「たけしの挑戦状」は今の小学生が遊んでもやっぱりクソゲーなのか? → ガチで遊んでもらったらものすごく正直な感想が出た
案外素直に攻略へ取り組む子どもたちに、「理不尽」が容赦なく襲いかかる。
タイトーが1986年に発売したファミコンソフト「たけしの挑戦状」(以下「たけ挑」)が、この夏スマートフォンアプリとして復活しました(iOS/Android)。監修のビートたけしが思いついた先鋭的なアイデアを盛り込んだ結果、理不尽な謎解き(後述)のオンパレードとなり挫折する者が続出。一部では「伝説のクソゲー」とまで呼ばれた迷作ですが、今回のリバイバルは、本当にクソゲーなのか再確認できる機会でもあります。
確かに「たけ挑」には悪く言われても仕方ない部分も多いのですが、我々は「クソゲー」のレッテルに惑わされてはいないでしょうか? 「平凡なサラリーマンが宝探しの夢を追う」物語や、「脇道でパチンコやカラオケが楽しめる」現代のオープンワールドゲームにも通ずるシステムは、発表当時は斬新で魅力的だったはずなのです。たけしの思い通りに実現できていたかはさておいて。
ひょっとすると、まっさらで先入観のない子どもならば、「たけ挑」本来の魅力を見出して楽しく遊べるのではないか? そう考えた編集部は、ねとらぼ特命担当、三ツ谷の長男・えいすけ君(12歳)と同級生にお願いし、オリジナルのファミコン版をプレイしてもらいました。全編「クソゲー」などヴィヴィッドな表現をやむなく多用しておりますが、タイトーの提供でお届けします。
おーい、えいすけ〜みんな〜、ものすごいゲームやらせてあげるから集まれ〜。
ふーん、「たけしの挑戦状」……たけしって誰?
テレビで見たことない? ビートたけしって。
ああ、映画監督の!
さすがに漫才師としてのたけしは知らないよなあ……まあいいや、ほら、このカセットだよ。
カセット……? これを(本体に)挿すところから?
どこに入れたらいいかわかんねえ。
これ、入れる向き合ってる? 表? 裏?
そもそも今どきの子が、ROMカセット自体知ってるわけなかった。
ノーヒントでクリアを目指すチャレンジ(無謀ともいう)
バタバタしつつも起動に成功し、いよいよ冒険の始まりです。もっともこのゲーム、サラリーマンの主人公が社長室にいるところから急に始まり、目的などはゲーム中で一切説明されません。ユーザーフレンドリーな最近のゲームに慣れた子どもたちにとって、いきなりの試練です。
あ、始まった。
で、これ何すんの?
社長からお金もらえたけど、これで買い物とかするのかな。
まずはノーヒントでという大人の要望から、手探りでプレイを進める子どもたち。それでも基本的な操作方法をすぐ覚え、社長から給料や退職金をもらえることに気付きます。町へ繰り出すと、ジャマな通行人を無邪気にボッコボコ。昔の自分と同じ遊びかたをしてくれて、おじさんちょっとうれしい。
この人に話しかければいいのかな……あ、倒せた(笑)。
そこの「カルチャークラブ」入って〜。
「スポーツ」……野球習えるよ! 5万5000円? 高い〜。
これ、お金稼ぐゲームなの? どうすれば稼げるんだろう。
銀行あったよ。銀行強盗できるんじゃないの?
お金下ろせるだけだった。あ、そうだ、社長のところに行ってみよう!
「社長をなぐる」って選べるよ? やってみよう……あ! なんか(警備員)出てきた!
こいつを倒せばいいのかな……あ、死んだ(笑)。
やられちゃったじゃん。で、ここまででどういうゲームか分かった?
……クソゲー。
気付いちゃったか……。
何度もゲームオーバーになりつつ試行錯誤を繰り返す子どもたち。説明書を回し読みしてやっと当面の目的が「町から国外へ出ること」だと気付くと、町を歩き回って手がかりを探していきます。
(本屋に入って)「ヌード写真集」とか売ってる……。
あ、「宝の地図」!
お金いっぱいあるし何でも買えるじゃん。
(外に出て)あ、パチンコ屋だ。
いや、これ「チ○コ」じゃね?
(爆笑)
このネタは今でもウケるんだなあ。
空港があると分かれば旅行会社でチケットを買ったり、カルチャークラブで語学を習ったりと、目標のために必要なものを相談しながらそろえていく子どもたち。しっかりゲームとして攻略しようと楽しんでいる様子です。
空港あったよ。ここから外国に行けるんじゃない?
でも飛行機乗れない……もしかして出発する時間まで待たないといけない?
あ、さっきの「カルチャークラブ」で飛行機の免許あったよ!
英語習っておけば外国人としゃべれるかな。あ、日本語も習っておこう。
日本人なのに?(笑)
どこかで飛行機のチケットも売ってたよね。高いから買わなかったけど。
あ、お金足りない……パチンコで増やせないかな?
(いろいろ間違いはあるけど考え方は正しいし、ちゃんと楽しんで遊んでるのがすごい)
何度目かのリトライで、地図・チケット・語学力などをととのえた子どもたちは意気揚々と空港から出発。しかしここからが「たけ挑」の恐ろしいところです。正解のアイテムなどがそろっていないとアウトになる不思議な設定のせいで、飛行機が爆発しゲームオーバー。現代の少年たちが「理不尽」の洗礼を受けた瞬間でした。
なんでだよーっ!
飛行機だとダメなのかな……船?
そういえば船の免許もあったよね。
パラシュートの免許もあったから、それがあれば飛行機が爆発しても助かる?
(違うんだよ……これはそんな理屈では解けないゲームなんだよ……)
攻略法を知ったうえでも、やっぱりたけしは手強かった
食事休憩をはさみ、午後から再挑戦。さすがに自力でこれ以上進めるのは無理だろうと判断して、今度は子どもたちに答えを教えてからプレイしてもらいます。
午前中はがんばったけど、いいところで爆発しちゃったね。実は、日本を出るために必要なものが足りなかったからなんだよ。
うん、会社を辞めたり、離婚したりしないといけなかったんでしょ?
あれ、なんで知ってるの?
休憩中に検索して少しだけ攻略サイト調べた。
さすがデジタルネイティブ、話が早い。離婚するときの慰謝料を安く済ませるために、給料や退職金をもらわず最低限のお金だけ持つといったアドバイスをすると、スムーズに話を進めていきます。
次は「カラオケスナックあぜ道」でお酒をおかわり……?
あ、酔っ払って家に帰された。奥さんが怒ってる!
ここで慰謝料を払えばいいんだね。ひどい話だなあ。
無事に離婚届を入手すると、次の目標は宝の地図。ネットで得た情報をもとに、カラオケスナックを目指します。
カラオケやると本物の宝の地図が手に入るらしいよ。
でも、カラオケの機械、さっき「故障中です」って出て使えなかったよ?
お酒を2杯飲んでからおかわりを断ると、なぜかカラオケしますか?って言われて、できるようになるんだって……。
変なの。でもカラオケってどうやるの? このゲーム機、マイクとか付いてないけど。
実は、今回編集部が用意したのはニューファミコンなので、本来カラオケに使うマイクは搭載されていません。しかし「たけ挑」ではIIコンの↓+Aボタンを押すことでマイク入力の代用ができるようになっています。そんなややこしいプレイ方法を説明すると、子どもたちは釈然としない様子ながら、役割分担してカラオケに挑戦するのでした。
どの歌にしようかな。あれ、「その曲はありません」だって。
歌えない歌ばっかりじゃん。
演歌でいいみたい。その「あめのしんかいち」ってやつ。
へえ……あ、「うまい」って言われた! 成功だ!
あ、続けてやってたらなんか出てきた。倒せ倒せ〜!
で、「老人は白い紙をくれた どうする?」って聞かれたんだけど……。
あ! これ有名な仕掛けじゃないの? 「日光にさらす」を選んで1時間待つと、紙に宝の地図が浮かび上がってくるとかいう無茶なやつ。
そう、この宝の地図こそ、「たけ挑」がクソゲーと呼ばれる際に取り沙汰される悪名高い仕掛け。ただ、本当に1時間待たなくとも、「水につける」を選んで5分以上10分未満が経過してからマイク入力をしてもOKという、裏技全盛期らしい抜け道も用意されています。もっとも、「たけ挑」の謎解き全般が裏技みたいな操作ばかりなのですが。
時間はもういいのかな。いよいよ本物の宝の地図だ〜(と言いつつIIコンの↓+A)。
地図が溶けたーっ! なんでー!
あれ……? もしかして、別のボタンも押しちゃった?
あ、そういえば押したかも……そのせい? ということは、最初からやり直し……。
この一件で、疲れていた子どもたちのモチベーションはダダ下がり。手順自体は簡単なので、カラオケのくだりまではすぐに復帰できたのですが、先ほどは難なく成功できたカラオケでミスを連発。大人たちに遠慮して黙っていた言葉が、素直に口からもれ始めます。
もう疲れた……。
代わってあげるよ……。でも、さっきはうまくいったのになんでだろう?
あー! またダメだーっ! ……たけし、やべえな。
かわいそうになってきたのでカラオケは筆者が代行。今度こそはと注意深く地図を処理し、やっと本物の宝の地図を手に入れました。
続いて「南太平洋行きのチケット」「ハンググライダーの資格」など必須なアイテムをそろえて空の旅へ。無事到着できるのか?
みんな! 祈ろう!
……やったー! 爆発しなかった!
日本を出たら服も変わって探険感出てきたね。
あ、装備屋さんあったよ。銃が買える〜。
リゾートセンターからハンググライダーで宝のありかへ飛んで行くんだけど、ここが一番難しいから、パスワードをメモしておこうね……って言っても分からないかな。
パスワードって、アレでしょ? 雑誌に書いてある記号打ち込むと、特別なアイテムがもらえるやつ。
今の子も、そんな形でパスワードに触れる機会あるんだな……。
ハンググライダーで飛び立つと、横スクロールシューティング面に突入。途中で別ジャンルのゲームが始まる、「たけ挑」らしい先進的な仕掛けです。襲ってくる鳥やUFOを迎撃したりかわしたりしつつ、ある小島に着陸すればいよいよ宝は近いのですが、おそらくここが最難関です。
ハンググライダー動かせる〜あ!(鳥にぶつかってゲームオーバー)
何やってんだよ(笑)。
次俺やる〜(発射ボタンを連打しながら)。
え? 銃撃てたの?
急展開に盛り上がる子どもたち。弾が画面から消えるまで次の弾は撃てないという、今どきのゲームにはないシビアな設定に大苦戦です。
難しい……けど面白いかも!
くっそムズい。でもUFO見てみたい。
もう疲れた……このゲーム作った人、クレイジーすぎる。
やられるたびに交代しては再挑戦する子どもたちでしたが、「たけ挑」最大の壁はあまりにも厚く、目的地まで3分の1程度進むのが限界。見ているうちにやりたくなってきた大人たちも挑戦しましたが、UFOが出てくる場面までたどり着くのがやっとでした。子どもたちが習い事に行く時刻が近づいてきたこともあり、挑戦はここでストップ。やっぱりたけしからの挑戦は手強かった……。
今の子どもに「たけ挑」はどう映ったか
さて、今日は昭和の時代のものすごいゲームをやってもらったわけだけど、どうだった?
クソゲー。
疲れた。
Nintendo Switchが欲しい。
君たち容赦ないな! 正直でいい子に育ったよ!
みんなで考えながら遊ぶのは楽しかったよ。
でも、カラオケとか地図を水につけるとか謎解きが意味わかんなすぎてもうだめだと思った。
うん、昭和の子どもと同じ感想だね。ところでこのゲーム、今度スマホのアプリになるんだけど、出たらもう一度挑戦してみたいと思う?
うーん……あ、でも、ハンググライダーは面白かった!
クリアできなかったのがくやしいから、そこはまたやりたいかも!
食いついてくれてよかった……。あ、そうだ、ビートたけしが映画監督なのは知ってたんだよね。そんな有名人が昔作ったゲームだって聞いてどう思った?
もっと面白いゲーム作るはずだと思った。
剛速球すぎてぐうの音も出ない。
「伝説のクソゲー」と呼ばれたゲームを今の子どもに遊んでもらった結果、似たような感想が時空を超えてこぼれ出てしまいました。しかし、意味不明でよく分からないなりに、子どもたちが試行錯誤してクリアを目指す姿は印象的でしたし、この尖ったゲームの光る部分に気付いてもらえたのは何よりのことでした。
そんな「たけしの挑戦状」ですが、Android版・iOS版は8月15日より840円で配信開始。スマートフォンの画面比率に合わせて画面がワイド化されているほか、新成田国際空港から旅立つことができる「新たなエリア」など、アプリ版オリジナルの新要素も追加されているとのことです。
「クソゲー」とする評価だけ聞いて判断せずに、一度自分の目で向き合ってみてはいかがでしょうか。筆者は久々にプレイしてみて、謎解きのツボさえ押さえていれば楽しめると思ったのですが、声を大にして言えるほどの自信はないです。
タイトークラシックス公式サイト
ダウンロードページ
スマートフォン版「たけしの挑戦状」ダウンロードはこちらから
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