アニメ・漫画ファン集う独フランクフルト・ブックフェア 書籍見本市でコスプレ・コンテスト開催の理由とは?
500年以上の歴史を有し、世界最大といわれる書籍見本市独フランクフルト・ブックフェア。そこにはアニメ・漫画ファンも集まり、コスプレコンテストも行われます。
ドイツのフランクフルトで10月14日から18日まで、世界最大といわれる書籍見本市フランクフルト・ブックフェアが開催されました。世界100カ国以上から出版社が参加し、今年も27万人を超える来場者が訪れました。
世界中の本と出会える場所、そこがフランクフルト・ブックフェアなのですが、今回は別の側面を紹介してみたいと思います。実はアニメ・漫画ファンが集まる場所としてファンの間では非常に注目されるイベントでもあるのです。特にドイツ国内の年間コスプレ・チャンピオンを決定する「ドイツ・コスプレ・マイスターシャフト(DCM)」の決勝大会はドイツのコスプレイヤーにとって大きな関心事で、ドイツ最大のアニメコンベンション「コンニチ」(関連記事)で実施される世界コスプレサミットのドイツ代表選考会と人気を二分するほどです。
ドイツの漫画ファンが訪れるのはどのエリア?
漫画ファンの人気が高いのは、まずはコミックなど児童文学のエリアです。日本の漫画のドイツ語版を手掛けるカールゼンやエグモントといった大手出版社がブースを出します。土曜日、日曜日の一般来場者デー(水曜日から金曜日まではビジネスデー)には、展示されている漫画の最新刊が購入できる場として人気があります。
エグモントの関係者によると、同社では毎月15〜20タイトルの新刊を発売。デジタルコンテンツへの需要が伸びており、コンテンツの拡充が急務となっているそうです。
アジア各国の出版社が出展するエリアも、ファンにとっては人気の場所です。日本の出版社が出展しており、人気漫画の最新刊に触れられる貴重な場となっています。
海外で日本の漫画が人気とよく言われますが、漫画以外ではどのような日本の本が注目されているのでしょうか。国際交流基金と共同出展していた一般社団法人出版文化国際交流会のブースで質問してみました。
漫画以外では、空手や合気道といった武道、生け花や折り紙、料理など、日本の伝統文化を紹介する写真を多用した本が注目されていて、アニメファンとは異なり年配の方が比較的多いそうです。また、日本語教材や児童書のニーズもコンスタントにあるようです。
ドイツでも大人気の「名探偵コナン」。小学館のブースによると、ドイツ語版を発売するエグモントと今夏より連載開始20周年を記念したイベントを展開中とのこと。ドイツ語版のオリジナル企画として人気キャラクターのひとり「工藤新一」の登場回を集めた「シンイチ・コレクション」を製作したそうです。また、来年以降「妖怪ウォッチ」が本格的に海外進出を果たす(関連記事)ことから、同社もメディアミックスの一翼を担い、キッズ層を新たに取り込みたいと意気込みを語ってくれました。
「ドイツ・コスプレ・マイスターシャフト(DCM)」とは?
DCMは今年で9回目を迎える、ドイツのコスプレイヤー年間チャンピオンを決定するコンテストです。今年は、ミュンヘン、デュッセルドルフ、フランクフルトなど6カ所のイベントで1年をかけて地方予選が行われ、そこで選ばれた入賞者がフランクフルトの決勝大会にファイナリストとして進むことができます。地方大会は、10万人以上のユーザー数を持つドイツ語圏最大のアニメ漫画ファンポータルAnimexx(アニメックス)が主催し、フランクフルト・ブックフェアが決勝大会を担当します。
![ドイツ・コスプレ・マイスターシャフト](https://image.itmedia.co.jp/nl/articles/1510/21/ah_book9.jpg)
コスプレ・コンテスト開催の経緯とそこに込められた思いとは?
DCMの主催者の1人でフランクフルト・ブックフェアでの決勝大会を担当するヴォルフガング・シュトリッツさんに話を聞くことができました。
「ブックフェアは本を紹介するところ。コミックも本ですよね。そして、日本のコミックである漫画もやはり本なわけです。2002年ごろにコミックエリアで漫画を特集しようということになりました。どうせなら、関連する日本文化も合わせて取り上げよう。そういった流れでコスプレ・コンテストの企画が立ち上がりました。
決勝大会に参加するファイナリストは、期間中はユースホステルで寝起きをともにします。準備期間中から共同で取り組む課題が与えられます。ライバル同士ではなく、ひとつのグループとしてお互いの理解を深めることを大事にしています。主催者としては、ファイナリストたちにとって参加自体がいい思い出になればと思っています。
また、ブックフェアのような一般の人の目に触れるような場を通して、コスプレを知ってもらうことが大切なのではないかと考えています。私は現在61歳で、ロック音楽のファンシーンと重ねて見ているところがあります。長髪スタイルなどで世間からよく思われず、認知されるまでに時間が掛かりました。コスプレにはそうなって欲しくないのです。
ただし、コスプレをメインストリームにしたいというわけではありません。むしろアングラ文化のままでいいと思います。裁縫やメイクといったクリエイティブな作業がこのまま続いて欲しいわけです。メインストリームになると、そういった部分が損なわれるような気がします」
今回はブックフェアで開催されるコスプレ・コンテストを紹介してみました。取材を通して、小説の読者も漫画の読者も本が好きという共通点では同じなわけで、分け隔てなく取り上げるという考え方、さらにコスプレ文化を温かく見守るような視点の存在を知ることができました。このような「大人」の良き理解者がいる限りドイツのアニメ・漫画ファン文化は一過性の流行に終わらずに着実に根を下ろしていく、そんな印象を受けました。
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