絶対売れちゃう → 全く売れません?! バンダイの“ゾンビ型消しゴム”担当者が語る「驚異の話題にならなさ」(1/3 ページ)

2018年1月20日に発売された男児向け商品「ぶっさしーず」。担当者が自信満々で送り出すも苦戦中。

» 2018年03月10日 11時00分 公開
[高橋史彦, 福田瑠千代ねとらぼ]

 あなたはゾンビを題材にした消しゴムフィギュア「ぶっさしーず」を知っているだろうか? 大丈夫、筆者もつい先日まで知らなかった。


ぶっさしーず

 商品担当者からある日、突然こんなメールが届いた。「大人も子どもも楽しめる商品ができました。超自信作です。でも話題になりません! 助けてください!」。聞けば、アニメも漫画もない、後ろ盾ゼロの完全なオリジナルコンテンツなのだという。なぜ売れていないのか。まだ売れる見込みはあるのか。売れないと、担当者はどうなってしまうのか。


 コア・ターゲットは小学生男子。スマホの普及率がまだ低く、SNSでの情報拡散もあまり行われない世代だ。仕掛ける側からすると暗中模索を強いられ、嗅覚が試される市場でもある。移り変わりの激しいターゲットの関心を先回りし、最新ゲームにも対抗できる魅力的なおもちゃでなければ成功は望めない。「ぶっさしーず」の明日はどっちなのか。発売元のバンダイで、企画担当のブ・サシコさんに話を聞いてきた。


発売前日まで「大ヒットする!」と思っていた

――何やら売り上げが芳しくないおもちゃがあると聞いてやってきました。

ブ・サシコ:こちらです。「ぶっさしーず」! 1個350円で、一見するとただのフィギュアですが、いろいろ遊べます。

――「ぶっさしーず」。

ブ・サシコ:ゾンビ型の消しゴムで、頭に鉛筆がぶっ刺せるので「ぶっさしーず」です。見てください、ちゃんと脳みそまで丁寧に造形し、貫通するこのギミック。首の入れ替えもできるようになっていて、好きな組み合わせができる。デザインは古き良き昭和テイストをベースに、マッドなアレンジを加え、ワクワクするような派手なカラーリングにしました。おまけ足裏には臓物スタンプまでついています。楽しい。でも、全然話題にならないんです

ぶっさしーず

――売れてないんですか。

ブ・サシコ:もっと売りたいんです。

――1月20日発売ですし、まだ出たばかりじゃないですか(※取材日は2月中旬)

ブ・サシコ:そう思いますよね? でも初動が良くないと急に黄色信号が点滅します。なりふり構っていられません。

――生々しい話になる前に、そもそもどうして消しゴムのおもちゃを出そうと思ったんですか。

ブ・サシコ:もともと世界で売れるフィギュアを作りたいと思って立ち上げた企画でした。アメリカ出張の際に、大ヒットしているというコレクションフィギュアに日本的なテイストを感じたんです。ということは、日本人が作ったコレクションフィギュアは売れるんじゃないか? と思いつきまして。で、「世界で売れるフィギュアが作りたいです」と提案したら「まずは日本で頑張ろう」となって、発売にいたりました。

――「ぶっさしーず」の前はどんな商品を手掛けていたんですか?

ブ・サシコ:Minecraftの「マイケシ」というシリーズで、これがとにかく売れました。その前は、ふなっしーのコレクションカード「ふなっしーのめいっしー」というシリーズで、こちらもおかげさまで売れました。「ぶっさしーず」も売れるだろうと、自信満々だったんですけど……。

営業担当:初週だけでいうとその○分の一くらいでしたね。

ブ・サシコ:……。


ぶっさしーず これまでは活躍していたブ・サシコさん

――プロモーションはしていたんですよね。

ブ・サシコ:はい。ターゲットを小学校低学年から中学年の男の子に絞った上で、『コロコロコミック』で情報発信し、「次世代ワールドホビーフェア」に遊びに来てくれた子たちに配布したりしました。

――その段階では手応えはあったと。

ブ・サシコ:はい、すごくありました。次世代ワールドホビーフェアで見た子どもたちの反応がすごく良かったんですよ。脳みそが気持ち悪がられるかもと思いましたが、ぱっと見て買ってくれる子がたくさんいて。蛍光色を多様したカラーリングが良かったんでしょうね。バラバラにできるパズル要素も好評でしたし。目の前で「URYYY」と鉛筆を刺している様子も、とても楽しそうでした。

――事前予測では今頃もうヒット商品になっているはずだったんですか。

ブ・サシコ:イベントでは完売しましたし、手応え十分でした。私の脳内イメージでは、発売後に自然とバズる予定だったんです。文房具と融合したヒット商品といえば、過去には「エスパークス」や「かみつきばあちゃん」などがあるので、「これ懐かしくない?」と自然にNAVERまとめができたり、SNSで注目を集めるだろうと。ところが全然……驚異的に話題にならなくて

――「エスパークス」はギリわかりますが、「かみつきばあちゃん」は初めて知りました。

ブ・サシコ:大人の反応はSNSから察せますが、小学生はその辺がサイレントで読み取れない。だから発売前から想像して、「今頃『コロコロ』を読んで、すごい欲しがっている」とか思っていたんですよ。イベントでも好評だったし、「これは売れちゃうな」と。で、発売日に売り場を見に行ったら思ったような売れ行きではなく……

 その後も起爆剤になるような出来事もなく、どんどん露出も減る一方で。いっそゾンビのイベントにでも出て宣伝してこようと思ったんですけど、ハロウィーンにしかゾンビのイベントがない! どんだけ先なんだよと。

ぶっさしーず 種類が豊富

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