漫画家に無断で全巻無料公開? Web漫画サイト「マンガBANG!」で著作権トラブル、複数作品が一斉公開終了に

漫画家の代理人、「マンガBANG!」運営会社、日本文芸社を取材しました。

» 2018年12月07日 18時30分 公開
[Kikkaねとらぼ]

 “1万冊の漫画が無料読み放題”のWebサイト「マンガBANG!」に掲載されていた、日本文芸社の作品が一斉に削除されています。背景には「マンガBANG」運営会社以外の契約当事者間で、配信作品の認識に齟齬(そご)があり、漫画家に無断で連載中の作品が多数掲載されるなどのトラブルがあったとみられています。 


漫画BANG 日本文芸社 人気アプリ・Webサービス「マンガBANG!」(公式サイトより)

 漫画アプリとして2014年にスタートした「マンガBANG!」は、2017年にWeb配信サービスを開始し、2018年5月からは『ミナミの帝王』『麻雀飛龍伝説 天牌』といった日本文芸社の人気漫画が多数公開されていました。

 中には1巻から92巻まで無料で読める状態となっている作品もありましたが、ある漫画家の代理人を務める東京フレックス法律事務所の中島博之弁護士は「漫画家側は(全巻無料で配信されていることを)把握していない」と指摘。日本文芸社や「マンガBANG!」の運営会社の「Amazia」社に対して説明を求めていると語ります。


漫画家が知らぬ間に最新刊まで無料公開

――「マンガBANG!」を知ったきっかけは何だったのでしょうか。

中島弁護士漫画村等の海賊版対策の一環でさまざまな漫画サイトを調べていた際に偶然発見しました。日本文芸社のものは300作品以上載っていて、ほとんど全巻が無料で読める状態だったため、私が顧問を務める漫画家にこの状況を把握しているか確認しました。

――その後どういった対応を取ったのでしょうか。

中島弁護士漫画家は全巻無料公開されている状況を知りませんでしたから、11月上旬にAmazia社に対して説明を求める通知書を送りました。するとすぐに当該作品の配信が停止され、Amazia社と取次会社との間で結ばれた配信許諾契約書が送付されてきました。その後しばらくして、指摘した以外の日本文芸社を版元とする作品のほぼ全ての掲載が取りやめられたため、「正しく権利処理がされていないのでは」との疑惑が強まりました。これと並行して日本文芸社にも通知書を送りました。

――日本文芸社はどのように返答をしているのでしょうか。

中島弁護士同社の代理人によると、漫画家との間に電子における出版権の設定をしているので、その一環としてやっているという内容でした。販売するものは「電子出版」と呼べますが、今回のように販売せず、無料公開している作品については電子出版の範囲に含まれないと考えます。またどの契約書のどの部分を指して全巻無料公開ができると主張しているのかを示すように求めています。

――無料公開をされることによって漫画家には全く利益が入らないのでしょうか。

中島弁護士漫画自体は無料で公開されていますが、サイトの広告料については漫画家に振り込まれていることが分かりました。ただし今回の問題が発覚するまで、漫画家本人はそれが本の売り上げによる印税だと思っていたため、広告収入であるとの認識はありませんでした。

――金額にして大体どれぐらいの広告版権料が入っていたのでしょうか。

中島弁護士日本文芸社の代理人の回答によると1月から3月末までで数十万円振り込まれています(※)。しかし、定価約600円で売られていたもので、今まで全くWeb公開されていなかったものが突然無料で最新刊まで公開されたら読者がそのサイトを一斉に見に来ることは予想できますから、たった数十万円で漫画家がかなり大きな機会損失をしているということは理解していただきたいです。また突然告知なしに全巻無料公開をするのは、定価で作品を購入している読者に対しても不誠実だと思っています。

(※)Amazia社に確認したところ、1月から3月までで支払われているのはアプリ版の版権料であり、日本文芸社の代理人が事実誤認している可能性があるとのこと。

――当該の漫画はいつまで無料公開される予定だったのでしょうか。販促の意味で「48時間限定で全巻無料公開」といったものはたまに見かけますが。

中島弁護士Amazia社や日本文芸社代理人の回答によると、依頼人の漫画は「マンガBANG!」にて2018年5月2日から2037年12月31日まで無料公開される設定になっていました(※)。20年以上も無料公開することが販促になるとは思えませんでした。

(※)編集部注:Amazia社によると、2037年12月31日までという設定は、システムの設定期間であり、作品の許諾期間とは無関係とのことです。

――今後はどういった対応をとる予定ですか。

中島弁護士損害賠償を請求するというよりは、まずはなぜ漫画家に無断で大量の作品が無料掲載されていたのかという真相究明を行いたい考えです。




Amazia社と日本文芸社の見解は

 ねとらぼ編集部ではこうした状況を踏まえ、Amazia社に連絡を取りました。多数の日本文芸社作品の掲載が終了していることに対し、担当者は「取次会社から許諾を受けていて配信していましたが、取次会社側から配信終了の措置が取られたので、マンガBANGでの配信が終了しました」とコメント。


漫画BANG 日本文芸社 「マンガBANG!」を運営するAmazia社の運営者情報(公式サイトより)

 日本文芸社とAmazia社との間にはいくつかの取次会社が入っており、取次会社側で「配信終了」の手続きを取れば自動的にサイトでの配信が停止するため、終了の理由については把握していないようですが、「版権料はきちんとお支払いした上での配信でした」とも話していました。

 また日本文芸社にも取材を申し入れたところ、12月7日に関係者で協議したと明かした上で、「運営会社以外の契約当事者間で、配信作品の認識に齟齬(そご)がありました。現在事実確認中で詳細は申し上げられませんが、Amazia社には一切の非はございません」とのこと。今後は該当する漫画家への個別の説明を検討していると話しました。


漫画BANG 日本文芸社 日本文芸社の運営者情報(公式サイトより)

 漫画家が出版社に対して意見するというのはかなり勇気が必要なこと。今後どのような対応が取られるのか、取材を続けたいと思います。

※画像の一部は編集部で加工しています。


(Kikka)


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/19/news150.jpg 「情報を漏らされ振り回され……」とモデラー“限界声明” Vtuberのモデル使用権を剥奪 「もう支えられない」「全サポート終了」
  2. /nl/articles/2411/20/news028.jpg 「うどん屋としてあるまじきミス」→臨時休業 まさかの“残念すぎる理由”に19万いいね 「今日だけパン屋さんになりませんか」
  3. /nl/articles/2411/20/news224.jpg “ドームでライブ中”に「76万円の指輪紛失」→2日後まさかの展開に “持ち主”三代目JSBメンバー「誰なのか探しています」
  4. /nl/articles/2411/19/news169.jpg 高畑充希と結婚の岡田将生、インスタ投稿めぐり“思わぬ議論”に 「わたしも思ってた」「普通に考えて……」
  5. /nl/articles/2411/20/news031.jpg 「本当に同じ人!?」 幼少期からイボをいじられていた男性→美容師の“お任せカット”が衝撃 「めちゃくちゃ大変身」
  6. /nl/articles/2411/19/news022.jpg 「おててだったのかぁああああ」「同じ解釈の人いた笑笑」 ピカチュウの顔が“こう見えた”再現イラストに共感続々、464万表示
  7. /nl/articles/2411/20/news042.jpg 「腹筋崩壊」 ハスキーをシャンプー&パックしたら…… “予想外のハプニング”に「こ〜れは大変だわ」「沼にでも落ちたのかとwww」
  8. /nl/articles/2411/20/news216.jpg “歌姫”ののちゃん、6歳現在の姿に驚きの声「あれっ!?」「ビックリしてます!」 2歳で「童謡こどもの歌コンクール」銀賞受賞
  9. /nl/articles/2411/20/news041.jpg 黄ばみのある68年前のウエディングドレスを修復すると…… 生まれ変わった姿に「泣いた」「受け継ぐ価値のあるドレス」
  10. /nl/articles/2411/18/news107.jpg 走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた