「貞子vs伽椰子」はハートフル百合ムービー 白石晃士・金田淳子「貞子vs伽椰子」そして「コワすぎ!」を語る(2/3 ページ)
「貞子vs伽椰子」、殺した人数で勝負
金田:
貞子に殺される人たちが、皆、いつのまにか謎の髪の毛の束を握っているというのが、気持ち悪くて面白かったです。あれは「リング」シリーズにもともとあった設定なんですか?
白石:
いや、なかったと思いますね。
金田:
あれは貞子の「自分が殺ったぞ」というマーキングなんでしょうか。「伽椰子なんかと勘違いしないで!」みたいな。
白石:
伽椰子も髪は長いんですけど、ちょっと天然パーマなんですよね。貞子はきれいなストレートなので「このキューティクルを見て!」って感じかもしれないですね。
金田:
あるシーンでその髪の毛を、経蔵がササッと回収して袋に入れてたじゃないですか。あの袋を見て「これ見たことある! 本家のやつ!(※)」って思いました。あれは「コワすぎ!」で犬井が工藤にくれたやつでは……?
白石:
雰囲気は近いですよね(笑)。
金田:
あれを見て「ああ、あの袋で育てるんだな」と。その髪の毛で戦うシーンもあって「コワすぎ!」ファンとしてはうれしかったです。白石監督の作品はいつも、ファンの期待に応えつつ、その上を行ってくれるところがありますね。
白石:
毎回、それを目指しています。
金田:
今回、貞子と伽椰子が直接戦うのは後半ですけど、前半はある意味「どっちがより多く殺すか」勝負になっていて。
白石:
勝負という意図はなかったですけど(笑)。誰かが死んじゃったら、基本、すぐに次の役者を出さなきゃいけないじゃないですか。だからなるべく、一度にガバッといっぱい死ねばいいんじゃないかなと……そうすれば、観客に印象づけられるんじゃないかなって思いまして。
金田:
その犠牲になったのが×××たちですよ!! でも×××にも容赦ないのが良かったですね。呪いの家に入った者は、×××××も×××××××も平等に処していく。
白石:
宇宙の摂理みたいなものです。自然現象みたいな。
金田:
崖から落ちたら子どもでも大人でも死ぬと。それまでは呪いの家について言葉でしか説明されていませんでしたが、一気に来たなと思いました。
白石:
説明が出てきて、次のシーンですぐ死にますからね。
金田:
私、今回貞子と伽椰子が何人殺したのか、人数を数えてみたんですよ。
白石:
ホントですか、それは初めての試みです(笑)。
金田:
最初に「貞子vs伽椰子」という企画がニュースで流れたときに、どういう対決なんだろう、素手で殴るのかな、それとも殺した数の対決になるのかな? と、ネットでいろんな人が想像してたんです。それで実際に数えてみたんですが、結果は×××と×××で×××の勝利でした(※)。
白石:
そんなに殺してましたっけ。ああ、×××××を一気に殺ったところがあったか。ただ×××側は×××を殺ってますからね。そこは1人あたり1ポイントじゃなくて、できれば1.3ポイントぐらい与えてあげてほしいところですね……!
金田:
あっ、なるほど、残虐度が。
白石:
ポイントは高いと思いますよ。ポイント高いって言っちゃっていいのかな(笑)。
金田:
特に××××は2ポイントくらいあげてもいいですよね。×××のうえ、あんな××××××を、お前……っていう。そうなると殺した数も五分五分かもしれませんね。
白石:
そのへんのバランスも実は考えています。
金田:
どちらの呪いもスピーディで、テンポがいいんですよね。さっきまで呪いの説明をしていた人が、次の瞬間には死んでしまう。
白石:
常に想像の先をいくスピードで。「もう殺っちゃうのか!」という。
金田:
なんかシーンを挟むかと思いきや。
白石:
挟みません。呪いは待ったなしですから。
金田:
さらに呪いの時間が来る前に自殺しようとするような不届きな奴は、一番怖い目に遭わせてやると。
白石:
ルール違反も許さないという。
ちゃんとあります、百合要素
金田:
白石監督の作品といえば、百合要素、つまり女性同士のLOVEがほんのりと描写されることでも有名ですけど、今回の有里ちゃん(山本美月)と夏美ちゃん(佐津川愛美)もそういう雰囲気がありますよね。登場した瞬間から、片方が片方に頭をもたれかからせていて、立ち入れない空気を醸し出していて。
白石:
あそこは2人の距離の近さを出したいと思って、ああしてみたんです。
金田:
たしか大学の教室ですよね。森繁が呪いのビデオの説明をしていて、一方では有里ちゃんと夏美ちゃんがもたれあっていて。セリフがないのにキャラと関係性が分かって、さすが白石監督! いろんな情報を1つのショットに込めていくなと。そのうえ(百合で)うれしいという。
白石:
ありがとうございます、私もうれしいです(笑)。
金田:
でも夏美ちゃんは、人としてやってはいけないことをやらかしちゃいますよね。×××××××という、恐ろしいアレに、アレを……。
白石:
そのあとの「1人で死ぬのは怖いから見てて」ってのも、相当ですよね。
金田:
あっ、あれは悪いポイントなんだ。私としてはせつないポイントかと。
白石:
せつないポイントなんですけど、普通の人にとってはかなり異常ですよね。
金田:
ものすごい手際よく密室を作るなと。
白石:
あれは少し前から考えてたんでしょうね。あと機械に疎いとか言いながら×××に×××はできるんですよね。
金田:
それは気付かなかった!(笑)
白石:
きっとアナログには疎いんですけど、スマホとかはけっこう使えるんですよ。あとあの性格だから、できるのに有里にやらせてた可能性もありますね。
金田:
有里ちゃんに、お礼に学食5回分おごると約束していましたね。金額にして、大体3000円ぐらいでしょうか。
白石:
3000円分もないんじゃないかな……あ、いや、あるか、ちょうどそれくらいかもしれない。
金田:
てっきり工藤Dお得意の3000円を絡めてきたのかなと(※)。
白石:
ホントだ、言われてみれば!(笑) なんか俺にとってのリアルな数字というのが「3000円」なのかもしれない。3000円あったらCD1枚買えるもんな、っていう。
金田:
3000円ってけっこう大きいですよ。1000円だとちょっと少ないなと思うけど、3000円だと誠意を感じる。
白石:
「あっ、そこまでしてくれるんだ」っていう感じはありますね。
「貞子vs伽椰子」はハートフル百合ムービー
金田:
さらに、映画を見終わってから気づいたのですが、百合要素といえば実は、貞子と伽椰子も……?
白石:
そう……ですね(笑)。
金田:
最後に××××で×××った時、2人のこれまでのヒストリーが一気に共有されて、一瞬のうちに分かり合ったんじゃないかって。「あんたもつらい過去あったんだ……」とか言って慰めあう会話が、どこかであったんじゃないかと思うんですよ。
白石:
貞子「その腕の上げ方、好きだわ」、伽椰子「私も実はずっと立ちたかったの」みたいな会話が(笑)。
金田:
それですよ! そういう語らいが一瞬のうちに。いや、一瞬だけど、2人にとっては永遠みたいな感じで。
白石:
ビッグバンのような。
金田:
だからタイトルは「vs」だけど、本質は百合映画ってことですね。
白石:
ある意味、そうです。
金田:
白石監督はいつも、細かい設定とかは訂正してくださるんですけど、私が大筋で変な解釈を言うと大体肯定してしまうという(笑)。
白石:
いやいや、でも実際、Twitterでエゴサーチすると「貞子と伽椰子って、これひょっとして百合なんじゃないか?」っていう意見はけっこう見ますよ。
金田:
2人とも、悲しい目に遭った、人をたくさん呪い殺してきたという過去がありますし、初めて同じレベルでそれを分かり合える相手に逢えたってことですよね。
白石:
2人がこう、目が合ったときに、××××××ってなるじゃないですか。あれはきっと興奮しちゃったんですよね。体の血が沸き立って、沸き立ちすぎて××××××ってなっちゃった。
金田:
手を握りたいという気持ちが抑えられなくて、ビデオをメキメキッてやってしまうような。
白石:
お互い照れがあるから、ちょっと暴力的なんですよね。「大好き! メキメキッ」「私も! シュッ」って。好きだからこそふざけてスカートめくりをしちゃうような。だから「あのシーン」は、やっぱりキスですよね。
金田:
キスだったんだ! 思いが体を越えて走っていったということですよね。ホラーではなく、ハートフルムービーだったんですね。
白石:
「よしこれで、みんなを破滅に追いやろう!」「楽しそう!」みたいな。
金田:
2人のキスシーン、劇場でもう1回確かめてみます!
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