このチンパンジー、ただ者じゃない 多摩動物公園の「動物脱出対策訓練」がガチだった
今年はチンパンジーが脱出した想定での訓練でした
今年もまたこの季節がやってきました。上野動物園と多摩動物公園が隔年ごとに行っている「動物脱出対策訓練」が、今年は2月7日に多摩動物公園で実施されました。
2016年は上野動物園で、シマウマが柵から逃げ出した場合を想定しての訓練でしたが(過去記事)、今回のお相手はチンパンジー。「開園中の動物園で地震発生により、チンパンジー運動場のタワーのワイヤー下部が外れ、反動でワイヤーにつかまっていた動物がモートの外へ飛ばされた」という訓練でした。
本日訓練に参加したのは警察・消防も合わせた約100人。パトカーや機動隊の姿もあり、現場には緊張感が漂っています。
逃走チンパンジーの情報は常に無線でやり取りされており、無線で職員がチンパンジーの攻撃を受け、負傷したことを知ります。だんだん近づいてくる逃走チンパンジー。そして、筆者が待機している場所にも包囲網が築かれ始めました。
ついにチンパンジーが姿を見せる
訓練開始から1時間ほどでついにチンパンジーが姿を見せました。チンパンジーは周囲に警戒しながらこちらに近づいてきます。すごい威圧感だ……!
後ろから、チンパンジーを刺激しないようゆっくりと続く動物園の車両に包囲網。チンパンジーはじわじわと包囲されている。
すると、大勢の職員に興奮したチンパンジーが職員に襲い掛かる場面も。職員も網を揺らしたり棒で地面を叩いて音を出したりして応戦します。
昨年の訓練の「シマウマ」は着ぐるみのかわいさもあってか緊張感の中にかすかなほっこり感がありましたが今年のチンパンジーはヤバイ。こんなのに襲われたらひとたまりもないわ……助けて……と思っている間に麻酔銃を積んだ車両が到着。車両を見て興奮した様子のチンパンジーとの間合いをじりじりと詰めていきます。麻酔銃はしっかりチンパンジーを狙います。そして……。
「パアン!」と響き渡る銃声。チンパンジーの体がふらつきます。麻酔銃がチンパンジーに当たった!!
麻酔銃が効いたようで、その場に倒れ込むチンパンジー。
車両から棒でつんつんされるチンパンジー。その後、職員が車両から降りて確認し、残りの職員がチンパンジーをてきぱきと網にくるみ、車両へ積み込みます。
訓練後、講評を行い、チンパンジーさんも被り物を外して園長と共にメディアの取材対応を行いました。チンパンジーの中の人は爽やかボーイ。例年中に入る職員は新人で、自分の担当している動物の役を演じることが多いということです。今回担当した職員も普段からチンパンジーの飼育を担当しており、歩き方だったり、ディスプレーと呼ばれる威嚇行動だったりにリアルさを感じました。
動物は見ている分にはかわいいですが、いざ外へ逃げてしまうとそこはやはり危険を伴った「猛獣」です。動物園としては柵から逃げてしまうようなことはそもそも「あってはならないこと」ですが、天災などの想定外の事態が発生した際には速やかに対処しなけれなりません。一見、着ぐるみを使ったゆるい訓練かと思いきや、実際は動物園をもっと安全で楽しい場所にしたいという意気込みが伝わってくる、「ガチ」な訓練でした。
(ちぷたそ)
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