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» 2016年04月19日 14時12分 公開

熊本が大変な今こそ! ボードゲームを通じて避難所運営のノウハウを学べる「HUG」に注目集まる

受け入れた被災者を、いかにして適切に配するかみんなで考えるゲーム。

[沓澤真二,ねとらぼ]

 熊本地震における、被災者支援のありかたが問われるなか、静岡県が2007年に開発した避難所運営ゲーム「HUG」が注目を集めています。


HUG パッケージはマニュアルと4組のカードセット、ゲーム進行用のPowerPointデータが入ったCDから構成(画像は静岡県地震防災センターより)

 「HUG」は、ボードゲームを通じて避難所の運営ノウハウを学べるツール。名前は「避難所」「運営」「ゲーム」の頭文字から取られており、「避難者を優しく受け入れる(ハグする)」という意味合いも。これまで各地域の自治体や町内会において、防災の講習会に活用されています。

静岡第一テレビで報じられた、静岡市駿河区での「HUG」による防災への取り組み(以下、画像は動画より引用)

 ゲームは6人以内で編成された、数グループでプレイ。避難所の受付に相当する読み上げ係が、250枚のカードを順に読み、プレイヤーはその指示に従って避難所マップにカードを配置します。全カードを置いたら、各自が行った対応についてグループ間で意見を交換し、ゲームは終了。この流れのなかで、プレイヤーはおのずと避難所運営における判断力や知識を養えるわけです。


プレイング グループ内で相談のうえ、適切な配置を行う

 編集部は静岡県地震防災センターへ取材し、より詳しいプレイングの実態をうかがいました。まず読み上げ係やグループ分けが決まったら、避難所のマップを用意。マップはマニュアルに掲載されたものをコピーするか、地域の実際の避難所間取り図を使います。

 そして震度や天気、季節や時間帯など、災害発生時の状況を想定し、ゲームの前提条件として設定。例えば雨天では避難者の受け入れを急ぐなど、設定はプレイングに影響を及ぼします。


前提 震源地や避難所の立地などを設定し、この条件下で避難所運営をシミュレートする

 グループ内で自己紹介を行い、緊張をほぐしてからプレイ開始。読み上げ役が山札を順に読んでから、各グループに渡します。カードは1セット250枚で、うち200枚は年齢やケガの状況が書き込まれた被災者カード。1世帯ワンセットで、まとめて配られます。


被災者カード 被災者カードの例。家族構成や、避難所到達の経緯といった詳細な情報が書き込まれている

読み上げ 基本的に読み上げは絶えず続けられる。初心者が多い場合は作戦タイムをとって中断したり、荒天など緊急事態を想定している場合は読み上げ係を増やしたりと、調整を加えることもあるそうです

 プレイヤーは被災者の情報を考慮して、避難所のスペースに配置。例えば、お年寄りのいる世帯は移動が容易な1階に、比較的健康な人は上階に配するなど、きめ細やかな判断が必要となります。


配置 被災者の家族構成に配慮して、適切な位置を考えて配置

 カードの残り50枚はイベントカード。その内容は「トイレに行きたい」「タバコが吸いたい」といった被災者の要望や、周辺地域の企業や団体からの救援物資提供など、災害時に起こり得る事態ばかり。イベント発生時は、仮設トイレをどこに配置するか考えたり、喫煙者に我慢をお願いしたり、救援物資受領の段取りをしたりと、対応を求められます。


イベント 喫煙者に遠慮をお願いするか、喫煙所を設けるか、判断はプレイヤー次第

 イベントには、「メディアが取材に来る」「総理大臣が総勢20人で見舞いに来る」といったものも。駐車スペースの用意や、被災者への配慮を考えた受け入れ体制を考える必要が生じます。過去の事例では、「この非常事態に対応していられるか」と取材スタッフを追い返したり、陳情のため総理だけ避難所に迎えたりと、思い切った判断をしたグループもいたそうです。


総理の激励 対応に困りそうなイベントカード。なお、カードは1枚だけ白紙になっており、内容を自由に決められます

 最後にグループ間で意見を交換し、各自の判断が適切だったかを参加者全員で考えます。静岡県地震防災センターの担当者いわく、「HUGに正解はない」とのこと。ゲームは手段に過ぎず、プレイの過程でさまざまなノウハウを蓄積することが、一番大事な目的。強いて挙げれば、「滞りなく、全被災者を無事に受け入れられたプレイ」が正解と言えるそうです。

 担当者は「カードはものを言わない」とも語っています。災害時はゲームと異なり、運営が思い通りに事を運べるとは限りません。ゲームだからとパズルのように、被災者カードをきちんと整列させても、それはそれで問題。被災者がどのような思考をするかまで、きちんと考えて並べることが重要ということです。

 2007年当時、静岡県では大地震の被災経験がなく、対策のノウハウを得る手段に苦慮していたそうです。そこで、より実践的なノウハウを学べるツールとして、「HUG」を開発。その後各地の講習会で活用され、導入した仙台市泉区では、東日本大震災時に「HUG」で得た経験が役立ったとのこと。

 「HUG」はNPO法人静岡県作業所連合会・わ店舗にて、ワンセット6700円(税込)で販売中。事前試用や緊急の運用においてのみ、2週間の貸し出しも行っています。また、静岡県地震防災センターでは体験会を毎月催しており、個人が災害時の対応について考えるいい機会になりそうです。


(沓澤真二)


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