目は見えなくても原稿は超クオリティー テープ起こし専門集団「ブラインドライターズ」ライター&運営インタビュー(4/5 ページ)

» 2017年08月13日 15時00分 公開
[福田瑠千代ねとらぼ]

この仕事は続けられてあと5年か、10年

――松田さんと知り合ったきっかけは「CoCo-Life☆女子部」というところだそうですが、こちらはどういった団体なのでしょうか。

和久井 CoCo-Life☆女子部は「施無畏(せむい)」というNPO法人が運営している編集部で、障がいのある女子たちに向けたファッション・情報誌を作ってます。もちろんその紙面に登場するのも全部当事者だし、ライティングをするのも当事者。女の子の、当事者目線でものを作るっていうのが1つの特徴なんですけど、それだけだとクオリティーが担保できないので、そこをプロの方たちがプロボノ(ボランティア)という形でサポートしています。

――現在、ライターは女性ばかりのようですが、ブラインドライターズには男性でも参加できるんですか?

和久井 現在も新人ライターを募集してますが、男性も大歓迎です! 残念ながら継続することが難しかったようですが、過去にも男性からの応募はありましたよ。

――「ブラインドライターズ」では全員目に障がいがあるんですか。

和久井 ライターさんはそうですが、校正で入ってくれてる咲坂美緒さんは下肢障がいの方です。みんな得意不得意があるので、そこはうまく配分してます。

――依頼はどういったものが多いのでしょうか。

和久井 いろいろですね。最初は知人を介したお仕事が多かったですが、最近はメディアさんからのお仕事が増えてきました。サイトがあちこちで取り上げられた直後はさまざまな分野の方からの依頼が増えたのが意外でしたね。「そもそもこんな仕事があったのか」と知っていただけたようで。


――料金が良心的ですよね。通常料金が15分1500円、誤字校正ありが3000円、完全書き起こしが8000円と。

和久井 ただ、通常料金で受けている限りどうしてもライターさんに満足いく月給がお支払できないんですよね。プラス1万円で「特急料金」というコースがあるのですが、こちらが合わさってくることで、ようやく専門的な仕事としてのお給料になってくる。基本料金の値上げも考えたことはありますが、同じような値段でやられている方もいらっしゃるので、競争力がなくなるよりは、他の依頼よりも優先して作業する「特急」で、お急ぎの方にはその分をお支払いいただくほうが双方メリットがあるのではないかと思って。なので「通常」や「校正付き」のご依頼の場合は、納期を少しお待ちいただくこともあります。一般のライターさんは今の金額がギリギリだと思うんですよ。あと、完全書き起こしは、そもそも「通常」のクオリティが高いので、依頼が来てもお勧めしていません。

――ご自身がライターをやられているからこその視点ですね。運営の観点から見て、今後の「ブラインドライター」「ブラインドライターズ」はどうなっていきそうですか。

目は見えなくても原稿は超クオリティー テープ起こし専門集団「ブラインドライターズ」ライター&運営インタビュー ビジネス系からテニス、マンガレビュー、旅コラムと幅広く執筆している和久井さん

和久井 結局、目の前の仕事に全力で取り組んでいくしかないと思ってます。音声読み取りソフトがすごい勢いで発達しているので、たぶんこの仕事は続けられてあと5年か、10年いけばいいくらいかなと思ってるんですけど。同時に他の技術も進んでくるとは思います。視覚を補助する技術が開発されるとか。でも今はそれを考えてもしょうがないので、仕事を誠実にこなしながら次の何かに備えられる、プラスアルファを勉強しておくっていうのが最善かなと。

 どんな仕事も5年、10年と同じ状態では続けられないですよね。形を変えていかないと生き残れないので、そこは別にこの業界だからということではないと思います。ではこの先何をしていけばいいかっていうのは現時点では分からないので、取りあえず今この仕事をしながらできることをやるだけですよね。それこそ「語彙を増やす」とか、地道なところからコツコツと。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/21/news189.jpg 「大物すぎ」「うそだろ」 活動中だった“美少女新人VTuber”の「衝撃的な正体」が判明 「想像の斜め上を行く正体」
  2. /nl/articles/2411/22/news014.jpg 川で拾った普通の石ころ→磨いたら……? まさかの“正体”にびっくり「間違いなく価値がある」「別の惑星を見ているよう」【米】
  3. /nl/articles/2411/22/news114.jpg 中村雅俊と五十嵐淳子の三女・里砂、2年間乗る“ピッカピカな愛車”との2ショを初公開 2023年には小型船舶免許1級を取得
  4. /nl/articles/2411/21/news027.jpg 大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
  5. /nl/articles/2411/22/news032.jpg 「壊れてんじゃね?」 ハードオフで買った110円のジャンク品→家で試したら…… “まさかの結果”に思わず仰天
  6. /nl/articles/2411/22/news018.jpg 猫だと思って保護→2年後…… すっかり“別の生き物”に成長した元ボス猫に「フォルムが本当に可愛い」「抱きしめたい」
  7. /nl/articles/2411/22/news171.jpg なんと「身長差152センチ」 “世界一背が低い”30歳俳優&“世界一背が高い”27歳女性が奇跡の初対面<海外>
  8. /nl/articles/2411/22/news145.jpg 大谷翔平と真美子さん、「まさかの服装」に注目 愛犬デコピンも大谷家全員で“歩く広告塔”ぶり発揮か
  9. /nl/articles/2411/20/news027.jpg 「こんなことが出来るのか」ハードオフの中古電子辞書Linux化 → “阿部寛のホームページ”にアクセス その表示速度は……「電子辞書にLinuxはロマンある」
  10. /nl/articles/2411/22/news184.jpg 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた