毛を作る器官「毛包」の大量作成に成功 今後は人の毛髪再生を目指す 横浜国立大学の研究グループ

実験を成功させた福田准教授にお話をうかがいました。

» 2016年05月02日 18時36分 公開
[Kikkaねとらぼ]

 横浜国立大学の研究グループが、マウスを使って毛を作る器官「毛包」を大量に作製する実験に成功しました。今後は、今回の実験を応用して人の毛髪を再生する治療を目指して研究を進めるとのことで、注目が集まっています。


毛包移植実験成功 実験に成功したマウス。黒々した毛がところどころ生えている(写真提供:横浜国立大学 福田准教授)

 「毛包」とは、皮膚に付属した毛を生産する器官で、いわゆる毛穴(けあな)は皮膚表面に見える「毛包」であると言われています。


毛包移植実験成功 今回の実験に使用されたスフェロイド容器(写真提供:横浜国立大学 福田准教授)

 今回の実験成功について、実験を行った横浜国立大学の福田淳二准教授にお話をうかがいました。



横浜国立大学 福田准教授にインタビュー

――毛を作り出す器官「毛包」を作り出すのに成功したというのは事実でしょうか。

福田准教授 事実です。しかし毛髪再生医療の分野では、このこと自体は新しいことではありません。今回は、毛包原基(毛包の種のようなもの)を大量に作製できた点が新しいところです。

――そうなのですね。なぜ「毛包」という器官に目をつけて研究を進められたのですか。

福田准教授 毛包は体内の他の組織と比べると、早いサイクルで消失と再生を繰り返しています。これは、毛包組織に存在する幹細胞の存在によって実現されています。つまりこの幹細胞を利用すれば、生体外で「毛包原基」(毛包の種のようなもの)を大量に作れるのではないのか、また毛包原基を移植することで毛髪が再生できるのではないかと考えたからです。

――具体的にはどのような手順で実験を行ったのですか。

福田准教授 実験には特殊な材料で作製した培養器を使用します。この培養器を用いて2種類の細胞群から「毛包原基」を作製します。これをヌードマウス(毛のない免疫不全マウス)に移植したところ、毛を生やすことに成功しました。

――実験はいつころから開始されたのでしょうか。

福田准教授 2年ほど前から開始しました。マウスへの移植実験と言う意味では、5回以上実施しています。

――実験成功を踏まえ、人の薄毛治療に応用する場合の課題を教えてください。

福田准教授 ヒト細胞で毛包原基を大量に作製できた場合に、どのような方法で広範囲に移植するのかという部分が1つの技術的なポイントになってきます。例えば、ハンコ注射のような剣山型の移植器具や田植機のようなイメージのプリンタを使用するのかなどが課題になります。

――福田准教授、この度はお忙しい中ありがとうございました。



 福田准教授は10年後をめどに、この技術を治療に生かしたい考えであるとのことで、薄毛治療が革新的に進むかもしれません。


毛包移植実験成功 インタビューにご協力いただいた横浜国立大学の福田准教授(横浜国立大学研究者詳細ページより引用)

(Kikka)


関連キーワード

大学 | 治療 | 再生医療 | インタビュー | 薄毛 | 医療


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2502/14/news121.jpg 「14歳でレコ大受賞」 人気アイドルがセクシー女優に転身した理由明かす 家族、メンバー、ファンの“意外な反応”
  2. /nl/articles/2502/11/news012.jpg 最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
  3. /nl/articles/2502/14/news033.jpg コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
  4. /nl/articles/2502/14/news188.jpg サイゼリヤ、メニュー改定で“大人気商品”消える 「ショック」悲しみの声……“代わりの商品”は評価割れる
  5. /nl/articles/2502/14/news022.jpg 夜の漁港に現れた“大量のイワシ”で釣りをしたら…… 「デカすぎるでしょこれ!」ヤバい魚の連続に「すげっ」「気持ちいい」
  6. /nl/articles/2502/15/news012.jpg これは憧れる…… “1人暮らし歴5年”のこだわりがつまった“1K7畳”に「なんておしゃれ」の声 投稿者に聞くインテリアのポイント
  7. /nl/articles/2502/15/news032.jpg 163センチ、63キロの女性が「武器はメイクしかない」と本気でメイクしたら…… 驚きの仕上がりに「やっば、、」「綺麗って声でた」
  8. /nl/articles/2502/15/news045.jpg 「あたし、天才?」餃子を手作りしたら…… “とんでもない展開”に興奮「全主婦が感動して泣いてる」「パーフェクト」
  9. /nl/articles/2502/15/news040.jpg 「何か野暮ったい……」 50代女性、似合う髪形が分からずプロにお任せ→“カットだけ”での大変貌に「とってもすてき!」
  10. /nl/articles/2502/15/news081.jpg 「絶対に欲しい」 ユニクロ新作の“2290円ウェア”に発売前から期待殺到 「シンプルでいいな」「これは激熱」
先週の総合アクセスTOP10
  1. パパに抱っこされる娘、13年後の成人式に同じ場所とポーズで再現したら…… 「お父さん若返った?笑」「時止まってる」2人の姿に驚き
  2. 古いバスタオルをザクザク切って縫い付けると…… 目からウロコの再利用に「すてきなアイデア」【海外】
  3. 14歳のとき、親友の兄と付き合うことになった女性→13年後…… “まさかの結末”に「韓国ドラマみたい」【海外】
  4. リンゴを1年間、水の中で放置→顕微鏡で見てみたら…… 衝撃の実験結果に「これはすごい」「息をのみました」【海外】
  5. 海釣り中、黒猫に「ちょっと来い」と呼び出された釣り人 → 付いて行くと…… 運命のような保護から2年、飼い主に話を聞いた
  6. “駐車場2台分”の土地に、建築家の夫が家を建てたら…… “とんでもない空間”に驚き「すごい。流行る」
  7. 「なんだこの暗号は……」 マクドナルドの“大人だけが読めるメッセージ”が410万表示「懐かしい〜」「読める人同世代w」
  8. 着陸する戦闘機を撮ったはずが…… タイミングが絶妙すぎる1枚に「一部の専門家には貴重な一枚」 投稿者に話を聞いた
  9. ズボラ母が5人分サンドイッチを爆速で作ったら…… 目からウロコの時短テクと美しい仕上がりに「信じられない」
  10. 【今日の計算】「7−2×0+9」を計算せよ
先月の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  4. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  9. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  10. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議