【ニッポン洋食ものがたり】コロッケはいつから「国民食」になった?
コロッケ食べたい。
みんな大好き「コロッケ」。揚げたてのアツアツに、ソースをたっぷりかけて……想像しただけでたまりません。
お肉屋さんの名物コロッケ、デパ地下で買うおしゃれなコロッケ、レストランで気取っていただくクリームコロッケなど、皆さんそれぞれに思い出の味があるのではないでしょうか? 近年では「台風の日はコロッケを食べる」なんて新習慣(?)も見聞きしますね。
そんなコロッケが日本で作られるようになったのは、明治時代。たった百数十年の間に普及し、定番メニューになったというわけです。どうして、これほどまでに愛されるようになったのか? コロッケの歴史をひも解きます。
日本最古のコロッケのレシピとは?
明治時代の初め、日本が国を挙げての「近代化」「西欧化」に躍起になっていた時代。食生活も例外ではなかったようで、西洋料理店が次々と開店し、料理書の発行も盛んに行われました。1872(明治5)年に発行された「西洋料理指南」という書物に、早くもコロッケの作り方が紹介されています。
さらに、官公庁や学校、鉄道の食堂車などが「洋食」をメニューとして採用。いわば「上からの改革」といった形で、洋食の普及が進められていきました。
じゃがいも主体のコロッケになった理由とは?
フランスの前菜「クロケット」に由来すると言われるコロッケ。日本では、メイン料理、おかずの主役として独自の発展を遂げました。
フランスのクロケットは、ベシャメルソースと具材を合わせた、クリームコロッケ的なもの。日本のコロッケの具材が「じゃがいも」主体になったのは、どうしてでしょうか?
「乳製品の取り扱いに不慣れだったから」「じゃがいもが北海道に導入され、盛んに栽培されるようになったから」などの説がありますが、有力なのは「オランダ料理の影響」説。明治時代に、長崎で西洋料理店を始めたシェフが、オランダ料理の知識と天ぷらの調理法を組み合わせ、レシピを考案したというのです。
不況、震災……コロッケは「庶民の味方」
明治時代の中期になると、高級路線の西洋料理店はすたれ、代わりに「洋食屋」「一品洋食」などの、庶民が気軽に食べられる価格のお店が登場。こうしたお店で、人びとは「コロッケ」「カレー」「オムライス」といった洋食に親しんでいきました。
第一次大戦後の「戦後不況」、アメリカの大恐慌による「昭和不況」、それに関東大震災……1920〜30年代の時代背景が、コロッケ普及に拍車をかけたという話もあります。お肉屋さんの店頭で、揚げたての「トンカツ」や「コロッケ」を売る商売が大流行。中でも、こまぎれ肉をじゃがいもに混ぜて油で揚げたコロッケが、「安くてたくさん食べられる」として人気を呼んだのです。
その後、現代に至るまで進化を続けている日本の「コロッケ食文化」。「ご当地コロッケ」もたくさん登場していますよね。桜えび、こんにゃく、タケノコ、イノシシやシカの肉を使ったものなど、その味わいも百花繚乱。旅行や出張の際に、ご当地コロッケ探しをしてみるのも楽しそうです。
コロッケにまつわるお話あれこれ、いかがでしたか? 今回は書ききれませんでしたが、コロッケに付き物の「ソース」にも、深〜い歴史があるようです。そのお話は、また日をあらためてご紹介したいと思います!
参考:堤人美「コロッケ・パラダイス!」(グラフィック社)
岡田哲「明治洋食事始め とんかつの誕生」(講談社学術文庫)
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