最新巨大客船の裏側へ潜入! 氷川丸と「客船80年の進化」を見比べる(1/3 ページ)
どんだけすごいんだ。【写真スライドショー150枚】
伝統を重んじ、保守的に見える船乗りの世界といえど、80年もの月日が経てば相応の進化をもたらします。軍艦好きは結構多いはずですが、商用船にまで関心を持つ人は比較的少なく、「ふーん、客船ってどれも昔から同じでしょ」なんて声も聞こえてきたりもします。
しかし、商用船の世界もやはり進歩が著しく、特に客船ではこのところの新造船ラッシュによって、最新鋭の客船には皆さんの想像を超えるような「ぶっ飛びのメカ」を備えていたりします。
具体的に新旧の客船にはどんな違いがあるのでしょう。今回は、2016年に就役した最新型の大型客船「ゲンティン ドリーム」と、横浜港の特設桟橋に係留保存されている約80年前の客船「日本郵船 氷川丸(以下、氷川丸)」(関連記事)を比べながら、最新鋭の「操舵室システム」、軍用艦ならまだしも客船では珍しい「艦載潜水艇」、「最上級船室」などなど、普段は見られない巨大客船の”裏側”に迫り、そして現在と昔で「船旅の感じ方や楽しみ方にどんな違いがあるのか」を確かめてみましょう。
操舵室へ潜入:最新鋭の「統合操舵室システム」を備えた操舵室
客船、というか船の船橋(軍艦でいうところの艦橋)にある「操舵室」は、多くの方にとって「中央の羅針盤と舵輪を挟んで右舷側にある背の高い椅子に座る船長、そして航海長(一等航海士)や当直士官、操舵手、見張り員などが直立不動で立っている」という風景を思い浮かべるのではないでしょうか。以前、横浜港に係留保存されている客船「氷川丸」(関連記事)を紹介しましたが、そこでお見せした操舵室がまさにそのイメージにぴったりだと思います。
それに対して、2016年に登場した最新鋭大型客船「ゲンティン ドリーム」の操舵室は全く様子が違います。
羅針盤も大きな舵輪もなく、船長も航海士も当直士官も操舵手もみな座って操船するという、「古き良き時代のロマンにあふれる操舵室」とは全く異なる、まるでSF映画に出てくる宇宙船の管制室のような姿が現代客船の操舵室です。
この操舵室は「Integrated Bridge System(IBS:統合操舵室システム)」という最新鋭のレイアウトを採用しています。このIBS、そのお値段はべらぼうに高額なため、2018年現在も導入できる船はごく一部の大型商用船に限られています。今回紹介するゲンティン ドリームや、その姉妹船で香港航路に就役している「ワールド ドリーム」では、隣からガラス窓越しに操舵室を見学できる「Bridge Viewing Room」を設けており、またブリッジ見学ツアーも実施していることから、見る機会が限られるIBSを間近に接することができます。
客も乗れる本格的な潜水艇まで搭載:奇遇にも艦載潜水艇のエンジニアがいたので話を聞いてみた
氷川丸でも紹介したように、客船には船上で船客に目いっぱい楽しんでもらえるように、多彩なアトラクション設備を備えています。多彩なレストランやショーもその1つ。それこそ氷川丸の時代には時間をつぶすためのもので、できることも限られていましたが、現代の客船ではプールにウオータースライダー、アスレチック、ジップライン、トップロープクライミングと実に多彩な設備があります。
それらに加えてゲンティン ドリームには「艦載潜水艇」もあるのです。リゾートホテルや観光地で見かける「普通の船の船底に窓ガラスを張って、そこから海中が見えますよ」程度のレベルではありません。最大200メートルまで潜れる本格的な潜水艇です。
今回は偶然にも艦載潜水艇を整備中のメーカー「U-boat Worx」のエンジニアに会えたので、ちょっと話を聞いてみました。
── この潜水艇の名前とスペックは?
U-boat Worxのエンジニア 名前は「C-Explorer 5」。全長は5.1メートルで幅は2.99メートル。最大潜水深度は200メートル、最大船速3ノットで8時間の潜航が可能だ。
── でえええ、こんなに小さいのに200メートルも潜れるんですか?
エンジニア そうだ。でも操船は簡単だ。自動操船支援システムで深度や針路が自動制御で維持できる。その安定性は艇長と一緒に船客がコントローラーを使って操船できるほどだよ。
── それって危なくないですか?
エンジニア 母船からリモート操船もできるし、一定時間操作をしないと強制的に浮上、もしくは帰投させる最新の技術を導入しているから大丈夫だ。
── で、なんでオランダ本社のあなたがこんなところに?
エンジニア バッテリーが不調になったので整備に来た。2日間かけてやってきて5分作業して完了さ。また2日間かけて帰るよ。
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