「お化け屋敷は怖いから嫌い」という人を、お化け屋敷プロデューサーは説得できるのか?
お化け屋敷を克服する方法は「自分より怖がりな人と入る」こと。
お化け屋敷は好きですか? 怖いもの見たさで入る人もいれば、「そもそも苦手だから入りたくもない」という人も多いかもしれません。そんなわたしは、北海道から沖縄までお化け屋敷のために旅行をしてしまうくらいのお化け屋敷好き。少数派だということは理解しつつも、もっと多くの人にお化け屋敷の魅力を知ってほしいと思いながら、お化け屋敷のブログを書いたり、記事を書いたりしています。
今回は、お化け屋敷の本番、夏に向けてテンションが上がっているこの時期に、ねとらぼ編集部のたろちんから「お化け屋敷の楽しさが少しもわからない、ただ怖いだけ、入りたくない」という話をされたので、全力でおすすめするために、場をセッティングすることにしました。
そして、強力な助っ人として、お化け屋敷界の第一人者であり、お化け屋敷プロデューサーの五味弘文さんにもご協力いただいくことに。五味さんは、お化け屋敷好きの中では知らない人がいないくらい有名で、映画界でいうとスピルバーグみたいな感じです。
「ワーッ!」と驚かすのがお化け屋敷の魅力ではない
大原:本日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。
たろちん:はい……。先に言っておきますが、何を言われても入りたくなることはないと思います……。
大原:そんなこと言わずに……。今日は五味さんも来て下さっているので、いろんな視点でお化け屋敷の魅力を語らせていただこうと思います! 五味さん、よろしくお願いいたします。
五味:よろしくお願いいたします。
大原:まず、たろちんさんは、お化け屋敷の何が苦手なんでしょうか?
たろちん:何って……ワッとか、プシューッとか、急に驚かされるのが苦手なんです。わざわざ怖い思いをする必要、あります?
大原:なるほど。ちなみに、わたしはお化け屋敷は全然怖くなくて、とにかくお化け屋敷の中の装飾をひとつひとつ見るのが好きなんです。
たろちん:狂気だ……。
大原:なんでこの場所にこの小物があるんだろうとか、この人はどんな死因だったんだろうとか、そういうところにすごい萌えます。お化け屋敷って芸術なんですよ!
たろちん:絶対わかり合えない……。
大原:でも、ワッとか、プシューッとか、急に驚かされるのは、普通に驚きます。
たろちん:あれ、そうなんだ。
大原:はい。あれは防衛本能みたいなものだと思います。たろちんさんは、ジェットコースターは好きですか?
たろちん:あ、ジェットコースターは好きです。
大原:でも、あれも、「怖い」という意味では一緒じゃないですか。お化け屋敷同様、苦手な人も多いですし。これはどういうことなんでしょうか?
五味:ジェットコースターとお化け屋敷が決定的に違うのは、肉体的な恐怖と、精神的な恐怖ですね。ジェットコースターは、振り回されたり、重力がかかったりして、肉体的に恐怖を感じる。それに対して、お化け屋敷は想像力が働いて、肉体的な危険はないのに得体のしれない恐怖を感じるんです。
たろちん:なるほど。
五味:僕の考えだと、想像力を制御できない人が怖がりなんだと思うんですよ。大原さんみたいに想像力を制御できる人がたまにいて、そういう人は大丈夫なんだと思います。
大原:確かに、わたしは意図して想像力を制御しているわけではないですが、お化け屋敷の装飾を冷静に見ることによって、恐怖への想像力はあまり働いていない気がします。
たろちん:それ僕には絶対無理な方法では……。
五味:大原さんはちょっと特殊ですが(笑)、恐怖心はあっていいんですよ。人は「怖いぞ」「見ちゃダメだぞ」と言われると怖がりつつも見てみたいという好奇心が生まれたりします。つまり、好奇心が恐怖心よりちょっとだけ強い人が最終的にお化け屋敷に入るんです。
「自分より怖がりな人」とお化け屋敷に入るのがオススメ
たろちん:なるほど。僕が、お化け屋敷が苦手な理由はわかったような気がするんですが、それが分かったところで、やっぱり入りたくならないですね……。
大原:うーん。たろちんさんは、お化け屋敷に入るときは、いつもどんな感じですか?
たろちん:たまに友達とかに誘われて嫌々入って、中で「無理!」とか「やめて!」とか大騒ぎして、死に物狂いで出てきてヘロヘロになる感じです。
五味:なるほど。たろちんさんはお化けを信じてますか?
たろちん:いや、全然信じてないです。
五味:僕も本物のお化けを見たことはないですし、もしいるとしたらすごく怖いと思ってますよ。
たろちん:えっ、そうなんですか。
五味:お化け屋敷の中って、怖い怖い怖い、って思っていても、「あれ、これフィクションだよね?」ってなる瞬間があるんです。それで、なんでフィクションなのに自分はこんなに怖がっているんだろうと、客観的に見て滑稽に思えることがある。でもまたすぐに驚かされて、怖い怖い怖い、となって揺さぶられて……僕は最後に出口から出てきたときにお客さんが笑っているのがいいお化け屋敷だと思っているんですよ。
たろちん:なるほど。そういえば確かに中にいるときは死ぬほど怖いんですけど、出たあとってなんか笑っちゃってることが多い気がしますね。あれ?
大原:それですよ! お化け屋敷って、素の部分が見えるので一緒に入るとその人とすごく仲良くなれる気がしていて、わたしは特に怖がりな人と入るのが好きなんです。というのも、自分はお化け屋敷で恐怖を感じることはないんですが、一緒に入る人がめちゃくちゃびびっていたらめちゃくちゃ面白いし、めちゃくちゃ笑える。
たろちん:悪趣味……。
五味:お化け屋敷に自分より怖がりな人と入るっていうのは、ひとつの方法かもしれませんね。自分じゃない分より客観的に見やすいですし。
たろちん:ああ、確かに自分よりビビってる人がいると冷静になれるときはありますね。
大原:男性って「怖がるとダサい」みたいに思う人が多いんですけど、変に強がってもお化け屋敷って楽しめないので本能のまま怖がってほしいです。めちゃくちゃ面白いから。
たろちん:だから、悪趣味……。でも、そうか。怖がっていいんですね。
大原:うん、どんどん怖がってほしいです。お化け屋敷って怖がるところだから、別に怖がっていてもダサいと思わないです。むしろ、すごく怖がる人が一人いると、終わった後に、それを肴に楽しめますし!
たろちん:つまりお化け屋敷の中では僕みたいなビビリのお客さんがエンターテイナーになってるってこと? そう言われると悪い気はしないな……。
五味:昔の話ですが、僕が作ったお化け屋敷から出てくる人が笑っていたのを見たときに「このお化け屋敷は失敗だ」と思ったんです。泣き叫んで出てくる、その後にトイレもいけないくらいのものじゃないと失敗だと。でも、とことん追い詰めて、怖い以外なにもない状況を作ろうと思えば作れるんですが、それはエンターテインメントじゃないんですよね。怖がらせるより楽しませたい。だからいまの、出口で笑うくらいのものが正解なんだなって。
たろちん:まさにその「死ぬほど怖がらせてきてトラウマを植え付けられる場所」みたいに思ってました。そうか、お化け屋敷ってエンターテインメントなんですね。
五味:はい、そうです。ジェットコースターと同じで命の危険がないから楽しめるんですよ。
たろちん:確かに「このお化け屋敷は本物が出ます」って言われたら何があっても入らないな……。
新たな感覚を刺激される「靴を脱いで入るお化け屋敷」
大原:さっきの話に戻りますが、お化け屋敷って人とすごく仲良くなれるツールとして本当に優秀で。五味さんの新しいお化け屋敷で「怨霊座敷」っていうのがあるんですが……。
たろちん:ここでPRをぶっこんできた……。
大原:(笑)。これ、オープン日が、4月20日でゴールデンウィーク前なんですよね。この4月に新生活や新学期が始まった人も多いと思いますが、ちょうど新たに出会った人たちと「ゴールデンウィーク、どっか行こっか?」みたいになる人も多いと思うんです。でも、まだ会ってから1カ月もたっていないと、まだまだ距離感がある。そんな時に、お化け屋敷に行くと、一気に仲良くなれる気がします。
たろちん:確かに良い時期ではありますね……。
大原:そうなんです。それで、ここからは、本当にわたしの趣味の話になってしまって恐縮なんですが、いま絶賛施工中のこの「怨霊座敷」についてもいろいろ聞いていいですか?
五味:はい、もちろんです。
大原:ちょっと聞いたのが、今回は靴を脱いで入るお化け屋敷で、これって2010年に五味さんが作られた「足刈りの家」を彷彿(ほうふつ)とさせるのですが、あれもわたしめちゃくちゃいいお化け屋敷だったなと思っていて。靴って、普段はそんなに意識しないのですが、すごく守られている感覚があるんだなと、あれで初めて気が付いたんです。
たろちん:大原さんが五味さんガチ勢すぎる。
五味:そうですね。お化け屋敷って、視覚聴覚以外はなかなか使いづらいんですよね。何かに触らせるっていうのは、やっぱり難しい。でも、靴を脱ぐだけで、もうひとつの感覚である、触覚を使った恐怖を生むことができるんです。
大原:床を踏みしめられなくなるとか、何か変なものを踏んでしまうんじゃないかとか、そういう気持ちの揺れ動きが、すごい自分のなかで新しかったです。
五味:今回はチームラボさんと協力した映像を使った演出も特徴です。あと、東京ドームシティには海外からのお客さんも多いので、靴を脱いでアトラクションを楽しむというのは、そうした人たちにも楽しんでもらえるんじゃないかなと。
大原:今回のこの「怨霊座敷」は、どういうストーリーになるんでしょうか?
五味:今回は、透き通るような白い肌をもつ夜雨子という女性の話です。夜雨子はあるきっかけから結婚式を前に婚約者に裏切られ、婚約者と浮気相手の女性に騙されて「蛾の鱗粉」入りの白粉を使い続けていくうちに、どんどん顔がただれはじめてしまいます。夜雨子はようやく自分が騙されていたことに気が付いたのですが、そのままその2人に殺されてしまって、家の床下に埋められてしまうんです。その男女はその後引っ越してしまうんですが、たまたま何年か後にその家を訪れることになり……というのが今回の「怨霊座敷」です。
大原:ということは、自分たちがその殺人者で、お化けの夜雨子に恨まれる……ということですよね。
たろちん:怖い。
大原:お化け屋敷って、一方的に怖がらせられるものが多かったのですが、五味さんのお化け屋敷ってとにかく能動的で、ストーリーに入り込ませられるんですよね。そこが魅力なんです。
たろちん:なるほど。さっきまでの僕なら、そんなことを聞いたら絶対に入りたくないですけど、確かにエンターテインメントとして考えると、観客を巻き込んでいくのは、すごくいい気がします。
五味:まだ作業中ですが、少し中を見て行きますか?
大原:やったー!
「怨霊座敷」の中に入ってみた
ということで、五味さんのご好意で絶賛施工中の「怨霊座敷」を、少し見せていただけることになりました。ネタバレになってしまうのであまり書くことはできませんが、一部屋だけ特別にご紹介いたします。
五味:ここは実質最初の部屋になるのですが、夜雨子のまだ婚約者を信じている悲哀を表現しています。
たろちん:ドアから入ってきて、こっちを見られているのはすごく怖いですね。
五味:僕のお化け屋敷は、こんな感じで「お出迎え」することが多いんですが、それは何度も言っているように、お化け屋敷はエンターテインメントだからですね。ご挨拶代わりです。
たろちん:嫌なご挨拶だな……。大原さんは装飾とかを見るのが好きって言っていましたが、例えばこの部屋だとどういう風に見るんですか?
大原:そうですね。まずは、この夜雨子さんの顔ですね。この下がり眉が物悲しいなとか、白粉が似合いそうな白肌だなとか。そのあとは、装飾を見ていくんですが、例えば、夜雨子さんは、結婚式を楽しみにしているんでしょうね。病床に伏せていても布団の近くに白無垢をおいて、それを励みにしているんです。あとは、なかなか治らない病気に対して、いろんな薬を飲んでいるからか、枕元にたくさんの薬瓶があります。他にも、初夏だからかな? 枕元にうちわも置いています。
たろちん:め、めちゃくちゃよく見ていますね……。狂気だ。
大原:あと、夜雨子さんは、多分自分のこのただれていく肌を我々が思っている以上に悲観しているんでしょう、鏡台にきっちりとカバーが掛けられています。
五味:あ、そうなんです。よく気が付きましたね。
たろちん:うーん、狂気であることは変わらないですが、そうやってひとつひとつじっくり見ていくのも、ひとつの楽しみなような気がしてきました。制作者と対話できているというか……。
大原:はい、めちゃくちゃ楽しいです!
たろちん:今度僕も、ゆっくり見てみよう……かな……。
この後も、一通り案内していただきましたが、今回の「怨霊座敷」は、いつもの五味さんのお化け屋敷以上に、能動的に行動しなくてはならない箇所がいくつかあるので、新生活や新学期が始まった人は特に、また、それ以外でも仲良くなりたい人がいる人には、ぴったりのエンターテインメントだと思います。
要素を少しだけこっそりお伝えすると「ただいま」「ぐるぐる」「高低差」「ふわふわ」という感じ。そんな「怨霊座敷」のオープンは、4月20日から。お化け屋敷が苦手で、長いあいだ入っていなかった人も、これをきっかけに一度飛び込んでみてもらえると、お化け屋敷が大好きなわたしは、とてもうれしいです!
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アイティメディア営業企画/制作:ねとらぼ編集部/掲載内容有効期限:2018年4月22日