【木村祥朗×堀井直樹×なる×ZUN】「BLACK BIRD」爆誕祭 なぜゲーム開発者はシューティングを作りたがるのか、「原点にして究極」と語るその魅力(4/5 ページ)

» 2018年11月09日 19時00分 公開
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

「東方Project」はなぜここまでの人気を獲得できたのか

―― シューターの間では「弾幕」は是か非か、といった議論もしばしば起こります。このあたりはどう見ていますか?

ZUN:弾幕がなかったら、それこそシューティングはもう終わってますよね。

堀井:ゲーセンで「虫姫さま」のウルトラモード(※)が発見されたころは、普段シューティングを遊んでない人でも「ついに真ボスが倒されたらしいよ」って盛り上がったりしてたね。次はどれだけ難しいのが遊べるのかと期待していた時期はあった。

※ただでさえ難しい「虫姫さま」だが、隠しコマンドを入力することで、さらに難しい「ウルトラモード」が出現する。稼働開始当初は公表されていなかった


シューティング座談会 「虫姫さま」(ケイブ/2004年) ※公式サイトより

木村:でも弾幕シューティングの時代が来たときに「ああ、もう俺の能力だとこれはクリアできない」って振り落とされた気がした。画面に弾幕が広がってきたときに、「ああもう世界を見ている暇はないんだ、弾を見なきゃいけない」ってなったのがツラかった。

ZUN:本当のことを言うと、弾幕のほうが難易度は低いんです。難しく見えるだけで。

堀井:360度全方位に弾が撃たれていても、自分に関係があるのはせいぜい90度の範囲ですからね。

ZUN:「東方」を作り始めたころはまだ「弾幕」っていう言葉はなくて、でもなんとなく弾幕が流行ってくる兆しはあって、少しずつ敵の弾は多くなってきていた。これはもう敵弾を多くしたほうが面白いよね、と思って。

 ただ、「東方」を出したころはまだ、多くのシューターは弾幕を嫌ってました。私も弾幕がシューティングにとって良い方向に行くとはあまり思っていなくて、あくまで弾幕という邪道なシューティングがある、私はそれが好きだからやってる、という感覚だった。


シューティング座談会 「弾幕がなかったらシューティングは終わっていた」とZUNさん

木村:今のシューティングでは弾幕シューティングが完全にメジャー側にいるよね。そのうえでさらにどう弾幕を工夫しようか、みたいなことになってる。

―― 「BLACK BIRD」はその中では珍しく、弾幕に行かなかったですね。ラスボスだけ少し弾幕っぽい攻撃がありますが。

木村:自分が好きなシューティングの要素を入れていっているのに弾幕がないのはどうかなと思って、弾幕シューティングを作ったことのある若手に実装してもらいました。ただ、ラスボス前までは弾幕要素はないですね。スクロールが一方向じゃないから、右から避けられない攻撃が来たら、左に逃げればいい。追い詰められても弾のスキマをかいくぐらなくていいから、初心者には優しいはずです。


シューティング座談会 どことなく「東方」へのオマージュがうかがえるラスボスの弾幕攻撃

木村:そういえば弾幕の話じゃないんだけど、1面から放物線弾を出すのはダメだって、シューティングに慣れている人からはすっごい言われた。初心者には難しすぎるって。

ZUN:横スクロールでネックになるのが「上下がある」ということなんですよ。それを生かしてしまうと難しくなる。だから横スクロールは弾幕向いてないんですね。

木村:弾幕みたいにたくさん弾を撃ってくるわけじゃないから、(放物線弾を)出してもいいかなと思ったんだよね。


シューティング座談会 飛び方がいやらしい放物線弾(これは2面)

ZUN:でも放物線弾を出さないと、せっかく横シューティングにした意味がないからね。世界感を考えたらそれでいいんです。あとは難易度で調整すればいいだけの話で。

―― これはZUNさんにも、みなさんにもお聞きしたいんですが、「東方」がここまでの人気を獲得できたのってなぜだと思いますか。

堀井:僕が最初に「東方」を知ったきっかけは、渡辺製作所(※)のなりたさんがブログで褒めてたことだったよ。

※2003年まで活動していた同人サークルで、「THE QUEEN OF HEART」や「MELTY BLOOD」などの対戦格闘ゲームをリリース。「MELTY BLOOD」は後にアーケードや家庭用でもリリースされた


シューティング座談会 MELTY BLOOD(渡辺製作所/2002年)※TYPE-MOON公式サイトより

ZUN:「東方紅魔郷」の体験版を出したころでしたね。当時、あそこで同人ゲームが紹介されるというのは重要だったんですよ。

木村:僕がZUNさんと初めて会ったのって2013年ごろで、「東方」ってどんなゲームなの、って周りのみんなに聞いて教えてもらったの。そのころは「ニコニコ動画」の盛り上がりと「東方」の盛り上がりがまさに同時に起こっていて、1つのゲームが何かのシステムを奪ってしまうということがとにかく衝撃で。

 で、その現象がなぜ起きているか考えたら「キャラクターだな」と。シューティングを遊んでない人たちでも、キャラクターで喜んで遊べる状況を作れたのが大きい。どんなアニメでも漫画でも、これほど二次創作されるというのはなかった。


シューティング座談会 ニコニコ動画では今でも「東方」が独立したサブカテゴリーになっている

ZUN:そこは僕も理由は分かっていて、なぜキャラクターが広がっていくかというと、絵だけではなくて、弾幕とか音楽とかも含めて、1ステージ丸ごと使ってキャラクターを表現しているからなんです。だから私も弾幕を頑張って作る。キャラクターを魅力的にすることとゲームを面白くすることがイコールなんです。

木村:ちゃんと狙ってそこを作り込める力がすごいな!!

 それにしてもいつも思いますが、ZUNさんに感じるのは「地道さ」なんですよ。ゲームって机でPCに向かって作ってるのが全てで、それを集中してやれる人って実はそんなにいない。それをZUNさんはたった一人でやって、成功している。「地道力」がすごい人なんです。要は「努力」の人です。


シューティングは「開発者が自分で遊べる」ジャンル


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/01/news004.jpg 巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに……衝撃の経過報告に大反響 2024年に読まれた生き物記事トップ5
  2. /nl/articles/2501/01/news052.jpg ryuchellさん姉、母が亡くなったと報告 2024年春に病気発覚 「ママの向かった場所には世界一会いたかった人がいる」
  3. /nl/articles/2501/02/news027.jpg 【ハードオフ】2750円のジャンク品を持ち帰ったら…… まさかの展開に驚がく「これがジャンクの醍醐味のひとつ」
  4. /nl/articles/2401/18/news015.jpg 巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに…… 衝撃の経過報告に「死なないで」
  5. /nl/articles/2501/02/news038.jpg 「どういうことなの!?」 ハードオフで13万円で売っていたまさかの“希少品”に反響「すげえ値段ついてるなあ」 
  6. /nl/articles/2501/02/news034.jpg 「脳がバグる」 ←昼間の夫婦の姿 夜の夫婦の姿→ あまりの激変ぶりと騙される姿に「三度見くらいした……」「まさか」
  7. /nl/articles/2501/01/news051.jpg 「衝撃すぎ」 NHK紅白歌合戦に41年ぶり出演のグループ→歌唱シーンに若年層から驚きの声 「てっきり……」
  8. /nl/articles/2412/31/news047.jpg 知らない番号から電話→AIに応対させたら…… 通話相手も驚がくした最新技術に「ほんとこれ便利」「ちょっと可愛くて草」
  9. /nl/articles/2501/01/news001.jpg 【今日の難読漢字】「手水」←何と読む?
  10. /nl/articles/2501/01/news048.jpg 「見間違いかと思った」 紅白歌合戦「ディズニー企画」で起きた“衝撃シーン”に騒然「笑った」「腹痛い」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  2. 大谷翔平、妻・真美子さん妊娠公表→エコー写真に“まさかの勘違い” 「デコピン妊娠?」「どう見てもデコピンで草」
  3. 「すごい漢字!」 YouTuberゆたぼん、運転免許証公開 「本名の漢字」に衝撃の声続々
  4. 「麻央さんにそっくり……」 市川團十郎の11歳息子・勸玄の成長ぶりに驚きの声 「大きくなってる!」「すでに貫禄がある」
  5. チェジュ航空社長、日本語で謝罪 犠牲者は170人以上との報道 公式サイトは通常のオレンジからブラックに
  6. 「スマホ入荷しました」 ハードオフ店舗がお知らせ→まさかの正体に大横転 「草しか生えない」
  7. 母「昔は数十人もの男性の誘いを断った」→娘は信じられなかったが…… 当時の“想像を超える姿”が2800万再生「これは驚いた」【海外】
  8. 毛糸で作ったお花を200個つなげると…… “圧巻の防寒アイテム”完成に「なにこれ作りたい……!!」「美しすぎる!」と100万再生【海外】
  9. 「思わず泣きそう」 シャトレーゼの“129円クリスマスケーキ”に衝撃 「すごすぎない!?」「このご時世に……」
  10. 「デコピンを抱き寄せたのはもしかして」 妻・真美子さん第1子妊娠発表で大谷翔平の発言と行動に再注目 「“もう帰る?”は気遣っていたのかも」
先月の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  3. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  4. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  7. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  8. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  9. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  10. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」