【木村祥朗×堀井直樹×なる×ZUN】「BLACK BIRD」爆誕祭 なぜゲーム開発者はシューティングを作りたがるのか、「原点にして究極」と語るその魅力(1/5 ページ)
「moon」「Million Onion Hotel」などを手掛けてきた木村祥朗さん(Onion Games)の最新作がなぜシューティングなのか。「BLACK BIRD」開発のきっかけや、シューティングというジャンルの魅力について語ってもらいました。
木村祥朗さん率いるOnion Gamesの新作「BLACK BIRD」が10月14日、Nintendo Switchで発売された(Steam版も10月31日に発売)。同作は非業の死を遂げた少女が“黒い鳥”に生まれ変わって王国を破壊していくシューティングゲーム。木村さんといえば名作「moon」を生み出したラブデリックの元メンバーだが、2016年に同作が初披露された際、「木村さんがシューティング!?」と驚いたのをよく覚えている。
木村さんにそのことを伝えたら、「実はずっとシューティング作りたかったんだよ」と言う。70〜80年代、かつてはゲームの花形と言われたシューティングだが、近年では家庭用やアーケードでの新作リリースはめっきり減り、斜陽のジャンルという印象は否めない。しかし一方で、木村さんのように「とにかくシューティングが作りたい!」という開発者も多く、実際、同人やインディーでは遊びきれないほどの新作タイトルが日々リリースされている。
一体シューティングの何がそれほどまでにファンや開発者を引き付けるのか。「BLACK BIRD」発売を記念して、それぞれ違う立場からシューティングを開発してきた4人のゲーム開発者に集まっていただき、なぜシューティングを作るのか、シューティングというジャンルのどこに魅力を感じるのか、それぞれの思いを語っていただいた。(編集部)
取材・文:山本悠作(元『シューティングゲームサイド』編集長)
構成:池谷勇人(ねとらぼ副編集長)
左から順に、堀井直樹さん(代表作:M2 Shot Triggersシリーズ/エムツー代表取締役社長)、なるさん(代表作:アスタブリード/えーでるわいす代表)、ZUNさん(代表作:東方Project/上海アリス幻樂団代表)、木村祥朗さん(代表作:BLACK BIRD/Onion Games代表取締役社長)BLACK BIRD
ハード:Nintendo Switch / Windows / Mac
開発元:Onion Games
価格:1980円(税込み)
公式サイト:
http://oniongames.jp/blackbird/
ニンテンドーeショップ(Switch版):
https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000009853
Steam(Win・Mac版):
https://store.steampowered.com/app/857500/BLACK_BIRD/
そもそもシューティングは本当に下火なのか?
―― 最初にシューティングというジャンルの現状について確認しておきたいのですが、シューティングが下火だといわれていることについて、みなさんはどのように見ていますか。
堀井:大きな会社がゲームビジネスとして成立させづらい、ということでしょう。開発に大きなリソースも必要ないし、エムツーとしては手堅いビジネスだと思っているんですよね。あと何より僕が好き。シューティングが下火だ、という声が聞こえてくるのは、それだけ好きな人が多いということだと思っています。
堀井直樹(@hor11)。有限会社エムツー代表取締役社長。過去には「セガ3D復刻プロジェクト」などセガ作品の移植やリメークを多く手掛けてきたほか、2016年には、過去の名作シューティングにさまざまな追加要素を加え、現行ハードに復刻した「M2 Shot Triggers(エムツーショットトリガーズ)」シリーズを創設―― 同じく家庭用出身の木村さん、どうですか。
木村:僕が子どもだったころはまさに「ゼビウス」時代だったから、謎めいた世界で弾を撃って不思議な敵を倒す――そんなゲームを作りたいという憧れは昔からあった。でもその思いは実はずっと眠っていて、商業の世界で仕事としてゲームを作ったりプロデュースしていったりする中で、シューティングという発想が出てこなかった。
木村祥朗(@yoshiro_kimura)。スクウェア、ラブデリック、グラスホッパー・マニファクチュアなどを経て、インディーゲームスタジオ「Onion Games」を設立。ラブデリック時代に手掛けた「moon」「チュウリップ」などの作品は今なお多くのファンに愛されている。Onion Gamesとして独立した後は、2016年に「勇者ヤマダくん」、2017年に「Million Onion Hotel」をリリース。「BLACK BIRD」は3作目にあたる―― それはどうして?
木村:「シューティングの企画を立てたので予算とってきます」とか「お金ください」とかの話って、しにくいし無理だという意識があった。毎日もうけを出すために戦っている自分が、なぜシューティング? っていう。無意識のうちに作りたい気持ちを閉じ込めていたんです。
堀井:あえて言うと、シューティングは伸びしろが少ないから夢がないんですよ。必ずシューティングを欲しがっている人はいる。でもそれが、たまたま10倍や20倍のヒットになる、というのがない。
木村:RPGだったら50万人とか100万人とか、なんならもっと大勢に遊ばれる可能性もあるよね。シューティングの伸びしろの限界って、何人くらいなんだろう?
堀井:かつて「スペースインベーダー」は日本中を席巻したけど、そのころはRPGはなかったからなあ。あくまで予想だけど、例えば「斑鳩」とか、世界的に見れば移植版も含めて数十万本とか売れていると思うんですよ。でも、多分あれくらいが天井なんじゃないかと。
―― そんな中でなぜエムツーは「M2 Shot Triggers」を始めようと思ったんですか。
堀井:第一弾の「バトルガレッガ Rev.2016」の話をすると、これより前のクラシックなシューティングって、やっぱりバーチャルコンソールとか復刻系のダウンロード販売が主流で、つまり千円未満の値付けが標準になっていたんです。その中で僕らは好きなゲームの移植にずっと取り組んでたりしたんだけど、出す機会がなかった。これではビジネスにならないから。
でも一方で固定のお客さんはいて、その方々には買っていただけるはず、というもくろみもあったので、自分たちで世に問うことを試したくなった。そのためには値段を上げないといけなくて、値段を上げるならそれに見合った付加価値を付けなければ、ということでこの形になったんです。「バトルガレッガ Rev.2016」は3700円(税別)ですが、これは5000円のPSNカードを買ってきてお釣りが来る価格を意識しました。あとは「俺たちのゲームがガチャ1回分よりも安いってないだろ!?」っていう(笑)。
―― 仮にですけど、例えば今、家庭用でフルプライスのシューティングを作ろう、となったら作れますか。
堀井:もちろん作る方法はあると思います。今の技術でガッチリ濃いシューティングを作ってるところはたぶんない思うので、そこに突っ込んだら行けると思う。
僕が「M2 Shot Triggers」をなるべく早く始めたいと思ったのは、弊社の井内(※)が作る新作がとても質が高くなりそうなので、それを安売りしたくなかったんですよ。今の基準で価格が固定されてしまうと「2000円で売らないと買ってもらえないのでは」という流れになってしまう。それは避けたかった。
※井内ひろし。トレジャー在籍時に「レイディアントシルバーガン」や「斑鳩」「グラディウスV」のディレクターを務めた
木村:シューティングは1000円とか10ドルとかにしないといけないんじゃないか、という世の中からの圧は感じるよね。「BLACK BIRD」は日本では1980円(税込)、海外では19.99ドルにしたんだけど、海外のYouTuberの動画を見てたら、視聴者コメントの中に「19.99ドルか、高いな」「セールまで待とう」っていう人がたくさんいて。それが一人や二人じゃない。アメリカの人たちはもう1000円以下でないとシューティングを買ってくれないのかも……っていう気持ちになった。
―― インディーや同人の現状にも目を向けてみましょうか。なるさん、ZUNさんはどう見ていますか。
なる:シューティングが下火というか、「大手メーカーからAAAタイトルとしてのシューティングが出ない」ということには個人的に寂しさを感じています。でも同人ゲーム界隈(かいわい)ではシューティングが下火という印象は特にないですね。今年の夏コミでは「東方Project」の新作「秘封ナイトメアダイアリー」が出ましたし、コミケでは毎回何かしら新作や新バージョンが出ています。「Rolling Gunner」「夜光蛾8」といった2Dシューティングもそれぞれしっかりと面白い。
なる(@nal_ew)。同人ゲームサークル「えーでるわいす」代表。ゲーム会社に務める傍ら、2005年に「Fairy Bloom -花咲か妖精-」を公開。2011年に独立し、2013年にシューティング「アスタブリード」をリリースした。同作はその後PS4にも移植され、同サークルの代表作となった。11月8日にはNintendo Switch版もリリースされているZUN:シューティングが好きな人は「下火だ」「死んだ」といわれている部分も含めて、シューティングが好きなんですよ。シューティングって新作が少なかった時期にもコアなファンは残っていて、何回も冬の時代を迎えては、そのたびに新しいブレークスルーが出てきてそれで生き延びてきたジャンルなんです。
ZUN(@korindo)。同人ゲームサークル「上海アリス幻樂団」主宰。大学在学中の1996年に「東方靈異伝」を発表し、以降「東方Project」としてシリーズを展開。2017年発表の「東方天空璋」はシリーズ第16弾にあたり、他にも2018年発表の「秘封ナイトメアダイアリー」など多数のスピンオフ作品がある―― そこ、ぜひ詳しく聞きたいです。
ZUN:かつてシューティングはゲームの花形だったんですね、特にアーケードでは。ただ次第に難易度が上がっていって、ついていけない人が増えてきた。「グラディウス」だって、アーケード版の「III」は難しかったですよね。そのころちょうど格闘ゲームが出始めて、ゲーセンの花形がそちらに移っちゃった。シューティングの新作が出てないわけではなくて、ほそぼそと遊んでいる人はいたんだけど、作る側もどんどん離れていって……という“冬の時代”は確かにあった。
でも、そのうちに格闘ゲームもどんどん複雑になっていって、そうするともう一度シューティングをやりたいな、という人たちが出てくる。そこに熟成された、新しい見せ方をするシューティングがけっこう出てきたんですね。世界観や演出が良くできていたり、ただ宇宙を飛んでいた時代とはちょっと違う、変わったゲームが出てきたりしてまた人気が復活して。そういったことをシューティングは繰り返していますよね。
―― ブレークスルーになった作品というと、パッと思い浮かぶのはどのあたりですか。
ZUN:ゲームセンターで流行ったイメージがあるのは「ダライアス外伝」とか。もう一回シューティングの時代がきたな、と思いましたね。あとはやっぱり弾幕。弾幕という言葉が出始めてから、シューティングの新しい道が見えた。
堀井:下火という印象があるのは、ゲーセンの状況が変わってきたのも大きいでしょうね。ゲーセン自体がまず減ってるし、シューティングどころか昔ながらの(レバーとボタンで遊ぶ)ビデオゲームの稼働もどんどん縮小してる。だからアーケードの文脈で作られたシューティングは確かに少なくなってはいます。
―― 価格の話がさっき出ましたが、同人・インディーだとどんな感じですか。
なる:まず「東方」が基準になっている、という人は多いですね。
木村:僕の1000円のプレッシャーって何かなあと思ったら「東方」だよ!!!
一同:(笑)
ZUN:(ニコニコ笑っている)
なる:同人ゲームはちょっと特殊で、コミケなどの即売会で自分で頒布するから、お釣りが出しやすい値段にする。だから500円単位になるんですよ。「アスタブリード」の場合、最初コミケで売ったときは2500円にしたんですが、同人ゲーム界隈からの反応がわりとキツめで。「一線を越えたな」「同人ゲームとしてはさすがに高い」って。でも周りの応援してくれている人たちは、「このゲームは値段は下げるな」と言ってくれたりしました。
ZUN:同人基準だと、3Dのゲームは高くても大丈夫なんですよ(笑)。
堀井:家庭用でやってる身からすると、「こんなに手の込んだゲームを2500円なんて安さで売りやがって!」って思ったよ(笑)。ある開発会社の人と「アスタブリード」くらいのゲームの開発を受けるとしたらいくらか、って話をしたら「あの規模の仕事を受けたら1億5〜6000万だな」みたいな話になった。
ZUN:今はみんな無料でゲームを遊ぶ時代だから、無料と有料では大きな差があると思うけど、逆に値段はそんなに関係ないと思うんですよ。3000円でも5000円でもそこまで差はないのかもしれない。
あるとき突然、自由な気持ちになって生まれた「BLACK BIRD」
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