クトゥルフ神社? ジブリ? 群馬の神社にあった謎のオブジェ話題に 製作者は思わぬ反響に「率直にうれしい」
Twitterに投稿された神社のオブジェ。新たな神様? ミステリーかと思いきや……。
「ジブリみたい」「どう見てもクトゥルフ神話」「妖怪?」「なんか怖い」
Twitterで「今日行った神社の謎のオブジェが気になった」と投稿された写真が関心を集めています。神社のあちこちに灰色のオブジェが置かれたりつるされたりしている様子を撮影したもの。モチーフは生き物のようですが謎。妖怪や宇宙人のような造形で、木々に囲まれた境内にたたずむ姿は不気味であり神秘的でもあります。
場所は群馬・中之条町にある親都神社。投稿したのは一般ユーザーで、ツイートだけでは誰が何のためにオブジェを設置したのか不明……神主が作ったのか? 何か新手のご神体? ミステリーの気配に好奇心を抱いた人は多く、写真は2万5000回以上リツイートされました。
オブジェにどんな印象を受けたかも人それぞれ。「『もののけ姫』のコダマっぽい」「『ハウルの動く城』に出てきそう」とスタジオジブリ作品の精霊を思い出す人もいる一方、タコ足を持つオブジェから「どう見てもクトゥルフ神話」「SAN値チェックしないと」とクトゥルフを連想する人も。「間違いなくSCP」「諸星大二郎の世界」「神主の闇を感じる」とさまざまな声があがっています。
「謎のオブジェの作者でございます」と話題のツイートに名乗り出た人が。茨城・茨城町を拠点に活動するアーティスト・浅野暢晴さん(@asanonobuharu)です。
実はこのオブジェ、中之条町一帯にさまざまなアートを展開するイベント「中之条ビエンナーレ」(9月9日~10月9日)の一環で、浅野さんが手掛けた作品でした。神主の闇じゃなかった!
浅野さんに取材したところ、神社の展示の題名は「無何有の祭り」(素材:陶)。無何有(むかう)、つまりこの世の向こう側の祭りを表現した作品です。生き物のようなオブジェ群は「トリックスター」(※神話などで破壊と創造2つをもたらす道化師のような存在)と呼んでおり、約2年かけて作りためたこれらを境内に設置することで、人間と神様の間に立つトリックスターが祭りを行う姿を現しました。
これが偶然にも「アート作品」という色眼鏡を外して「神社で見つけた謎のオブジェ」としてツイートされた結果、さまざまな見方が現れ大きく拡散されたという、ユニークな展開に。浅野さんは反響について「怖いという人も、かわいいという人も、◯◯みたいという人もさまざまですが、僕の作品に何かしら引っ掛かりを持ってくれるんだ! ということが本当にうれしかったです」と率直な喜びをあらわにしています。
「『謎のオブジェ』として始まったのが、逆に良かったのかもしれません。『これはアートです』『美術作品です』と言われると『アートは分からん』で終わってしまうところを、『これはなんだ?』と思い込みなく入ることで、僕の作品にいろいろな思いをぶつけてもらえたんじゃないかと思います。それを受ける側としてもとても楽しかったです」
トリックスターに対しネットではジブリやクトゥルフ神話などさまざまな例えが出ていました。モチーフなどはあったのでしょうか。
「ジブリについては、特に『もののけ姫』や『天空の城ラピュタ』は好きなので少なからず影響を受けていますが、クトゥルフ神話やよく名前の上がった『SCP』とかいう言葉は初めて聞いたので、勉強になるなぁと感心しました」
「親都神社が本当に素晴らしい場所で、神社から力を借りることで自分の作品がより深いところまで表現できていると考えています。境内のあちこちに設置してあるので、宝探しのように自由に楽しんでもらえたらと思います」
ネットの少ない情報と写真により、かえって多くの反応を集めることになったオブジェたち――アートの力、ネットという場の特殊性をあらためて知らされる一件でした。作品は「中之条ビエンナーレ」開催期間の10月9日までは展示される予定です。
(黒木貴啓)
「無何有の祭り」写真(撮影:KenOkada)
浅野暢晴プロフィール
1979年生まれ。茨城大学卒。筑波大学修了。茨城県茨城町を拠点に活動中。
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