VR空間の中を"どこまでも歩ける”魔法のシステム「無限回廊」を体験してきた
実際はぐるぐるしているだけなのに、本当にまっすぐ進んでいる感覚が。
東京大学大学院の廣瀬・谷川・鳴海研究室と、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの簗瀬洋平さんが共同研究しているVRシステム「無限回廊」(関連記事)。この錯覚を利用した、VR空間を「どこまでも歩ける」システムの体験会が6月27日に催され、ワクワクしながら参加してきました。
会場となる教室には、パイプと板で組まれた円周が設置。上から見ると、2つの半円からなるショートトラックのようになっています。この周囲をHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着して歩くと、現実では曲線を歩いているのに、視界上では錯覚により直進しているように感じるというこのシステム。理屈で分かる前にまず実践ということで、チャレンジチャレンジ。
体験者はOculus RiftとノートPCを装備。Oculus Riftに接続されたノートPCは、リュックに入れて背負います。システムが起動すると、視界はVR空間のエレベーターの中。上昇して外に出ると、そこは高層ビルの壁面。狭い足場を渡り、ビルのまわりを歩くことになります。正直おっかない。
透けた足場にびびりつつ、左手を壁に添えてそろそろと歩く筆者。右に外れると足を踏み外してしまう恐怖もあり、自然と身体は壁に寄ります。あとで知らされたことですが、壁を触った感覚が視覚に大きく影響し、直進と錯覚する作用を手伝っているとのこと。確かに自分が曲面を回っているようには感じませんでした。
現実の道が丁字路にさしかかると、VR空間にも同じく曲がり角が出現。手探りで曲がると、そこは設備の半円に挟まれた直線が。ここを進むときは、現実もVR空間も一致しているため、スムーズに直進できました。
左折と右折を経て進むと、ゴールの風船が見えてきました。これで終わりか……と思いきや、突然足場が崩壊。筆者がパニックに陥るなか、体験は終わりました。開発者の簗瀬さんいわく、「学術発表では平坦な実験に終始しがちなところを、スタートとゴールを明確にして区切りをつけた」とのこと。過去のゲーム開発でつちかった知見が生かされているそうです。
筆者が歩いた軌跡は、別のPCでモニタリングされていました。データを見せてもらうと、歩いた距離は約60メートル。限られたスペースの中、まさにVR空間で長距離歩いたことになります。高所渡りの緊張のせいか、平坦な道を歩いていたはずなのに、心なしか足腰から悲鳴が。恐ろしい没入感でした。
最後に開発者の鳴海拓志さんと、簗瀬洋平さんから解説をしていただきました。開発はインタフェースに縛られず、VR空間を自由に動きたいという思いからスタート。
そのために、実際の歩みを視界上ではまっすぐに見えるよう補正する「曲率操作」と呼ばれる手法を選択。しかしこれを実現するには直径44メートル以上の円弧を歩く必要があり、そのままでは現実的ではありませんでした。
そこで研究陣は、人が空間を把握するうえで視覚だけでなく聴覚や嗅覚など、ほぼすべての感覚を使っていることに着目しました。触覚が視覚に及ぼす影響を利用し、壁を設けて利用者に触らせることで、曲がり具合が急な面を歩いても、違和感なく直線と感じさせることに成功。設備の小型化を実現しました。
今後の構想としては、既存の丸い建物や手すりを利用してシステムを構築することも視野に。また、小さなデバイスを左手で持つことで、体験できるようにする仕組みも考えているそうです。
最後に無限回廊の応用例を聞くと、お化け屋敷などアミューズメント施設での利用が中心とのこと。それ以外はあまり想定していないものの、高所作業のヒヤリハット体験や、鉄道博物館で、車両に触りながら映像を体験するといった用途も考えられるそう。
ドラえもんの道具「未来のルームマラソン」のように、この技術を応用すれば、VR空間で楽しくランニングを続けられる仕組みなどもできそう。自宅をゲレンデや旅館にしてしまったりと、ドラえもんにはVR体験を思わせるエピソードが多数ありますが、無限回廊はそんな夢を広げてくれそうです。
(沓澤真二)
関連キーワード
東京大学 | 体験会 | ヘッドマウントディスプレイ | Oculus Rift
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
【ハンドメイド】余った布が大変身! 捨てるのがもったいなくなる活用法に「天才じゃないですか!」「素敵なアイデア」
-
庭に置かれた“普通の物置” → DIYで“まさかの姿”に大変貌 「え?物置ですか?」「すごすぎ」
-
クルマのドアが開かない……! 車内から緊急脱出する“驚きの方法”に目からウロコ 「貴重な情報」「良い知識」
-
両親の離婚を機に、男子高校生が初めて作った“お弁当” その出来が「すごい」「なんか泣ける」と300万再生突破
-
コストコで人気「ヨーグルト」に大腸菌群陽性の可能性…… メーカーなど謝罪「深くお詫び」 5万8000個自主回収
-
買ったばかりの家の風呂場に”ありえない欠陥” 信じられない状況に「そんなことある?」「取り付けた業者……」
-
大人なら5秒で解きたい!「9+0÷2-3」の答えは?【算数クイズ】
-
天皇皇后両陛下と愛子さま、“おそろいコーデ”に23万いいね 着用アイテムに同系色
-
高校生のときに出会った“同級生カップル”→「親に頼らん!」と必死に貯金して…… 19年後、現在の姿に反響
-
「上達すごくね!?」 中学生絵師、小1→中2の成長ぶりに思わず感嘆 「人間の可能性を感じる」
- 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
- DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
- 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議
- スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
- 東京藝大卒業生が油性マジックでサンタを描いたら? 10分で完成したとんでもない力作に「脱帽です」「本当にすごい人」
- 定年退職の日、妻に感謝のライン → 返ってきた“言葉”が約200万表示 大反響から7カ月たった“現在の生活”を聞いた
- 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
- 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
- 「すんごい笑った」 “干支を覚えにくい原因”を視覚化したイラストが勢いありすぎで1700万表示の人気 「確かにリズム全然違う!」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
- パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
- 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
- ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
- 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
- フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」