ディズニー作品をアート的&技術的に解説! 「ディズニー・アート展」を一足先に見てきたミッキーマウスからモアナまで

ミッキーマウスの幻のデビュー作から「モアナと伝説の海」まで。

» 2017年04月07日 18時33分 公開
[宮田健(dpost.jp)ねとらぼ]

 東京・お台場の日本未来科学館で、2017年4月8日から「ディズニー・アート展<いのちを吹き込む魔法>」東京展が開催されます。日本においては東京を皮切りに大阪、新潟、仙台を巡回する、ディズニーをテーマにした貴重なアートを直接見られるイベントです。

 結論からいうと「必見」。最新作「モアナと伝説の海」や「ズートピア」に関する展示もいっぱい。ディズニーに触れたことのある方なら、老若男女問わずに楽しめるはず。今回の展示を楽しむための知識として、90年にわたるディズニーアニメ史にも触れつつ、それらを紹介しましょう。

1928年「蒸気船ウィリー」でミッキーは生まれた

 ディズニー史のなかでも大きなマイルストーンは、やはり「ミッキーマウス」の登場です。ミッキーマウスは声と絵がシンクロするトーキー映画「蒸気船ウィリー」でデビューしました。その声を担当したのは、あのウォルト・ディズニーです。

ウォルト・ディズニー すべてはウォルト・ディズニーから始まりました
貴重な蒸気船ウィリーのアートの前に立つのは、本展覧会の企画制作を行うウォルト・ディズニー・アニメーション・リサーチ・ライブラリーのメアリー・ウォルシュ氏、そして日本科学未来館のキュレーター、内田まほろ氏

 実は今回、その蒸気船ウィリーよりも前のミッキー出演作の原画が日本初公開されます。それは「プレーン・クレイジー」。描かれたのは1928年、つまり昭和3年。90年近く前に、ウォルトの右腕ともいうべきアニメーター、アブ・アイワークスによって描かれました。

プレーン・クレイジー これが「プレーン・クレイジー」。ミッキーマウスの幻のデビュー作です

長編アニメーションを支える科学技術と人

 初の“長編”アニメ作品として、ウォルト・ディズニーは「白雪姫」を制作します。それまでは子ども向けとして認識されていたアニメ作品を、大人が見ても「泣ける」という文化にした、記念碑的作品です。

白雪姫 白雪姫の貴重なアートがたくさん

 その後も「ピノキオ」「ファンタジア」を制作。ところがこれらの作品は、当時はヒットとまではいかず、歴史に埋もれた作品になってしまいました。特にファンタジアはアート性が大変高かったものの、一般向けにはかなり難しい作品として映りました。ウォルト・ディズニーを支えた当時のアニメーターたちは「ナイン・オールドメン」と呼ばれ、いまも伝説的な存在。そして後年、これらの作品は再評価されることになります。

ピノキオ ナイン・オールドメンと呼ばれる伝説的なアニメーターの1人、フランク・トーマスによる「ピノキオ」

 実はここでは、2Dアニメーションに奥行きを与える「マルチプレーンカメラ」や、オーケストラ演奏を忠実に再現する「ファンタサウンド」、そして無数のダルメシアンを描くための「ゼロックス」など、注目すべき技術も考案されています。このあたりがしっかり紹介されているのは、さすが「日本科学未来館」といえるでしょう。

マルチプレーンカメラ これは2Dアニメーションに奥行きを付ける「マルチプレーンカメラ」の原理を紹介したもの。ウォルト・ディズニーはそのときの最新技術を作り続けてきました
ウォルト・ディズニーの「科学」が「魔法」になる様子をていねいに解説しています

 この時代には、2人ほど重要なアーティストがいます。1人目は「メアリー・ブレア」。ふしぎの国のアリスでカラー/スタイリストとしてコンセプトアートを担当しました。その絵柄を見ると一目で分かるように、彼女は後に、ディズニーの代表的なアトラクション「イッツ・ア・スモールワールド」のデザインも手掛けます。

メアリー・ブレア メアリー・ブレアの色使いを見ると、どこか懐かしい感じがします

 そしてもう1人は、アイヴァンド・アール。「眠れる森の美女」で背景を担当しています。その緻密さ、独特な色使いはまさに“アート”。その功績を認められ、2015年にはディズニー社による「ディズニー・レジェンド」の称号を与えられました。

眠れる森の美女 アイヴァンド・アールが描いた「眠れる森の美女」の背景

「リトル・マーメイド」「美女と野獣」が作った第2黄金期

 1989年、再びディズニー・アニメーションが脚光を浴びます。ディズニー・ルネッサンス期で多用されたミュージカルが戻ってきました。音楽家、ハワード・アシュマンとアラン・メンケンが作り出した作品たちです。「美女と野獣」はアカデミー作品賞に、アニメーション作品として初めてノミネートされるほどの評価を受けました。この時期の作品は、皆さんもよくご存じなのではないかと思います。

ハワード・アシュマン アラン・メンケン 音楽家、ハワード・アシュマンとアラン・メンケン。「美女と野獣」はこの2人が作り上げたといってもいいでしょう

 この時期の特徴は、「コンピューターグラフィックス」を効果的に取り入れたこと。今でこそ当たり前のCGですが、美女と野獣での舞踏会シーンをはじめて見たときには本当にびっくりしました。いま見ても色あせない名シーンです。なお、いわゆる「セル画」を使った最後の作品は「リトル・マーメイド」。それ以降はコンピューター彩色が利用されています。

マケット 「マケット」と呼ばれる貴重な模型も
ライオン・キング こちらは「ライオン・キング」の貴重なアート群

プリンセスが変わる――いま、ディズニーは再び黄金期へ

 実はここで、ディズニーが暗黒期を迎えます。「チキン・リトル」や「ダイナソー」などの作品が作られ続けてきましたが、CG制作の難しさを身をもって知った時期でした。それががらりと変わるのが、ピクサーを買収しジョン・ラセター監督が本格的にディズニーアニメーションスタジオに入ってきた、「塔の上のラプンツェル」以降の作品です。そして爆発的なヒットを迎えた「アナと雪の女王」、先ごろ公開がスタートした「モアナと伝説の海」につながっているわけです。

塔の上のラプンツェル ディズニーに対する印象が大きく変わった「塔の上のラプンツェル」。ディズニーの3DCG史において大きな存在でした
アナと雪の女王 そして「アナと雪の女王」

 ここで注目したいのは、やはり「プリンセス像」。シンデレラで作られた「夢をかなえる」プリンセスが、「リトル・マーメイド」や「美女と野獣」において「自ら夢を追い、行動する」というスタイルに変化。そして「アナと雪の女王」では「プリンス不在」となり、「モアナと伝説の海」では劇中、自らの言葉としてはっきりと「私はプリンセスではない!」と述べるほど。

 ディズニーではいま、旧来プリンセス像を変化させ、プリンセスを「高い目標と努力で夢を勝ち取った象徴」にしつつあります。このプリンセス像の変化と、アートの変化を見比べてみることも、本展覧会の醍醐味(だいごみ)です。

アナとエルサ かなり初期のアナとエルサ。描いたのはラプンツェルや野獣を描いたグレン・キーンの娘、クレア・キーンです
モアナと伝説の海 最新作「モアナと伝説の海」からは、映画全体の「色」を統一する色台本を展示しています

開会式にはモアナ役、屋比久知奈さんも登場

屋比久知奈 「How Far I'll Go」を熱唱する屋比久知奈さん
屋比久知奈 屋比久さんは開会式でテープカットにも登場しました
左から日本科学未来館館長 毛利衛氏、「モアナと伝説の海」モアナ役 屋比久知奈さん、メアリー・ウォルシュ氏

 開会式ではモアナ役に抜てきされ、その歌声が既に話題の屋比久知奈さんも登場。劇中で披露される「How Far I'll Go」を生歌で披露しました。

 屋比久さんは展示を見て「映画『モアナと伝説の海』とは異なる、コンセプトアートが多数展示されていて、この映画がさまざまな過程を経て作られたことを感じました。そして監督がリサーチ過程で描いたスケッチブックの実物など、貴重な展示に感動しました」とコメントしました。実は本展の音声ガイドは、あの山寺宏一さんとともに屋比久さんがナレーションを担当しています。大変詳細な解説が聞けるので、ぜひどうぞ。

 ディズニー・アート展は2017年4月8日から9月24日まで、東京・お台場の日本科学未来館にて開催されます。そしてその後、2017年10月14日から大阪市立美術館で、2018年2月17日から新潟県立近代美術館で、2018年6月9日から宮城県美術館での巡回開催が決定しています。大変貴重なアート群、おそらく、ディズニーの印象が変わるほどのインパクトがあるはず。お近くの方はぜひ体験を。

ディズニー・アート展グッズ もちろん、グッズもたくさん登場しています!
(C)Disney Enterprises, Inc.


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/13/news176.jpg 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  2. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. /nl/articles/2411/14/news042.jpg 夫「250円のシャインマスカット買った!」 → 妻が気づいた“まさかの真実”に顔面蒼白 「あるあるすぎる」「マジ分かる」
  4. /nl/articles/2411/14/news090.jpg ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  5. /nl/articles/2411/14/news167.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. /nl/articles/2411/14/news187.jpg 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. /nl/articles/2411/13/news162.jpg 「情報操作されてる」「ぜーんぶ嘘!!」 175R・SHOGO、元妻・今井絵理子ら巡る週刊誌報道を一蹴 “子ども捨てた”の指摘に「皆さん騙されてます」
  9. /nl/articles/2411/14/news035.jpg 160万円のレンズ購入→一瞬で元取れた! グラビアアイドル兼カメラマンの芸術的な写真に反響「高いレンズってすごいんだな……」「いい買い物」
  10. /nl/articles/2411/12/news194.jpg 「予約しました」 サッポロ一番の袋に見せかけた“笑っちゃいそうなグッズ”が話題 「サッポロ一番味噌ラーメン好きがバレちゃう」
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた