劇場アニメ「傷物語」の舞台あいさつに神谷浩史、櫻井孝宏ら アフレコは原作とのニュアンスの違いに悩み

音楽を担当した神前暁さん、プロデューサーの久保田光俊さんも登壇しました。

» 2016年08月20日 00時00分 公開
[宮澤諒ねとらぼ]

 西尾維新さん原作による劇場版アニメ「傷物語」の第2部「熱血篇」の上映が8月19日に始まったことを受け、東京・新宿の「新宿バルト9」でキャストらによる舞台あいさつが行われました。

 舞台あいさつには主人公・阿良々木暦役の神谷浩史さんをはじめ、忍野メメ役の櫻井孝宏さん、音楽を担当した神前暁さん、同アニメのプロデューサーであり、アニメを制作したシャフトの代表取締役でもある久保田光俊さんが登壇。完成した映像を見ての感想や、制作の裏話などが語られました。

「傷物語」舞台あいさつ 左から櫻井孝宏さん、神谷浩史さん、神前暁さん、久保田光俊さん

 傷物語は、物語シリーズの原点ともいえる作品で、阿良々木暦がいかにして吸血鬼になったのを描いたストーリー。今年の1月に公開された第1部「鉄血篇」はどちらかといえば会話を中心とした“静”の展開だったのに対し、熱血篇はバトルを中心とした“動”の物語。ドラマツルギー、エピソード、ギロチンカッターといった吸血鬼ハンターたちとの圧巻の戦闘シーンが描かれます。

 そんな吸血鬼たちとの戦いを強いられた暦を演じる神谷さんは、完成した映像を見て「声優をやっていてよかった」と思えたそう。鉄血篇と同じく、原作を片手に台本をチェックするスタイルでアフレコに挑んだ神谷さん。傷物語はテレビシリーズと違ってモノローグやナレーションが極力省かれており、その分ビジュアルで説明している部分が多いことから、その絵にどういった意味が込められているのかを原作から拾い上げ、それを正確に「音」にしていく作業が求められたといいます。

 特に羽川翼とのシーンは原作とニュアンスが大きく異なっており、原作の通りにアプローチすべきか、それとも絵の通りにアプローチすべきか悩んだそう。結果、「原作とアニメーションの間に立つ者」として、「なるべく、原作のニュアンスをとれるところはアニメーションに落とし込む」という方向になったとか。また、羽川と暦の距離が猛烈に近く、かなり青春しているとも。「その青春の部分で、原作のニュアンスをどの程度落とし込めるかというのが僕の中での戦いでしたね」(神谷)。

阿良々木暦役の神谷浩史さん 「人間強度下がりすぎですよね」と神谷さん

 そんな暦と吸血鬼たちの橋渡しをする自称「怪異の専門家」忍野メメを演じる櫻井さんは、「それぞれのキャラクターのスタンスとか考え方とかそういうものが、この熱血篇にはぜいたくにたっぷりと描かれていた」と感想を口に。メメに関しては、テレビシリーズとは違った、ミスをしたりしくじったりする姿が描かれ、「役者側からするとアプローチに悩むような感じで、方向性を決めなきゃいけない」という課題も生まれたといいます。

 また、暦に対して「コラ!」と怒るシーンでは、そのニュアンスに関してだいぶ悩んだそう。話し合いも行われ、最終的には「慈愛というか、優しく包み込むようにというか、そういうニュアンスでいいんじゃないか」との結論に至ったそうですが、「なんか(「コラ!」というせりふが)堀江由衣さん(羽川翼役)の声で聞こえる」という意見もあがったという裏話も披露し、会場が笑いに包まれる一幕もありました。

忍野メメ役の櫻井孝宏さん 神谷さんに「コラ!」のニュアンスをほめられ、「ふうん、そ、その通りです」と若干噛みながら同意し、ここでも会場が沸いていました

 シリーズの音楽を担当している神前さんは、尾石達也監督とのエピソードを披露。尾石監督は、古きよきフランス映画みたいなおしゃれなテイストを入れたいと考えており、神前さんは鉄血篇からその考えに沿った曲を入れるようにしていったそう。監督はイメージを伝えるために10枚ほどのメモを渡したといいます。熱血篇ではEDにフランス人歌手のクレモンティーヌさんを起用しており、ここにも尾石監督のこだわりが見られます。

神前暁さん 「人前に立つことがあまりないため緊張しています」と神前さん

 傷物語は、もともと2012年に公開を予定されていた作品。久保田さんは、公開が遅れてしまったことを謝りつつ、待ってくれていたファンたちに対しての感謝。作品に関しては自信をのぞかせ、「いまできる一番のやれることを形にしたものだと思っている」「(お待たせしたことにも)耐えうる素晴らしい映像美になったのではないか」と語りました。

 また、公開が4年遅れたからこそできたこともあったと神谷さん。「『人間強度が下がるから』というせりふ一つとっても、あれは『終物語』で描かれていることなので、『この言葉の意味ってここにあったんだ』ということをあらためて知った上で音にできているというのは、僕にとってすごいプラスになっている」「もし2012年に公開していたら、自分の想像であの音を作らなきゃいけなかったのが、今回ちゃんとした形で音にできているというのは僕の中で非常に大きいし、その時々で一番いいものを作っていければいいと思っている」と、公開延期がすべてマイナスだったわけではないことを強調。

 「17歳の少年を演じる上で、その歳に近ければ近いほど感性が近いから、演じるにあたって都合がいいということは当然あると思うんです。……とはいえ、2012年にやったとしてもいい歳ですから僕も」と、持ち前のトークスキルで会場を沸かせつつ、「いまこうして、このタイミングで皆さんにお届けできたのはなにか意味があったんじゃないかと思っています」と、パーフェクトな回答を披露しました。

久保田光俊さん 「本当によく完成したなと胸をなで下ろす思いです」と久保田さん

 傷物語の第3部「冷血篇」は2017年1月に公開予定。既にアフレコの日程も決まっているそうで、神谷さんは「傷物語は悲劇へつながる悲劇の物語です。いったいこの先にどんな悲劇が待ち構えているのか、ぜひその目でお確かめください」と作品をアピール。鉄血篇では劇場で5回も見たという神谷さん。「皆さんもぜひ4回、5回と足を運んでいただけたら幸いです」と呼びかけ、登壇者の誰よりも深く深くお辞儀をし、嵐のような拍手の中会場を後にしました。

 劇場版アニメ「傷物語〈II 熱血篇〉」は8月19日に全国117の劇場で上映を開始しています(PG-12指定)。

「傷物語〈III冷血篇〉」 「傷物語〈III冷血篇〉」のキービジュアル

(C)西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2504/16/news023.jpg 「成長したらそのうち襲ってくる」と言われたワニ、16年後……→ 280万回再生を突破した驚きの姿に「初めて見た」の声
  2. /nl/articles/2504/18/news037.jpg 赤ちゃんを抱く25歳のパパ→時は流れ、娘が成長すると…… “激似ショット”に「すげー」「ほんとだ!」
  3. /nl/articles/2504/18/news020.jpg 息子「なんで俺の制服はみんなと違うの?」→入学式翌日に発覚した“母のうっかりミス”に「笑いすぎてお腹痛い」
  4. /nl/articles/2504/18/news172.jpg 「1回もエンジン掛けてない」 寺門ジモン、“希少な高級外車”を7年放置で廃車寸前に……ボロボロで激ヤバな相棒へ「ごめんな〜!」
  5. /nl/articles/2504/16/news035.jpg 「ウソだ…」「言葉が出ない」 幼少期から絵を描き続けた少年→15年後…… 大人になって描いた絵が100万再生【海外】
  6. /nl/articles/2504/16/news010.jpg 猫と一緒に眠る3カ月赤ちゃん→よく見ると…… ママがキュンとした光景に「尊すぎるぅぅぅ〜」「究極の至福感」
  7. /nl/articles/2504/16/news024.jpg 飲み終えた“コーヒーかす”→捨てずに石と混ぜると、1カ月後…… 「感動」目からウロコの裏ワザに「やってみよう」
  8. /nl/articles/2504/18/news016.jpg ずーーっと「イルカ」だと思っていた鍋敷き→15年後…… 「まじかww」まさかの発見に「声出た」「ほんまや!」
  9. /nl/articles/2504/18/news056.jpg 23歳女子、“寝起きすっぴん”大公開→メイクしたら……「嘘やろ!?」 驚きの大変身に「破壊力やば、、」
  10. /nl/articles/2504/17/news044.jpg 「盛大に邪魔してきた」 撮影中のカメラマン、偶然とらえた“奇跡の一瞬”が310万表示 「決定的瞬間」「狙っても撮れないって!」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小学生時代「こんなプラモ誰が買うんだよw」→40年後…… “大人になった”を実感するエピソードに「分かる」「特大ブーメランw」
  2. パパに、保育園へ行く娘のヘアアレンジを任せたら…… ママがひっくり返った“仕上がり”が400万表示「重力どこ?」「頑張った感がいい!」
  3. 「神パンツきた」 ユニクロ新作“3990円パンツ”が品切れラッシュの大人気 「過去イチかも」「本当にこれは買い」
  4. なんとなく捨てにくい紙袋→2カ所切り込みを入れるだけで…… 目からウロコの“活用術”に「これすごくいい!」【海外】
  5. 「見習うことばかり」 80代おばあちゃんの春服&収納術がステキ! 上品かつオシャレで「憧れです」「尊敬します」
  6. ファスナーに直接毛糸を編み付けていくと…… 完成した“便利でかわいいアイテム”が100万再生「天才だ」「これ大好き」【海外】
  7. 「尊厳を踏みにじる行為」 八代亜紀さんの“物議のCD”は「流通会社がすでに流通を中止」 タワレコが回答
  8. 古くなったジーンズは捨てないで! 目からウロコの“アイデア”に大反響「なにこれかわいい!」「こんなの作れるんだ」【海外】
  9. 指先サイズの小さな器に木を植えて、育てたら…… 「芸術だ」「半端ない」鳥肌モノの“神盆栽”に反響
  10. 義母「ランドセル代を振り込みました」→銀行口座を見ると…… 2児ママ絶叫の“神対応”が1520万表示「凄すぎる!」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 【べらぼう】“問題のシーン”、「子供に見せられない」 身体張った27歳俳優へ「演技やばくない?」
  2. 「恩師ビックリするやろなぁ」 中学3年で付き合い始めた“同級生カップル”が10年後…… まさかの現在に反響
  3. 「本当に迷惑」 宅急便の「不在連絡票」と酷似のチラシが物議…… ヤマト運輸「配布中止申し入れ」
  4. 「うそでしょ!?」 東京ディズニーランド、“老舗”レストランの閉店を発表 「とうとう来てしまったか」「いやだああああ」と悲しみの声
  5. 雑草ボーボーの運動場に“180羽のニワトリ”を放ったら…… 次の日、まさかの光景に「感動しました」「すごい食欲」
  6. 40歳・女性YouTuber「18年間、脇毛を処理していない」→“処理しない理由”語る 「脇のみならず……」
  7. コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
  8. 息子の小学校卒業で腕を組んだ34歳母→中学校で反抗期を迎えて…… 6年後の姿に反響 「本当に素敵!」「お母さん、変わってない!?」
  9. Koki,、豪邸すぎる“木村家の一室”がウソみたいな広さ! 共演者も間違えてしまうほどの空間にスタジオビックリ「コレ自宅!?」「ちょっと見せて」
  10. 使わない靴下をザクザク切って組み合わせると…… 目からウロコの再利用法が2500万再生「とてもクリエイティブ」【海外】