幻のレトロゲーム専門誌「ゲームサイド」が帰ってきた! 徳間書店から「GAMEgene」として新創刊 公式Twitterでは“精神的続刊”と説明
誌名は「GAMEgene(ゲーム・ジーン)」に一新。山本悠作編集長にお話を聞きました。
2015年に惜しまれつつも休刊となった、レトロゲーム専門誌「ゲームサイド」(関連記事)のメンバーが再集結し、新たなゲーム雑誌「GAMEgine(ゲーム・ジーン)」を創刊することが分かりました。出版社は変わりましたが、公式Twitterでは“精神的続刊”と説明。事実上の「復刊」と言ってもよさそうです。
編集長の山本悠作さんをはじめ、スタッフは「ゲームサイド」の主要メンバーそのまま。「ゲームサイド」のコンセプトを引き継ぎつつ、さらに独自に昇華させた“精神的後継誌”をうたっています。発行元は「ファミリーコンピュータMagazine」「テクノポリス」などを手掛けてきたスタッフによる会社・アンビット。
8月26日発売の創刊号では、タイトーの縦スクロールシューティング三部作「レイフォース」「レイストーム」「レイクライシス」を特集。もともとは「シューティングゲームサイド」休刊により一度はお蔵入りになっていた特集で、復活にあたり企画を1から作り直し、大幅にページ数を増量し構成したとのことです。他にも「ジャレコ音ゲー大全」「『天野ゲーム博物館』に行こう!」などを特集予定。
通常、一度休刊になった雑誌が復活することはめったにありません。なぜ復刊に至ったのか、山本編集長にお話を伺いました。
「アンビットに来れば?」が出発点
── 「GAMEgene」ですが、どういった経緯で創刊することになったのでしょう。
山本悠作さん:
私は2015年10月までマイクロマガジン社のゲームサイド編集部に所属していたのですが、同社を退職することになって、これからどうしようかと考えていたときに、「アンビットに来れば?」と声をかけてくれたのが、アンビットの編集委員・山本直人さんでした。かつて「ファミリーコンピュータMagazine」の2代目編集長だった人物です。
それでアンビットでお仕事をすることになりまして、これは多分会社に実力を試されていたのだと思うのですが、しばらくはゲーム攻略本の制作を手伝ったり、レトロゲーム関係に強いでしょう、ということで、集英社さんの「ファミ熱!!」プロジェクト のお仕事に参加したり、同プロジェクトの単行本第1弾「週刊少年ジャンプ秘録!!ファミコン神拳!!!」(関連記事)の編集を任されたりしていました。
それから少しして「次に何をつくりたいのか?」と新規の目標を促されたのと、前述の山本直人さんから「ゲームサイドの後継誌をいつか実現しよう!」と常々激励されていたこともあり、「GAMEgene」創刊の提案に至りました。
徳間書店の遺伝子を受け継いだ新たな「ゲームサイド」に
── 一度休刊した雑誌を復刊させるというのは、会社としても、山本さんとしてもかなりのチャレンジだったと思いますが。
山本さん:
休刊した媒体を復活させるには当然、同じ轍を踏まないように新しい試みが必要です。弊社代表の山森さんに、「ゲームサイドと同じことをやっても、同じ休刊の道をたどることになってはいけない。アンビットには30年分のゲーム出版の蓄積がある。それを利用してゲームサイドからより進化させたものを作ってみなさい」という方針を提示されたのが自分の中では大きかったですね。
アンビットという会社は、徳間書店発売の任天堂専門誌「Nintendo DREAM」の発行元です。山森さんは「ファミリーコンピュータMagazine」の初代編集長をはじめ、「テクノポリス」「MSX-FAN」「PCエンジンFAN」「メガドライブFAN」「セガサターンFAN」「プレイステーションマガジン」など、徳間書店系列のゲーム誌やゲーム攻略本を編集長あるいは発行人として数え切れないほど世に送りだしてきた凄腕の人物で、弊社は今もそれらのリソースを保有しています。そして当然、長年ゲーム出版を続けてこられた徳間書店さんの販路も使わせていただける。
それともう1つ、前述の山森さん&山本直人さんの2人は、コンピュータゲーム黎明期からゲームを理解していて、ファミコンブーム以降はゲーム出版に関わっていたプロフェッショナルです。対照的に僕は、少年期をファミコンで過ごした根っからのゲームファンでした。だから、ゲームの進化と歴史を業界視点で見てきた上司2人と、消費者視点で見てきた自分、という組み合わせで、従来よりも広い視野でゲーム誌を作れるかもしれない、という期待もありました。ゲーム媒体を新たに立ち上げるには願ってもない環境や条件が、このように次々とそろったわけです。
とはいえ「GAMEgene」としての復刊第1号では、前述した「アンビット色」はまだ薄くて、まだまだ「ゲームサイド色」が色濃い内容となっています。それは、第1号でやるべきは、昨年作りかけて休刊により未発表となっていた特集を、一から作り直して世に出すことが、読者や取材協力者との約束を果たすことになると考えたためでもあります。「GAMEgene」の巻頭特集「RAYの軌跡」と「ゲーム音楽ヒストリカル・インタビュー」など、幾つかの記事がそれにあたります。
ゲーム文化に貢献したい
── 今後はどんなゲーム誌にしていきたいですか?
山本さん:
近年、同人出版や電子出版を個人でもしやすい環境となり、また動画共有サイトでの検証動画やゲーム実況などの隆盛もあって(それらが権利的にセーフかアウトかはメーカーやゲームによって異なるのでさておき)ゲームファンがゲームの研究や発表をしやすく、それがSNSを通じて拡散される……という時代になりました。
そんな中、商業媒体に求められるのは「メーカー公認の情報を得られること」と「ゲームへの貢献」だと考えています。
前者は言葉の通りです。後者の「ゲームへの貢献」というのは、ゲームは文化になった、といわれることもありますが、音楽・演劇・芸能・文芸・絵画など、文化と呼ばれるものは人が模倣することで継承されていく部分がある。でもゲームって、電子媒体であり工業製品でもあるので権利的にも複雑だから、模倣で継承されるということがされづらい。
では、どうやったらゲームという娯楽をこれからも未来に残していけるだろう? と考えると、1つは、Web全盛の時代に、あえて後世に「物理的」に残る紙媒体でゲームファンに時代を経ても色あせない情報を届けてそれを残していくこと。2つ目に「遊び続ける」「遊ぶ人を増やす」というものがあります。だから「GAMEgene」はゲーム誌ができることとして、読者にとって「遊び続けたくなる」「遊んでみたいゲームが見つかる」ゲーム専門誌でありたい。
「GAMEgene」はゲームの全時代を対象としているので、今では遊ぶのが難しい古いゲームも載っていたりしますけれど、「昔のゲームはよかったな」「懐かしくていいな」と回想だけで終わるのではなくて、「今、遊んでみたいな」と過去の名作の復刻版や移植版を遊んだり、ゲームショップに足を運んだり、お目当てのゲームが稼働しているゲームセンターを探して足を伸ばしてみたりしたくなる。あるいは過去の名作ゲームのテイストを受け継いだ新作を遊んでみたくなる。そんな気持ちになれるゲーム誌でありたいと考えています。
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