡回販売を再開。そこから店を再建させようと頑張っている最中とのこと。だから、「とにかく笑ってほしい」



ご当地ヒーロー、イーガーとワルワル団


画像 何だこの集団?

画像 船酔いしてるやんけ

 この特撮チックなキャラクター、女川町商店街の有志が震災前から作っていたローカルヒーローの「リアスの戦士イーガー」と、その悪役「クララーゲとワルワル団」。実は敵幹部のクララーゲの中の人は、この海産物加工品店、兼宮商店の店主だったということで、今回ネタ化されました。


2年前にDVDも出ました

 「明るく、バカになろうぜ」という町の人がもっていた元気の良さ。元々からあったこの空気が、今回のイベントを作り上げた根底にあります。



壊れたのも含めて、うちだから


画像 釣るマダム。カフェの広告です。にしても下の文字が……あれ、なんて読むのこれ?

画像 今はこんなかんじで営業中

 ダイシンCafe SAKURAさんは、お店を失ってプレハブで再営業中の喫茶店。

 店主「(撮影は)すんごい楽しかったです! もう大笑いしながら撮りました。なんせマダムって設定だったので、私もマダム? みたいな感じで(笑)。笑い転げながらの撮影会でしたね。女川マダム」(女川さいがいFMより)

 とても喜んでいらっしゃいます。そこにはひとつ大きな理由がありました。

「うちのポスターの下に、漢字みたいな変なものがふたつ載ってるの。これ被災後にうちで使っていた看板なんですよ。『大』の字はそのままなんだけど、しんが壊れてたの。そのまま形にしてくれて、読ませる形に作ってくれたんです。ポスターに入っているので是非見てください。壊れてるけど、『だいしん』なんです」(女川さいがいFMより)



女川さいがいFMと、これからの女川町

 女川町は震災の津波で1000人が亡くなった、被災地でもかなり被害の大きい地域。加えて仕事がなくなり、家も流されたため、3000人以上が町を離れてしまい、人口減少率は現在日本一です。

 震災時、防災無線は津波で流されてしまいました。外からの情報の中にはデマも多く、町が混乱してしまいました。そこでみんなが正しい情報を知ることが出来るように、とコンテナの中に設備を作り、10代から30代の若者が中心となって立ち上げた放送局が「女川さいがいFM」


女川さいがいFM立ち上げのきっかけが離されています

 今回のポスター展覧会企画について、この女川さいがいFMが、実際に作った人達にインタビューしラジオ放送、ポッドキャストで全国どこでも聞けます。

 3月21日にJR女川駅が再建され、2年前から度々訪問しているももいろクローバーZのお祝いスペシャルステージも開催。翌日22日には「女川復幸祭」も開かれます。女川ポスター展は2月21日から5月31日までの予定。その後は全国でも展示される予定です。


画像 色あせないものもあります。ずっとね

たまごまご


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news174.jpg 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  2. /nl/articles/2404/26/news154.jpg 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  3. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  4. /nl/articles/2404/12/news174.jpg 築年数不明の平屋にある、ボロボロ床板をはがしてみたら…… 発覚したヤバい事実に「ビックリ!」「大丈夫でしたか?」心配と驚きの声
  5. /nl/articles/2404/26/news022.jpg ママの足にくっつく生後7カ月の赤ちゃん、甘えてるのかと思いきや…… 計算された行動と「ちいこい後ろ姿がかわいすぎ」て目が離せない
  6. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  7. /nl/articles/2404/25/news069.jpg “作画軽減ガンダム”をガンプラで作成 → 使用パーツも最小限の再現ぶりに「完全に一致」「部品軽減ガンダム」
  8. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  9. /nl/articles/2404/18/news134.jpg 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  10. /nl/articles/2404/26/news024.jpg 0歳赤ちゃん「(ママ来たっ!)」→喜びが抑えきれなくて…… 尊すぎるダンスが300万再生「心が浄化されていく」「朝から癒やされました」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」