画像「無断転載」の情報開示請求、慣れたら10分でできる 裁判で約90万円勝ち取った写真家インタビュー(4/4 ページ)

» 2018年10月28日 14時00分 公開
[福田瑠千代ねとらぼ]
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本人訴訟という選択肢

――岩崎さんは代理人を立てない「本人訴訟」も行われていますよね。

岩崎:請求を無視されたり、示談交渉が決裂した場合は、やむを得ず裁判を起こしています。これまで、本人訴訟が10回※で、代理人を立てたのは司法書士に依頼した件も含めて2回だけです。損害賠償を請求した裁判の相手はほとんどが偶然にも「まとめサイト」の運営者(企業)でした。

※内3回はプロバイダーに対する開示請求の訴訟や仮処分の申立。いずれも情報の開示に成功している。

――本人訴訟にするのか、それとも代理人を立てるのかという基準はどのように決めているのでしょうか?

岩崎:画像の使用点数と、人格権侵害(トリミング、氏名の削除等)の有無ですね。これを総合的に見て弁護士を立てるかどうか決めています。画像が1〜2点で、トリミングもなければ、裁判で勝っても数万円程度にしかならないことも考えられます。それだと確実に費用倒れしてしまいます。

 でも人格権侵害があれば、最低でも通常の使用料相当の金額+慰謝料が上乗せされる見通しが立つので、費用倒れが防げる可能性が高い。とはいえ慰謝料の金額は名誉毀損やプライバシーの侵害に比べれば、そこまで高額な判決は出にくいようです。また、費用面以外の理由としては、難しい事案に弁護士を立てなかったことにより、権利者側に不利な判決が出てしまい、後の人に迷惑を掛けたくないという思いもありますね。

無断転載された場合の対処法 裁判用の資料ファイル。訴状や証拠書類が入っている

民事訴訟は刑事ドラマのようにはいかない

――本人訴訟の場合は、ご自身で裁判に出向いて発言されたりするわけですよね。

岩崎:その辺のイメージについて、皆さん結構勘違いされてる気がします。刑事ドラマとは全然違うんですよね。民事訴訟に関しては「異議あり!」みたいなのはほとんど無いです。裁判といっても、ほとんど書面でのやりとりになるんですよ。

 今日も1件開示請求の裁判がありまして、5分ぐらいで終わりました。訴状を提出して、裁判所に出廷するじゃないですか。すると相手は答弁書を出してきますよね。答弁書もシンプルで、「否認する」とか「追って主張する」とか書かれたもので。裁判官に「書面の通り陳述しますか?」と聞かれて、お互いに「はい」と言ったら終わるんです。

無断転載された場合の対処法 「異議あり!」みたいな場面はほとんどないとのこと 【追記】初出時「ニコニ・コモンズ」のフキダシ素材を盛り込んだ画像を掲載しておりましたが、著作権を扱う記事の性質上、二次創作的な参考画像は不適当でした。画像差し替えの上、この場を借りて謝罪させていただきます(編集部福田)

――確かに、ドラマのイメージとは違いますね。ちなみに、最終的に和解する金額をすり合わせるにはどうするんですか? 書面だと難しそうですけれども。

岩崎:細かい金額や条件は法廷ではやりとりしづらいので、別室に移動して行うことが多いです。別室では裁判官と原告と被告で話し合いをして、「これで和解しましょう」となったらそこで終わりです。細かな和解調書は裁判所の方で作成してくれて、「いくら払う」「債権債務を放棄するとか」「訴訟費用は各自負担にする」「○月○日までに振り込む」みたいなフォーマットがある程度あるんです。

――判決まで持っていかずに、和解で決着をつける理由はあったりしますか?

岩崎:和解のほうが、判決よりも支払われる確率が高いとされているからです。和解はお互い納得して条件を決められるので、例えば「和解で30万円」と決まった場合、相手は支払う気持ちがあって決めた金額になります。ところが判決というのは一方的な話なので、「判決で30万円」となると相手には不満が残りますよね。

 仮に相手が「やっぱり払わない」となったときに、裁判所からは何もしてくれません。強制執行をするにも相手の銀行口座を調べたりとか、どこの会社につとめていて、財産がどこにどれだけあるかとか調べるのは大変じゃないですか。その手間を考えたら和解のほうが負担が小さく、裁判も早く終わるというのが主な理由です。

まずは情報開示請求を

――裁判の時間を短縮できる少額訴訟も活用していると伺いました。

岩崎:少額訴訟の場合、裁判が原則1回で終わるのがメリットですが、それは諸刃の剣でもあります。逆にいうと1回で証拠を全部そろえなければならないんです。通常の裁判だと後から気付くことがあったり、反論されたときに「次はこういう風に主張しよう」と立て直しをはかったりもできます。そのため、最近は最初から通常訴訟をするようにしています。

――他に注意点などはありますか?

岩崎:少額訴訟は比較的手軽とはいえ、法律知識がないまま挑戦するのはおすすめしません。被告側の希望で通常訴訟に移行される場合もありますし、小さな金額でも相手が弁護士を立てて、争ってくる可能性もあります。簡易裁判所で争いが複雑になったり、決着が付かないと、地方裁判所に移送される可能性もありますから、もし本人訴訟だった場合には地方裁判所で一人で裁判を続けなければならなくなります。

 後から弁護士を立てることもできますけど、不利な主張をした後だと「何で先に相談してくれなかったの」となりかねません。一番大切なことは、裁判を起こすなら、必ず一度は弁護士に相談しておくことです。私も本人訴訟を10回ほど経験しましたが、今でも裁判を起こすことがあれば、毎回事前に弁護士に相談しています。

 いきなり裁判まで考えなくて良いので、それよりは簡易的に情報開示請求をする人が増えてほしいですね。そうすればサイトの利用者も運営者も意識が高まりますし、プロバイダー側にしてもルールを周知するとか、啓発的な動きをするようになるはずです。こうした動きは広まってほしいですね。

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