そうだ、火星行こう(メロンと) 短編アニメ「Black Holes」制作のきっかけは「お尻の穴の鋭い痛み」(謎)

制作チームに聞いてみました。

» 2017年03月24日 15時00分 公開
[城川まちねねとらぼ]

 4カ月で制作され、サンダンス映画祭にもノミネートされた約12分の短編アニメ「Black Holes」。ちりばめられた哲学的なテーマや耳に残るメランコリックな音楽など、不思議な魅力はIndieWire誌に「ピンク・パンサー映画のパンクロック版」と評価されるほど。制作チームは現在、続編制作のための支援をクラウドファンディングで募っています

Black holes 知能を持ったメロンと宇宙へ

(※日本語字幕あり)

 火星に向かうミッションを与えられた宇宙飛行士のデーブと、NASAがパートナーとして選んだファッションデザイナーの生まれ変わりだという果物の「メロン」を中心としたストーリー。フランス人兄弟のデビッド・ニコラとローレン・ニコラに、プロデューサーのケビン・ヴァンダー・メイレン、脚本のローラ・デロンを加えた4人を中心に制作されました。

Black holes セクシー美女だけど父親がこわいパターン

 もともと、デビッドとケビンが2カ月掛けて作り上げた約3分の短編を見たサンダンス映画祭の関係者から「さらに長いフィルムを作れないか」とオファーを受けたのがきっかけで生まれた同作。デビッド、ローレン、ケビンに詳しく聞いてみました。

Black holes 「Black Holes」制作チーム

―― 「Black Holes」、不思議な作品ですね。どんな風に思い付いたのですが?

デビッド きっかけは私が17歳で、グラフィティーアートの世界にはまっていたときでした。ある日、お尻の穴に鋭い痛みを感じたんです。母に連れられ病院に行き、軟膏の処方を期待していたのだけど、なぜが直腸検査を受ける羽目になってしまって。若かった私にはこの検査がとてもショッキングで、トラウマになりました。さらに最悪なことに、その検査をした医者が偶然にも私と同じマンションに住んでいたんです。マンションでその医者と顔を合わせる度に検査を思い出し、部屋から出るのが怖くなるほど。グラフィティーアーティストとして有名になりだしたころでしたが、その検査の記憶は若かった私にとって自信を失うほどのことでした。

―― 作中にもデーブに直腸検査でトラウマを与えたフィンガー教授の娘・クララも登場しますが、これは制作陣の実体験だったんですね(笑)。宇宙飛行士の設定はどう生まれたんですか?

ローレン 私たち兄弟にとってヒーローだった映画「ライトスタッフ」(※アメリカ初の有人宇宙計画を実話に基づいて描いた1983年の映画)のエド・ハリスとサム・シェパードについて考えたんです。会いたくない人物の顔を毎日みなければいけないとき、彼らだったら何をするだろう、って。普通なら自信を失うような事柄が起きたとき、彼らならトラウマをどう乗り越えるか、強くいられるのかを考えたのです。

ケビン それで私とローレンは2D短編アニメの「Pierre The Astronaut」という映画をフランスで制作しました。これが「Black Holes」の元となっています。

Black holes トラウマをはねのけ作品に

―― 今のチームはどうやって集まったのですか。

ケビン 「Pierre The Astroaut」の続編シリーズを制作しようとビジュアルコンセプトや3Dのパイプラインの作業に取り組んでいたころ、サンダンス映画祭の関係者が私たちのビデオクリップを幾つか見た後、短編アニメを2カ月で完成させられないかと聞いてきました。私たちはそれを受け入れ、何人かの友人たちとともに制作を開始したんです。音楽家のOizo、 Flying Lotus、Sebastian、素晴らしい俳優のWilliam Fichtner、Steve Little、「スター・ウォーズ」や「スター・トレック」のサウンドデザイナーでもあるWill FilesとRobby Stamblerなど。全く資金もない状態で私たちの情熱と、そんな私たちを信じてくれる友人たちの寛大さ、才能だけで作品を完成させました。

―― すごいスピード感。3Dとか大変じゃなかったですか?

デビッド 友人たちが3Dのパイプラインを完成させたんですが、これがとても画期的で、自宅のPCでも、とても早く、かつ美しい3Dイメージを制作できるものでした。複合的なソフトウェア技術で、3D映像制作は今までよりずっと早く進めることができますね。

「Black holes」 突然現れる季節はずれのタネなしメロン

―― 「Black Holes」はかなり成熟した視聴者を想定しているように思えましたが、作品のテーマは?

デビッド おっしゃる通り大人のためのアニメシリーズなので子どもは楽しめないかもしれません。メインのテーマはやや哲学的ですが、火星ミッションを通して人生の意味を表現していきます。そして人々が忘れがちな、大きな目標を成し遂げることの素晴らしさや人類の偉大さを伝えていきます。

―― ところで問題は「メロン」。作中では知的でファッションセンスも優れたメロンは、まわりの人間を魅了していきますが、なぜ果物にこんな役割を持たせたんですか?

ローレン この世で1番無意味な生命体を選び、それに知識と意識を与えたかったんです。最終的に行き着いたのがメロンでした。

デビッド 実は私たちの故郷である南フランス地方では、メロンは神聖なフルーツ。それがメロンを選んだ無意識の理由かもしれません。

ケビン 今回の短編フィルムで主人公のデーブは、メロンに対し動揺し恐怖を覚えますけど、今後のシリーズでは、全知全能の神のような存在のメロンを次第に理解していくことになります。

「Black holes」 メロンのファッションセンスで宇宙服も最先端モードに

―― シリーズ化の暁にはどんな形態で公開する考えですか?

ケビン この短編アニメから続くファーストシーズン(※22分のエピソード×10回で1シーズン)の制作を進める考えで、既に幾つかのアメリカとフランスのテレビチャンネル、ネットテレビと協議しています。ただ、まだどの媒体で公開するかは決まっていません。私たちの目標は、多くの視聴者に見てもらうのと同時に、制作に関して独立性を確保することです。

「Black holes」 何かややこしいことになってきた!

―― 若いアニメーターにとって、クラウドファンディングの活用はより良い作品制作に有効?

デビッド・ローレン・ケビン クラウドファンディングは独自の作品を作り、それを売り込みたいクリエイターにとって、商業上の「しがらみ」から距離を置くにはとても良い方法です。まず作品を知ってもらい、資金を集め、視聴者・ファンを集めコミュニティーを作りあげるには最適な場所。クラウドファンディングをはじめるには大変な労力が必要ですが、たくさんのクリエイターにお勧めしたいです。

「Black holes」 メロンとデーブはどこまでいくのか。ファーストシーズンの実現に期待

画像提供:「Black Holes」制作チーム

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/14/news019.jpg ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  2. /nl/articles/2412/10/news133.jpg 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  3. /nl/articles/2412/12/news089.jpg フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. /nl/articles/2412/14/news081.jpg 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  5. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  6. /nl/articles/2412/15/news002.jpg 毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
  7. /nl/articles/2412/14/news038.jpg 「釣れすぎ注意」 消波ブロック際に“カツオを巻いた仕掛け”を落としたら…… 驚きの結果に「これはオモロい!!」「こんなにとは」
  8. /nl/articles/2412/14/news063.jpg 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  9. /nl/articles/2412/14/news002.jpg 【今日の難読漢字】「男衾」←何と読む?
  10. /nl/articles/2412/15/news024.jpg おじいちゃん「昔はモテた」→孫は信じていなかったが…… “今では想像できない”当時の姿が140万再生「映画スターのよう」【米】
先週の総合アクセスTOP10
  1. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  2. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  3. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  4. 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
  5. 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
  6. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
  7. 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
  8. 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
  9. コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
  10. 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」