画像「無断転載」の情報開示請求、慣れたら10分でできる 裁判で約90万円勝ち取った写真家インタビュー(4/4 ページ)
本人訴訟という選択肢
――岩崎さんは代理人を立てない「本人訴訟」も行われていますよね。
岩崎:請求を無視されたり、示談交渉が決裂した場合は、やむを得ず裁判を起こしています。これまで、本人訴訟が10回※で、代理人を立てたのは司法書士に依頼した件も含めて2回だけです。損害賠償を請求した裁判の相手はほとんどが偶然にも「まとめサイト」の運営者(企業)でした。
※内3回はプロバイダーに対する開示請求の訴訟や仮処分の申立。いずれも情報の開示に成功している。
――本人訴訟にするのか、それとも代理人を立てるのかという基準はどのように決めているのでしょうか?
岩崎:画像の使用点数と、人格権侵害(トリミング、氏名の削除等)の有無ですね。これを総合的に見て弁護士を立てるかどうか決めています。画像が1〜2点で、トリミングもなければ、裁判で勝っても数万円程度にしかならないことも考えられます。それだと確実に費用倒れしてしまいます。
でも人格権侵害があれば、最低でも通常の使用料相当の金額+慰謝料が上乗せされる見通しが立つので、費用倒れが防げる可能性が高い。とはいえ慰謝料の金額は名誉毀損やプライバシーの侵害に比べれば、そこまで高額な判決は出にくいようです。また、費用面以外の理由としては、難しい事案に弁護士を立てなかったことにより、権利者側に不利な判決が出てしまい、後の人に迷惑を掛けたくないという思いもありますね。
民事訴訟は刑事ドラマのようにはいかない
――本人訴訟の場合は、ご自身で裁判に出向いて発言されたりするわけですよね。
岩崎:その辺のイメージについて、皆さん結構勘違いされてる気がします。刑事ドラマとは全然違うんですよね。民事訴訟に関しては「異議あり!」みたいなのはほとんど無いです。裁判といっても、ほとんど書面でのやりとりになるんですよ。
今日も1件開示請求の裁判がありまして、5分ぐらいで終わりました。訴状を提出して、裁判所に出廷するじゃないですか。すると相手は答弁書を出してきますよね。答弁書もシンプルで、「否認する」とか「追って主張する」とか書かれたもので。裁判官に「書面の通り陳述しますか?」と聞かれて、お互いに「はい」と言ったら終わるんです。
――確かに、ドラマのイメージとは違いますね。ちなみに、最終的に和解する金額をすり合わせるにはどうするんですか? 書面だと難しそうですけれども。
岩崎:細かい金額や条件は法廷ではやりとりしづらいので、別室に移動して行うことが多いです。別室では裁判官と原告と被告で話し合いをして、「これで和解しましょう」となったらそこで終わりです。細かな和解調書は裁判所の方で作成してくれて、「いくら払う」「債権債務を放棄するとか」「訴訟費用は各自負担にする」「○月○日までに振り込む」みたいなフォーマットがある程度あるんです。
――判決まで持っていかずに、和解で決着をつける理由はあったりしますか?
岩崎:和解のほうが、判決よりも支払われる確率が高いとされているからです。和解はお互い納得して条件を決められるので、例えば「和解で30万円」と決まった場合、相手は支払う気持ちがあって決めた金額になります。ところが判決というのは一方的な話なので、「判決で30万円」となると相手には不満が残りますよね。
仮に相手が「やっぱり払わない」となったときに、裁判所からは何もしてくれません。強制執行をするにも相手の銀行口座を調べたりとか、どこの会社につとめていて、財産がどこにどれだけあるかとか調べるのは大変じゃないですか。その手間を考えたら和解のほうが負担が小さく、裁判も早く終わるというのが主な理由です。
まずは情報開示請求を
――裁判の時間を短縮できる少額訴訟も活用していると伺いました。
岩崎:少額訴訟の場合、裁判が原則1回で終わるのがメリットですが、それは諸刃の剣でもあります。逆にいうと1回で証拠を全部そろえなければならないんです。通常の裁判だと後から気付くことがあったり、反論されたときに「次はこういう風に主張しよう」と立て直しをはかったりもできます。そのため、最近は最初から通常訴訟をするようにしています。
――他に注意点などはありますか?
岩崎:少額訴訟は比較的手軽とはいえ、法律知識がないまま挑戦するのはおすすめしません。被告側の希望で通常訴訟に移行される場合もありますし、小さな金額でも相手が弁護士を立てて、争ってくる可能性もあります。簡易裁判所で争いが複雑になったり、決着が付かないと、地方裁判所に移送される可能性もありますから、もし本人訴訟だった場合には地方裁判所で一人で裁判を続けなければならなくなります。
後から弁護士を立てることもできますけど、不利な主張をした後だと「何で先に相談してくれなかったの」となりかねません。一番大切なことは、裁判を起こすなら、必ず一度は弁護士に相談しておくことです。私も本人訴訟を10回ほど経験しましたが、今でも裁判を起こすことがあれば、毎回事前に弁護士に相談しています。
いきなり裁判まで考えなくて良いので、それよりは簡易的に情報開示請求をする人が増えてほしいですね。そうすればサイトの利用者も運営者も意識が高まりますし、プロバイダー側にしてもルールを周知するとか、啓発的な動きをするようになるはずです。こうした動きは広まってほしいですね。
関連記事
- イラスト無断転載、まとめサイトに30万円の賠償命じる判決 「VIPPER速報」「ガールズVIPまとめ」など訴えた注目裁判が決着
裁判を起こすにあたってどこがポイントだったのかなど、ナカシマ723さんに詳細を聞きました。 - 「Twitterアイコンが丸くトリミングされるのは同一性保持権侵害」 アイコン無断使用を巡る裁判で
これはまた議論を呼びそう……。 - 「漫画村は違法か」判断の裁判、異例の判決延期に Cloudflareが判決数日前に答弁書
極めて異例の展開となりました。 - まるまる転載ダメ! NAVERまとめ「権利侵害」記事をインセンティブ対象外に
悪質なケースはアカウント停止も検討するとのこと。 - まるまる転載ダメ! NAVERまとめ「権利侵害」記事をインセンティブ対象外に
悪質なケースはアカウント停止も検討するとのこと。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「大物すぎ」「うそだろ」 活動中だった“美少女新人VTuber”の「衝撃的な正体」が判明 「想像の斜め上を行く正体」
-
川で拾った普通の石ころ→磨いたら……? まさかの“正体”にびっくり「間違いなく価値がある」「別の惑星を見ているよう」【米】
-
中村雅俊と五十嵐淳子の三女・里砂、2年間乗る“ピッカピカな愛車”との2ショを初公開 2023年には小型船舶免許1級を取得
-
大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
-
「壊れてんじゃね?」 ハードオフで買った110円のジャンク品→家で試したら…… “まさかの結果”に思わず仰天
-
猫だと思って保護→2年後…… すっかり“別の生き物”に成長した元ボス猫に「フォルムが本当に可愛い」「抱きしめたい」
-
なんと「身長差152センチ」 “世界一背が低い”30歳俳優&“世界一背が高い”27歳女性が奇跡の初対面<海外>
-
大谷翔平と真美子さん、「まさかの服装」に注目 愛犬デコピンも大谷家全員で“歩く広告塔”ぶり発揮か
-
「こんなことが出来るのか」ハードオフの中古電子辞書Linux化 → “阿部寛のホームページ”にアクセス その表示速度は……「電子辞書にLinuxはロマンある」
-
「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
- 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
- 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
- ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
- 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
- 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
- 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
- フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
- 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
- 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
- ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
- 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
- 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた