「史上最大の崖っぷちに追い込まれております」―― コミックビームが突然の「緊急事態宣言」 漫画雑誌はこの先生きのこれるのか(2/3 ページ)
Webコミックは「お城がない城下町」
―― 雑誌単体で黒字を出してるところってないんですか。
奥村 あるにはある。ものすごく歴史があって、載ってる作品の寿命がやたら長いところとかね。
―― 数十万部とか刷ってるところは?
奥村 あー、どうなのかな。でも雑誌の利益って、ある程度の部数を越えたら輸送コストの方が跳ね上がっちゃって、そこからは横ばいに近くなるって話は聞いたな。だから部数が多いから黒字とも限らない。
―― 雑誌の赤字を単行本でカバーする、というのはどこもできてることなんでしょうか。
奥村 できてたのよ。
―― 過去形ですか。
奥村 今、それが順調にできなくなりつつある。
―― それはビームも?
奥村 もちろんそうです。「テルマエ・ロマエ」みたいなヒットがあった時はもう、そりゃ黒字ですよ。誰が何と言おうが黒字になります。ウチみたいな規模の小さいところにしてみれば、ちょっとできすぎちゃったくらいの数字だった。だけどじゃあトータルで見ればどうかというと、一時的にはポーンと跳ね上がるけど、他の単行本の部数はやっぱりジリジリ下がってた。そういうドカーンと当たるのを待ちながら、ちょっとくらい赤字でもなんとか頑張ろう! みたいな感じで必死に穴埋めしながらやってるところは多いと思うよ。
―― 一種のギャンブルですね。
奥村 ただ、なんで雑誌が赤字になるかっていうと、雑誌は原稿料を払わなきゃいけないからなんだよね。雑誌の方でもう原稿料を払ってあるから、単行本は利益率が高い。でも本当は全部、そういうのも含めて原価って計算しないと不公平なんだよ。だからまあ、雑誌だけのせいとばかりも言えなくて。
―― 雑誌が赤字というより、単行本も含めたトータルが赤字になってるのが問題だと。
奥村 もう1つ大事なのは、雑誌って「月に何ページ描かなきゃいけない」っていう楔(くさび)なんですよ。まあ、それがないと人間、描かないよね(笑)。締め切りなしで漫画描ける人ってよっぽどよ。だからみんな雑誌やめれないの。そりゃみんな言うよ「雑誌が赤で単行本が黒だったら、雑誌切り離したら真っ黒じゃねえか」って。
―― それはちょっと考えました。
奥村 だけどやっぱりね、ある程度の拘束力がないとモノって描かないです。みんなケツをにらみながら「こんなの描いてていいんだろうか」って迷いながら表現してる。でもどっかの段階で判断下さないとモノなんて作れなくて、そのために何が必要かっていうと締め切りなんだよ。もう描かなきゃヤバイ! と思うから、いろんなものをシャットアウトしてモノ作れるわけよ。それは人間みんなそうなんじゃないかな。
―― 今って無料のWebコミックとかも増えてきていますよね。ああいうのにシフトしていくつもりはなかった?
奥村 もちろん考えたけど、ピンと来なかったね。それやっちゃうくらいならもうやめちゃった方がいいのかな、とか思ったりもした。オレのイメージだと、お城がない城下町みたいな感じがするんだよな。
―― 雑誌はお城ですか。
奥村 オレはそう思ってる。
―― で、漫画は城下町。
奥村 多分な。でも城下町にはやっぱ城がいるんだよ。例えば今、日本にお城っていっぱいあるけど、実は明治時代あたりにほとんどつぶされてるのね。でもポンポンポンポンあちこちで復活してる。なんでかというと、城下町に城がねえとイマイチしっくりこねえだろ。そういう構造になってんのよ。それをなんだろう、形はないけどデジタルの漫画雑誌です、っていわれてもさ。うーん、これはでも感覚的なモノかもしんないなあ。でも感覚的なモノだけど大事なモノのような気がどっかでしてるぞ。
―― お金の動きだけ見たら、雑誌は赤で単行本は黒なんだから、作品はWebで読んでもらって単行本で元を取ります、ってのは一見理にかなってはいますよね。
奥村 理にかなってます。だからみんなやるんです。でもなかなかうまくいかないんです。
「おせっかいな兄貴」がいなくなった
奥村 もう1つ、オレは雑誌で育ってきた人間だから、雑誌ってのは出会いの場だと思ってるんです。ビームが絵柄も話もバラバラな作品を一緒に載せてるのはそのためで、例えばある作品が目当てで雑誌買ったら、それ以外の作品も読むじゃないですか。そこから自分が知らなかった作品に出会って、世界が広がっていく。単行本がメインになったら、みんな自分の好きな傾向のモノに縛られちゃってそこから広がらなくなるよ。雑誌ってのはそれを広げていく役割が本来あるはずで、そういうのがないと、漫画読みの修行としては非常に偏ったモンになるんじゃなかろうかなと……まあそんな修行なんてしなくたっていいんだけど。
―― 僕らネットニュースの世界でも同じようなことをよく言われます。ネットだとみんな自分の好きな記事しか読まない、だから新聞を読めみたいな。
奥村 そういうことです。
―― ただ「修行」っておっしゃってましたけど、一般的な漫画読みの価値観からすると、興味がないものを読むのって、やっぱり苦行なんじゃないですかね。
奥村 こないだ会議で話したんだけどさ、おせっかいな兄貴がいないのかもしれねえなあ。オレらの年代以上、特に団塊の世代なんかそうだけどさ、いたんだよ、おせっかいな兄貴。
―― おせっかいな兄貴?
奥村 そう、なんかの先輩とかさ。「お前こんなのも知らねえの? うわあコレ知らねえ奴とオレは話してたのかよ〜!」みたいなのがいっぱいいたんだ。で、後から後から「ロックってのはよぉ」とか「漫画、大友(克洋)読んでる? 読んでねえ? あーまた出た、1冊貸してやっからよ、読んでみろよお前、な?」とか。そういうおせっかいな兄貴がいっぱいいてさ、若いやつを見ると髪の毛をつかんで引きずっていってさ、「コレでも見ろオラァ!」って見せるんだよ。
―― 桜玉吉さんも、近所のお兄さんの影響で岡林信康にハマったって言ってましたね。
奥村 そういうのが必要なんだよ。こっちが子どものころから面白いと思ってたのをボコボコにしてさ、実は大したことねえんだよみたいなことを言ってくる兄貴がさ。青春の挫折だよな、そんな大げさなもんじゃねえか。でもさ、ありがたいんだよ……ありがたい。だって世界広げてくれるんだぜ。むりやり。
―― そのための雑誌だと。
奥村 多分そういうことなんだと思うぜ。だから雑誌も今はいらなくなってきてるのかもしれない。雑味しか感じないと。オレなんかはさ、雑味の中にこそ新たな味覚っつーもんがあると思ってるけどな。ずっと甘いモンばっか食ってるんじゃねーぞバカヤローって。まあいいや。それが多分オレの本音なんだ。
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