「LINEで勧誘された」 SNSで広がるマルチ商法、その問題点と“法律で全面禁止”されない理由 (1/2)
法律で禁止されない理由は。
「マルチ商法って何が悪いの?」こんな書き込みをネット上の質問掲示板などで見かけます。質問者は若い人が多いようで、「マルチ商法は詐欺だと習った」くらいの認識のようです。そうか、最近の若い人はマルチ商法が何なのか知らないのか……と、国民生活センターに15年間勤めた筆者は感じます。
ネット上でのこうした質問への回答を読んでいくと、相反したような内容が並んでいます。
- 「ネズミ講と同じ」/「ネズミ講とは違う」
- 「トラブルが多い違法な取引」/「合法だから問題ない」
一見正反対に見える主張が存在するのはどうしてでしょうか? 実は、マルチ商法が生まれてからの歴史をたどると、どうしてこの両方の意見が出てくるのか、その背景が見えてきます。
先ほど「最近の若い人」と言いましたが、筆者は1976年生まれ。マルチ商法が日本で最初に流行し始めたのは1970年前半で、現在40歳の自分も生まれてはいません。そこでいろんな資料を使って調べてきましたので、一緒にその歴史をひもといていきましょう。
最近のトラブルは「SNS」が特徴
歴史を知る前に、まずは“今”の状況を見ていきましょう。マルチ商法に関するトラブルでは、最近はどのようなケースが多いのか、国民生活センターに取材しました。
マルチ商法に関する相談は、20歳代の相談が圧倒的に多く、中でもSNSをきっかけにしたトラブルが増加傾向にあるとか。具体例として、最近行政処分が出た「旅行等会員権」のマルチ商法の手口を教えてもらいました。
SNSを用いた手口
甲さんは、SNSで知り合いから「旅行を仕事にしませんか?」「会って話しましょう」というメッセージが来たので、喫茶店で会うことにしました。
喫茶店で「セールスレター」を渡されました。セールスレターには「旅行するだけでもうかる。セミナーに行こう!」と書いてあり、翌日セミナーに行くことに。
セミナーでは講師に「お金がもらえる」「楽しいよ」「高額な年収が得られるよ」などと説明されました。その間知り合いにはずっとつきまとわれていて、スマホを使うことさえできません。
ようやくセミナーが終わりました。帰ろうとしても、関係者に取り囲まれて、とても帰れない雰囲気。「今登録しないといけない」と長時間勧誘されて、結局会員登録をしてしまいました。
LINE、Facebook、Instagramに……悪質商法の書き込み
このように、SNSをきっかけとするトラブルが近年増加傾向にあります。前述の事例のように喫茶店に呼び出されるケースもあれば、申し込みまでネット上で完結するケースもあるそうです。
多くの人が普通に使っているTwitterやFacebook、InstagramなどのSNSに、そのきっかけとなる投稿があり、マルチ商法に限らずあらゆる悪質商法の入口になっているとのこと。そこからLINEなどの個別メッセージに誘導されるケースもあります。
以前はマルチといえば友人や親戚への勧誘というイメージが強かったですが、今はSNSを使って不特定多数を勧誘することも。地元の友人を一斉に勧誘したら、地元にいづらくなったなんて話もあります。被害者が加害者にもなるのがマルチ商法の特徴。勧誘した友人の親にひどく怒られたという話も聞いたことがあります。
国民生活センターへの相談内容としては、「お金を取り戻したい」が多数。必要な初期費用は、幅はあるものの、例えば学生相手なら20万〜30万円と、クレジットカードの利用限度額を狙ったと思われる金額だったり、リボ払いにさせられていたりで、決して気軽に諦められる金額ではありません。
マルチ商法のお金の流れ
さて、ちょっとマルチ商法を知っている人は、前述の事例のどこがマルチ商法なのだろう? と思ったかもしれません。実は、この事業者はセールストークで「1人紹介するとボーナスが入り、2人紹介すると最初の会費分を取り返せる」と説明していました。
つまり、
- 1人紹介するとボーナスが入る(=人を誘うとお金がもらえる)
- 最初にお金を払う必要がある(=始めるためにお金がかかる)
とてもざっくりとした説明ですが、大概のマルチ商法にはこのお金の流れが含まれています。実際には事業者がはっきりと説明しないこともあって、相談者本人もマルチ商法だと自覚しておらず、相談に来て初めてマルチ商法だと気付くこともあるんだとか。このあたりの仕組みは本当に複雑です。
ところで前述の事例を読んで「勧誘の問題であってマルチ商法の問題ではないのでは?」と思われた方もいるのではないでしょうか。確かに、この売りつけられ方をしたら、売られたものがマルチ商材でなく、高額な情報商材でも、大量の布団でも、とにかく何でも嫌でしょう。
マルチ商法はそれ自体は法律で禁止はされていませんが、たくさんの禁止事項が規定されています。その禁止事項の多くは勧誘時に関するものなので、どうしても行政処分が出るときは勧誘の問題にフォーカスされがちです。
このあたりが「マルチ商法って何が悪いの?」という疑問を生む一因ではないかと感じています。そもそも「マルチ商法」がどういうものか知らなければ、良いも悪いも判断できないでしょう。
マルチ商法が日本に登場した1970年代、何が社会問題になったのかを見ていくと、冒頭のさまざまな疑問の答えが見えてきます。という話の前に、国民生活センターの方に「これだけは書いておいて」と頼まれたので、そちらを先に言わせてください。
勧誘をされて契約してしまったけど、なんか不安。やっぱりやめたいなどということがあれば、早めにお近くの消費生活センターに相談してください。
消費生活センターの電話番号は全国どこでも「188」です。
クーリング・オフ期間内なら、クレジットカードの引き落とし前なら……など、対応が早いほど打てる手が増えます。心配なのでアドバイスが欲しいというだけでも相談は受けていますので、心にもやもやがあったら一日でも早く相談してください。
ネズミ講って何ですか?
こうした悪質商法に引っかからないためには、その仕組みや歴史を理解しておくことも重要です。マルチ商法の前に、まずは仕組みが理解しやすいネズミ講について解説しましょう。
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