初めて「全米が泣いた」映画が登場したのはいつ? → 本気で調査してみたら、俺が泣きそうになった(1/2 ページ)
全米がッ! 泣くまでッ! 調査が終わらないッ(涙目)!
ハリウッド映画の代表的なキャッチコピー「全米が泣いた」。数多くの作品で使用されている定番のフレーズとして知られており、ここから派生した「全俺が泣いた」などのネットスラングも誕生しています。
ところで、誰もが何度も耳にしているこのコピー、いったいいつから存在するのでしょうか。初めて全米を泣かせた映画を突き止めるべく、体当たりで調査してみました。
映画業界にも分からない「全米が泣いた」の元祖
調査にあたって気になったのは、そもそも「全米が泣いた」映画の元祖を知っている人物は存在しないのかという疑問です。
というのも、ネット上では「全米が泣いた」作品として「タイタニック」「ミリオンダラー・ベイビー」「アルマゲドン」「ロング・ウェイ・ホーム」などが紹介。Google検索の「関連する検索キーワード」に「全米 泣きすぎ」が入っていることに、納得してしまうほどの作品数が掲げられています。日本人は、日本人が泣いた映画よりもアメリカ人が泣いた映画に詳しいのではないかと思わざるを得ないくらい、キャッチコピーとして浸透しているのです。
しかし、このコピーを使用した最初の作品は何なのかという問題になると、話は別。「とにかく有名で、昔からよく使われている」くらいのぼんやりした情報ばかりで、詳細については分かりません。
さらに大手映画配給会社、映画関連の出版社、映画パンフレット販売店にも取材してみましたが、いずれも「分からない」との回答でした。実は、映画業界で働いている人たちにさえ分からない難問だったようです。
日本人が思っているよりも、全米は泣かない
他人に頼れないとなると、自分で探すほかありません。まず足を運んだのは、日本有数の古書店街を持つ神保町。映画ポスター、チラシなどを取り扱う店舗も存在しており、それらの商品をひたすらチェックしていけば「全米が泣いた」映画が見つかるに違いありません。だって、日本では知らぬ者のない超有名なコピーなのですから。
やたらと体力を消耗する調査方法ではありますが、該当作品がたくさん出てきたら、後は公開年順に並べるだけで元祖に近い映画が導き出せるはず……と皮算用も捗ります。
午後の業務時間をまるまる使って、数百枚の映画チラシを確認してみたところ、案の定「全米が泣いた」にかなり近いコピーを使用したものが見つかりました。
- 「全米が涙した、無垢で純粋な愛の感動作」(アイ・アム・サム/2001年公開)
- 「全米を笑いと涙で沸かせて大ヒット!」(エディー 勝利の天使/1996年公開)
……ただし、出てきたのはこの2作品だけ。正確な数値は分かりませんが、発見率はどう考えても1%を下回っています。
よく考えてみれば、映画にはアクション、SF、コメディー、ミュージカル、ホラーなどさまざまなジャンルがあり、感動的な作品ばかりではありません。ましてや、多くの人を涙させるような良作なんて、そうそう現れません。「全米がそんな簡単に泣くわけがない」という当たり前すぎる現実に直面してしまいました。
頭の中で「全米が泣いた、全米が泣いた……」とスケールの大きなフレーズを繰り返しながらチラシに目を通しているうちに、洋画作品であれば「あなた疲れてるのよ」と言われてしまいそうな不思議な精神状態に。たまたま見つけた「釣りバカ日誌8」のチラシに「今や、日本国民の10人に1人が観ている」と書かれているのを見て、なぜか吹き出してしまったことをご報告しておきます。「なんで釣りバカは、そんなに謙虚なんだよ!」って思っちゃったんですよ……。
![よくある映画コピー「全米が泣いた」、最初の作品は?](https://image.itmedia.co.jp/nl/articles/1709/20/mach_170919zenbei08.jpg)
映画雑誌「キネマ旬報」の広告を第1号から約15年分調べてみた
このまま先ほどの調査を続けて1万枚ほどアタックすれば、「全米が泣いた」映画の元祖が運良く発見できるかもしれません。しかし、その前に心がボキボキに折れてしまう可能性が高いため、やり方を変えることに。
次の調査場所は、「東京国立近代美術館フィルムセンター」(東京都中央区)。館内の図書館には老舗映画雑誌「キネマ旬報」のバックナンバーが置かれており、同誌の広告を1950年刊行の第1号から順に調べていけば、いつかきっと「全米が泣いた」映画の起源が分かるはずです。残念なことに、またもや運と体力に頼りきった作戦。
※キネマ旬報の歴史は太平洋戦争の影響で少しややこしい。同誌Webサイトによれば、1919年に創刊されたものの、戦時統制により1940年に終刊。しかし、1946年に「再建号」、その数年後に「復刊号」が登場したという。筆者が調べたのは、後者の「復刊第1号」以降
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