5分で分かる! 「モナ・リザ」はどこがすごいのか?

芸大生が解説します。

» 2018年04月04日 11時00分 公開
[QuizKnockねとらぼ]

 今回は"世界一有名な美女"ともいわれるあの人について。

 そう、みなさんご存じモナ・リザさんです。たとえ美術に興味がなくとも、誰もが見たことがあることでしょう。世界一有名な絵画と言っても過言ではないかもしれません。

 この<モナ・リザ>が飾られたルーヴル美術館の展示室には、世界中からこの絵を求めて多くの観光客が人だかりを作りました。また、1974年に日本にこの絵がやってきた時には、展示された国立西洋美術館の来館者数が150万人を記録するなど大盛況となりました。

 <モナ・リザ>は人々をひきつけてやまない、まさに名画中の名画なのです。

 ですがこのモナ・リザ、結局何がそんなにすごいのでしょうか。傑作だといわれても、どこがどう傑作なのか、いまいちピンと来ないような気さえします。

 今回はそんな「モナ・リザのどこがすごいのか」「なぜみんなモナ・リザを褒め称えるのか」を、3つのポイントに分けてご紹介したいと思います。


モナ・リザとは?

 最初にこの絵について基本的なことを見てみましょう。

 <モナ・リザ>はルネサンス期のイタリアの画家レオナルド・ダ・ヴィンチによって、1503年頃から数年の歳月をかけて描かれた人物画です。縦77cm×横53cmと小さい木の板に油彩で描かれています。

 タイトルの<モナ・リザ>はダ・ヴィンチ本人によって名付けられたものでなく、後世に便宜的に名付けられたもの。<モナ・リザ>の”モナ”とはイタリア語で「婦人」(原語では"Monna")という意味があります。フランスやイタリアでは、描かれているとされる人物の旦那の名字をとって<ラ・ジョコンダ>(ジョコンダ婦人)と呼ばれるのが一般的です。

 ではなぜこの1人の人物を描いた作品がこんなにもすごいといわれるのでしょうか。


1.技術がすごい!

 まず第一に類まれなる作品の完成度にそのすごさがあるといえます。

 ダ・ヴィンチは<モナ・リザ>を描く際、スフマートという技法を用いました。スフマートとはイタリア語で「ぼかした」「煙がかった」などという意味のある言葉で、輪郭をぼかして物体を色の境界が分からないように柔らかく描く技術です。

 ダ・ヴィンチはこのスフマート技法に非常に長け、筆をどう動かしたか跡すら残らないような緻密な重ね塗りによって<モナ・リザ>の顔に神秘的な表情を与えました。

 顔に注目してみると、目のくぼみや口元が、ぼやけた黒い陰影によって表されていることが分かります。

 <モナ・リザ>の持つ本質的な魅力はダ・ヴィンチの持つ卓越した技術によるものなのです。


2.謎が深い!

 ダン・ブラウンによる小説『ダ・ヴィンチ・コード』がかつて話題になったように、<モナ・リザ>が人々をひきつけるのには、そこに潜む“謎”も関係しています。

 最も大きな謎は、「描かれている女性は誰なのか」というものです。

 <モナ・リザ>と呼ばれる理由となったリザ・ジェラルディーニ(ジョコンダ夫人)のほかにも、ダ・ヴィンチのパトロンであった「ジュリアーノ・デ・メディチの愛人説」、マントヴァ公妃の「イザベラ・デステ説」、はたまた「レオナルド自身説」など、<モナ・リザ>のモデルには数多くの説が存在しています。

 最新の研究では、リザ・ジェラルディーニが最も有力だと考えられていますが、モデルの謎以外にも「背景はどこなのか」「下地には何が描かれているのか」といった疑問など、われわれを悩ませる疑問や謎は多く残っているのです。


3.評価されている!

 「すごいといわれるものはすごく見える」というのはどの分野でもいえることです。もしかしたら同じことが、この<モナ・リザ>でもいえるかもしれません。

 16世紀のルネサンスを代表する画家・建築家に、ジョルジョ・ヴァザーリという人物がいます。ヴァザーリは美術史家のはしりともいわれる人物で、当時の有名な芸術家の伝記をまとめた著書『芸術家列伝』の中で、レオナルド・ダ・ヴィンチをルネサンス最大の画家とし、<モナ・リザ>を最高傑作だと評価しているのです。

 ヴァザーリの著作は美術史を語る上で今日でも欠かせないものであり、彼のダ・ヴィンチに対する評価が現在に影響を与えていることは間違いありません。

 また、19世紀のイギリスの作家ウォルター・ペイターが著作『ルネサンス』の中で<モナ・リザ>をべた褒めし、その『ルネサンス』を「黄金の書」だとオスカー・ワイルドが絶賛したことから<モナ・リザ>がダ・ヴィンチの代表作として認知され、今のイメージにつながったともいわれています。

ウォルター・ペイター(1839-1894)

 実のところ<モナ・リザ>がここまで有名になったのはここ100年くらいのことです。それ以前はダ・ヴィンチといえば<最後の晩餐>の方が有名でした。

 絵に関する多くの逸話や魅力、それを伝えた著作家や批評家たちによって、<モナ・リザ>はここまで有名な絵画になったのだともいえるのです。




 <モナ・リザ>がすごいと言われ、褒めたたえられる理由は、もちろん絵の完成度や技術もありますが、絵にまつわる謎やそれに魅了された人々、絵を評価し後世に伝えた先人の物語があるからなんですね。

参考文献

西岡文彦(2013)『モナ・リザはなぜ名画なのか? 』ちくま文庫

Why Is the ‘Mona Lisa’ So Famous? - YouTube


制作協力

QuizKnock


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2405/07/news109.jpg 「ロッチ」中岡、顔にたっぷり肉を蓄えた激変ショットに驚きの声 「これ…ヤバいって」「すごい変身っぷり」
  2. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  3. /nl/articles/2405/06/news040.jpg 「東京チカラめし」約2年ぶりに東京で“復活” まさかの出店場所に驚き「脳がフリーズしそうに」
  4. /nl/articles/2405/03/news025.jpg 「今までなんで使わなかったのか」 ワークマンの「アルミ帽子」が暑さ対策に最強だった 「めっちゃ涼しー」
  5. /nl/articles/1611/04/news117.jpg 「ヒルナンデス!」で道を教えてくれた男性が「丁(てい)字路」と発言 出演者が笑う一幕にネットで批判続出
  6. /nl/articles/2405/07/news114.jpg 大谷翔平がエスコート 真美子さん「ドジャース奥様会」に再び登場で頭ひとつ抜き出る
  7. /nl/articles/2405/08/news030.jpg 「新紙幣出てきたんだけど」 レジで“千円札”見た若者がポツリ→まさかの正体にショック広がる 「そうだよねえぇ」
  8. /nl/articles/2405/07/news043.jpg 16歳お姉ちゃんと0歳弟、赤ちゃんが泣くとすぐに抱っこして…… 愛をそそぐ姿に「愛しさ溢れてて号泣」「いいね1万回押したい」
  9. /nl/articles/2405/05/news018.jpg 地元民向け“バリカタ仕様”の袋麺だと思ったら……思わぬ落とし穴に「トラップ仕掛けられてる」「自分も引っかかった」
  10. /nl/articles/2405/06/news001.jpg 川をせき止めるほどのゴミ→ボランティアがを徹底的に掃除したら…… 見違える変化に驚き
先週の総合アクセスTOP10
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評