かわいい絵柄に小さなトゲ――北欧女子・オーサの描く4コマが魅力的なワケ:北欧女子×メイド 対談(2/2 ページ)
単行本に載せられなかったネタ
ミソノ 日本でマンガを出版することについては、どう思いますか?
オーサ びっくり、ですね。いまも信じられないくらいです。たぶん“外国人が見つけた日本の不思議”というテーマのおかげだと思うんです。日本の人はそういったテーマに興味があるんじゃないかなと感じてます。
ミソノ 担当さんとは何をきっかけに知り合ったのでしょうか。ブログをやっててお声が掛かったんですか?
オーサ 前のブログは学校の課題として毎日4コママンガを描いていたんですけど――
ミソノ え、学校の課題だったんですか?
オーサ そうそうそう。ほかにもいろいろ宿題があって、4コマは1日15分ぐらいしか描けませんでした。とにかくそれを印刷して、コミティア(編注:コミティア実行委員会が主催する自主制作マンガ誌の展示即売会)の出版社ブースで見てもらったのがきっかけですね。
ミソノ なるほど。そこから本になるだけの4コマを描いていくって、勉強もありますし、大変だったんじゃないですか?
オーサ 大変でしたね。でもいまはもう原稿も全部描き終わって、卒業制作も無事に終わりましたので。
ミソノ 卒業制作は、ブログにもアップしていらっしゃいましたよね。定期的に4コママンガをブログにアップしていらっしゃいますけど、ネタ探しとか大変じゃないかなって思うんです。考えたはいいけど本に描けなかったとか、担当さんからストップが掛かったとか、そういうネタはありましたか?
オーサ ありました! あー、ちょっと……(担当編集者の方をちら見)。
ミソノ あ、ちらっと担当さんの方を(笑)。
オーサ えっと、例えばビザに関する文句とかですね。でもこれは外国人の問題なので、日本の読者にはちょっと分かりづらいよねってことになったり、あとマスクの話とか……。
ミソノ マスクですか?
オーサ なぜ日本人はよくマスクをしているんだろうって不思議だったんですけど、日本人の友達にそれを言ったら、プライバシーを守るために使うことがあるよと。
そうなんだと思って、それから毎朝電車の中でマスクを使うことにしたんです。朝って、顔がちょっと疲れてるじゃないですか。それにマスクを使うと自分の世界に入り込むこともできますし。でも、それはあまりよくないなって思いました。
ミソノ 女性だと、朝急いでいてメイクする時間がなかったときなんかはマスクがあると助かりますよー。
オーサ そう! それはよく分かります。
担当編集者 ……そんなのありましたっけ? 結構面白いネタだなーって思って聞いてたんですけど(笑)。1つ覚えているのは、日本人はお風呂をすごく大事にするっていうネタで、オーサさんのルームメイトの日本人が、朝の4時にお風呂に入る話があったんです。それで「日本人は朝の4時からお風呂に入るなんてすごい」って書いてあったんですけど、それは一般的じゃないから! って言ったらすごく驚いてました(笑)。ずっとそうだと思ってたみたいで。
オーサ 外国人からすると、何が普通で何が普通じゃないかがよく分からないので、日本人が皆そうなのかなと思ってしまいますね。もちろん、逆もありますけど。いろんな人がいますが、私にはこういう印象だよっていうのがこのマンガです。
ミソノ オーサさんは、いろんな国の人とルームシェアしているんですよね?
オーサ そうですね。マンガにも描きましたけど、「今日は暑いな」って言いたかったのに、「今日は暑いだ」って言い間違いをしてしまって。そしたらルームメイトが面白がって「〜だ」って言い始めたり。
ミソノ 皆さん仲いいですよね(笑)。スウェーデンに居た時、周りに日本語を教えてくれる人はいましたか?
オーサ 友達の奥さんが日本人で、彼女と一緒にプライベートレッスンしました。楽しかったです。
ミソノ 前にオランダから来た人に聞いた話なんですけど、アニメの中でおにぎりが理解できないから、オランダでは全部サンドイッチって言うことになってたって聞いたんです(笑)。日本に来て、あれはサンドイッチじゃなくておにぎりだったんだってことを知ったっていう話があって。
オーサ えー!? 私は13歳から日本の文化に興味があって、いっぱい日本のマンガを読んだんですけど、それでもまだびっくりすることがあるので、それは日本のすごいところだと思います。特徴が多い文化です。
日本で困ったことは?
ミソノ 驚いたことをたくさんマンガにされていますけど、困ったことってありますか?
オーサ 外国人の友達と一緒に銀座に行ったときのことなんですが、私の写真を撮ってくれたお礼に晩ご飯をおごってあげることにしたんです。お寿司屋さんに入ったんですけど、友達は魚のネタを全然頼まなくて。
ミソノ 魚がお嫌いだったんですか?
オーサ たまご寿司とか、しいたけの寿司、あとは巻き物とか。食事中も様子がおかしくて、何でだろうなーと思ってたんですけど、ちょっと寿司を食べて、ビール一本飲んだだけなのに会計が2万円で……。それ、ちょっと困りました……。
ミソノ うわぁー! 銀座でお寿司って、日本人でも特別な時にしか食べないイメージです。逆に、日本人がスウェーデンに行ったら、これはびっくりするんじゃないかなっていうのはありますか。
オーサ 最近、スウェーデンに留学している日本人と知り合いになったんですが、彼がSystembolaget(システムボラゲット)という制度に驚いていましたね。システムボラゲットはお酒の専売制度のことで、許可をもらったお店でしかお酒を販売できないんです。スウェーデンでは、普通のスーパーやコンビニではお酒は買えません。
ミソノ そうなんですか!
オーサ 政府がやっている特別な店に行かないと飲めなくて、しかも、平日なら午後6時くらいまでしか営業してないですし、土曜日は午後2時まで、日曜日は開いてないです。バーもありますけど高いんです。お酒の税金がすごく高いですから。私にとって日本の不思議なところは、飲み放題っていうコンセプトですねー。
ミソノ 飲み放題、日本ではよくありますね。
オーサ そうなんですよね。スウェーデンではアレは無理です。みんなたくさん飲みますから。たぶん、どんな外国人に聞いてもあれはびっくりしたって言いますよ。
ミソノ 確かに、外国で飲み放題って聞いたことないかもしれません。オーサさんは、マンガを描いていて、ネタが思いつかないとか、もう日本にびっくりしなくなっちゃったとか、そういうことってありますか。
オーサ いままでは仕事で家にいてもいろいろとネタがあったんですが、最近はネタを探しに外に行かないといけないですね。ネタとネームはいつもすごく心配です。
ミソノ どこに行くのが好きですか?
オーサ 日本の面白いテーマのカフェにはまってます。この前は、秋葉原のガンダムカフェに行きました。フクロウカフェにも行きたいです。
たどたどしい日本語も魅力の1つに
ミソノ スウェーデンにいるときは自分でストーリーを考えて作品を描いていたと思いますけど、日本では担当さんと一緒に作り上げていきますよね。その方法に戸惑うことってありますか? 例えば、「担当さん文句言い過ぎ!」とか「担当さん私のこと分かってない!」とか。
オーサ もちろん、たまにこれはなぜ直さなきゃいけないのか分からないというのもあります。でもやっぱり、外国人というのもありますけど、担当編集者の方の経験を頼った方がいいと思っています。
それに、直していただくのはだいたいスクリプトだけなんです。絵をすべて描き直してくださいっていうのはあまりないのでうれしいですね。描き直すのは大変ですから。
ミソノ 本の中でぜひ見てほしいっていうところはありますか?
オーサ カラーはちょっと大変でした。友達が手伝ってくれたりして。あと、背景も頑張ってるので見てくれたらうれしいです。
ミソノ わ、すごい情報量ですね。
オーサ まだデジタルに慣れていないので、たまに細かく描き込みすぎますね。
ミソノ 丁寧に描いてあるので、これが日本のどこで、どういう場面で、オーサさんがどれくらいびっくりしたっていうのが、すごくよく伝わってきます。
オーサ わぁ! うれしいです!
ミソノ オーサさんって時々、日本語の間違いがあって、私はそれが可愛いなって思っているんですけど、単行本ではその辺りって直されちゃってますか?
担当編集者 直さなかったところもたくさんありますよ。それもオーサさんの個性だと思うので。でも読めるようには直させてもらったというところで。
オーサ まだまだ日本語を失敗しちゃうんですよね。
ミソノ あ、でも、意味は伝わるので、読む分には何の問題もなく読めます。今回の単行本でオーサさんを知る人って、絵が上手い外国人が突然デビューしたなって思うんじゃないかと。でも、スウェーデンにいたときからマンガを出版されてたことなども読者の方に知ってもらいたいなって私は思います。これからも日本でマンガを描いていきたいですか?
オーサ はい、できればそうしていきたいですね。
ミソノ ご活躍期待しています。本日はありがとうございました!
(画像出典:北欧女子オーサが見つけた日本の不思議)
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