「4人に1人が本気で自殺したい」「5人に1人が身近な人を自殺でなくす」――日本財団が自殺に関する調査結果を発表
「自己有用感」「社会問題解決能力」「共感力」が自殺のリスクを抑える要因との分析も。
公益財団法人日本財団が、9月10日の「WHO世界自殺予防デー」に合わせて、自殺意識に関する大規模調査の結果を発表した。8月2〜9日、全国の成人男女約4万人を対象に実施したもの。4人に1人が「本気で自殺したいと思ったことがある」、5人に1人が「身近な人を自殺でなくしている」といったデータが、10のファクトとしてまとめられている。
全体の25.4%に「本気で自殺したいとの思考」(以下「自殺念慮」)があり、若年層ほどその傾向が高いことが判明。男女別では、男性(22.6%)よりも女性(28.4%)の割合が高くなっている。就学・勤務先や経済、健康の問題など、幅広い原因があり、自殺念慮者の65.5%が、2つ以上を挙げた。特に男性は勤務問題、女性は家庭問題を主要因とする傾向がある。
視点を自殺未遂経験者に移すと、過去1年以内で全国推計53万人超。その原因は自殺念慮者と同様に複合的で、81.4%が2つ以上を挙げている。自殺念慮者の場合、各原因の割合は均一的であったが、自殺未遂経験者の場合は家庭問題と健康問題が突出する結果となった。
全体の21.7%が、身近な人(家族、友人、恋人)の自殺による死別を経験。その経験者は自殺を意識しやすいことも分かった。恋人を自殺でなくした人のなかで、自殺念慮者は59.4%、自殺未遂経験者は38.6%。同居中の家族をなくした人では、それぞれ40.2%、16.1%。喪失感による自殺の可能性が浮き彫りにされている。
世代別では、20〜39歳の若者層が最も自殺のリスクが高いと分析。自殺未遂経験のある若者層の多くが、男女ともに被虐待や貧困、ひきこもりなどに直面していた。男性では離婚や事業不振、女性では家庭内暴力や育児不安といった要因が見られる。
自殺のリスクを抑える要因は、「自己有用感」(言い換えると「自信」)と「社会的問題解決力」(問題を解決できる能力があるというポジティブ志向)、「共感力」(「人間は理解や共感ができる」と考えている)との分析も。これらを備えた者は、過去の被虐待や現在の生活苦があっても、自殺のリスクが低いとのデータが示されている。
全体の過半数が「自殺のことで相談しない」、居住者の満足度が高い地域ほど自殺リスクが低いといったデータも。日本財団は今回の調査結果をふまえて、自殺のリスクが高い若年層や自殺未遂者への支援強化や、「生き心地の良い地域作り」など、自殺対策の方向性へ提言。「日本財団いのち支える自殺対策」プロジェクトを強化すると表明している。
(沓澤真二)
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