「もうアニメ業界では作れないと思った」「帰り道で毎日吐いてた」 放送から5年、「ステラC3部」の監督はいかにして復活を果たしたのか(1/3 ページ)
衝撃の放送から5年。
あなたは2013年に放送されたアニメ「ステラ女学院高等科C3部(以下、ステラ)」を覚えているだろうか。萌えとサバイバルゲームをミックスさせた先駆的な題材に、ジャジーな劇伴を組み合わせたオシャレな音響演出。そして細部までこだわったエアガン描写。
主人公は高校1年生の女の子・大和ゆら。引っ込み思案で友達のいない彼女は、高校のサバゲー部で初めての友達と出会う。ところが話が進むにつれて、彼女はゆるふわな部活動では満足できなくなり、修羅の道を歩みだしてしまう……。
お茶でまったりしたい部員たちを「勝つための足手まとい」と怒鳴りつけ、急速に孤立を深めていくゆら。一転して最悪な空気の合宿。さらに大会本番では不正行為に手を染めるなど、主人公の転落人生は加速の一途をたどった。
当初の萌えや癒やしを求めた視聴者は、胃痛が不可避のギスギスした展開に振り落とされ、DVD/BDの売り上げでも苦戦。収益化の方法が多様化した現在では円盤の売り上げが“計測不能”となることも珍しくなくなったが、当時ぎりぎり算出されてしまった「267枚」という数字は、一部では「1ステラ」という単位として広まったほどだ。
あの衝撃の放送から5年が過ぎた。そして、あなたは「ステラ」のことは忘れても、あのとき味わった胃痛までは忘れていないはずだ。その「ステラ」の川尻将由監督が5年ぶりに放つ新作が、短編アニメ「ある日本の絵描き少年」である。
【追記】「ある日本の絵描き少年」本編がYouTube公開
同作の主人公は、漫画家を目指す少年・シンジ。本編では彼の幼少からアラサーに至るまでの成長に合わせ、登場人物のタッチが「幼児の絵」から「漫画家の絵」へと次第に変化していく。その挑戦的な手法や、監督の人生を反映したかのような生々しいストーリーは高く評価され、“第40回ぴあフィルムフェスティバル”での準グランプリをはじめ、“第10回 下北映画祭”でグランプリに輝くなど、「ステラ」ファンとしても「まさか」と思うほどの快挙を納めている。
5年越しのこの復活劇。川尻監督は何を思い、自主制作の手法で新作アニメに挑んだのか。たっぷりと語ってもらった。
帰り道、毎日ゲロを吐いていた
――受賞おめでとうございます。いよいよ下北沢トリウッドで上映も始まりました。
川尻:いやあ、いろいろあったねえ(笑)。
――いろいろありましたか。
川尻:「ステラ」の後、「俺、ちょっともう業界で作れないな」と思って始めた自主制作だったから、「これからどうしようかな……」って気持ちは込められているよね。
――「ある日本の絵描き少年」では漫画家になるのが夢の主人公・シンジはなかなか連載の機会に恵まれません。そんなとき舞い降りてきたアニメのコミカライズ企画に飛びつくものの、連載が思い通りいかずにボロボロになっていくわけですが……。
川尻:確実に「ステラ」の経験が反映されてますよね。俺は子どものときから夢は映画監督で、ラッキーなことにチャンスにも恵まれたけど、それを自ら思いっきりふいにした。完全に力不足が原因だったけれども。
――せっかくなので「ある日本の絵描き少年」の前に、まずは「ステラ」について質問させてください。
川尻:どうぞ……。
――当時、そもそもどんな経緯で監督をすることになったのでしょうか?
川尻:実は自分でも謎なところがあるのですが、以前山賀さん※に聞いたときは、「ダンタリアンの書架」に美術で参加した際の仕事ぶりを評価してくれた、とのことでした。
※山賀博之・・・「ステラ」を制作したアニメ会社・ガイナックスの社長。山賀氏は「ダンタリアンの書架」で美術監督も務めた。
――商業作品の監督経験は無かったわけですよね?
川尻:もちろんありません。山賀さんはたまにすごい采配をするんです。「ダンタリアン」では上村泰さんも初監督でしたよね。上村さん、今では「幼女戦記」「フリクリ オルタナ」と着実にキャリアを積んでいますが。
――川尻さんにとって「ステラ」での初監督はいかがでしたか。
川尻:精神的にかなり追い込まれました。帰り道に毎日ゲロ吐いてましたね。ただ周囲は意外なほど優しかったです。当時は大学卒業から間もない25歳で、周りとは経験値に差がありすぎて、ベテランの人からは孫みたいな距離感で見られてたんじゃないかな。
――当時のインタビューでは力不足を認めつつも、主人公・ゆらが闇堕ちしていく展開は良く描けていたと自己分析されていましたね。テーマ的には「ルーザー(敗北者)の物語を描きたかった」(外部関連記事)と。
川尻:「ステラ」では前半でつまらない萌えアニメをやったけど、主人公のゆらが堕ちてヒリヒリしてくるあたりで面白くなってきた手応えはあったよね。そこがネットではめちゃくちゃ不評だったわけだけど(笑)。
――原作漫画ではもっと明るい話なので、アニメの展開には驚きました。
川尻:ゆらが堕ちていく過程は俺のネガティブ思考も反映されてると思うけど、「成長物語にしないとダメだろう」というのは、もともと原作のいこまさんの案だった。ゆらがゾンビになって※、一度とことん堕ちてから復活させようというのは当初から決めていて、ゾンビもいこまさんの案です。
※ゾンビになる・・・サバゲーでヒットしたにもかかわらず自己申告をしない不正行為。
――それは意外ですね。
川尻:実を言うと、制作中に音付けのほうが面白くなっちゃったんですよ。曲や音響をどうするかを音楽に造詣が深かったプロデューサーさんと組んで、ひたすら音にこだわってました。だから中盤以降はサポートしてくれたスタッフにお任せしてしまった部分も多く、今になって、「もっとできることがあったのでは」と反省点は多いです。それでもたまに「あれが好きだった」と言ってくれる人が現れると、ちょっと救われた気持ちになりますね。
自主制作を選んだのは、もう業界では作れないと思ったから
――そこから紆余曲折があり、自主制作をやることになったと。クレジットにある“株式会社ねこにがし”とはどういう会社なのでしょうか?
川尻:吉祥寺トロン※を退社したタイミングで起業しました。義父の印刷会社の子会社という形になっていて、大きな会社ではありません。なんとなく業界では監督をやらせてもらえないだろうなあと思ったときに、会社化すれば「製作費が経費になる」「個人よりも他のスタジオに依頼しやすいはずだ」と気付いたんです(笑)。
※吉祥寺トロン・・・ガイナックスを親会社に持つCG制作会社
――「ある日本の絵描き少年」では主人公の画力向上に合わせて、途中から商業アニメのような映像になっていきますけど、製作費はどのくらいでした?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「ふざけてる」「作品を知らないのになぜ?」と怒りの声 マクドナルドと「HUNTER×HUNTER」コラボの“PR施策”が物議【台湾】
-
「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた
-
たった築8年で“ぶっ壊れた”マイホームのリアル おそろしい戸建て事情に「声出た」「我が家もそうでした」
-
大家に「好きにしていいよ」と言われて薄暗い部屋をDIY改装したら…… あまりの変貌に仰天「すっげえええ」 投稿者に話を聞いた
-
【今日の計算】「3+3÷3−3」を計算せよ
-
荒れ放題の“悪夢の庭”をたった1人で11時間掃除したら…… あっぱれすぎる働きぶりに「あなたはヒーロー」と称賛
-
一度も髪を切ったことがない女性が、髪をほどくと…… 美容師も驚がくのスーパーロングヘアに470万いいね「リアルラプンツェル!」【海外】
-
生後0日→1歳10カ月の赤ちゃん成長ビフォーアフターが衝撃の700万再生 それから2年たった現在は…… さらに驚く姿に反響
-
2歳娘が一時保育に行ってる隙に“空き巣”が…… まさかの正体に「留守を狙ったんですね」「かくほしちゃうぞ」
-
自宅の犬小屋に住み着いた野良猫が、1年後…… まさかまさかの“現在”に「うわあ!よかったねえ!」「お幸せに」と100万表示
- 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
- 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
- 「Snow Man」の映像が中国で物議→公開停止 所属会社「歴史的事象に対する配慮に欠けた」と中国語と日本語で謝罪
- 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
- 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
- 「かわいいってこういうこと」 生後1カ月の子猫が暖をとる場所は……幸せしかない姿に「この角度から見るのが最幸」
- ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
- 「ボットン便所を簡易水洗にしたい」→「どれどれ……」 建設会社スタッフが驚がくした“歴史的遺物”に大反響 「相当貴重なもの」
- 「その手があったか!」 ほぼ卵焼きだけの弁当?→“まさかのサプライズ”が800万再生 「天才すぎて泣いた」
- 飛行機で傷口が感染し「身体の一部を切除」 133万フォロワーの元アイドル「痛みで涙が止まらない」悲痛の現状報告
- “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
- 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
- 友人に「100円でもいらない」と酷評されたビーズ作家、再会して言われたのは…… 批判を糧にした作品が「もはや芸術品」と490万再生
- 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
- 「ま、まじか!!」 68歳島田紳助、驚きの最新姿 上地雄輔が2ショット公開 「確実に若返ってる」とネット衝撃
- 荒れ放題の庭を、3年間ひたすら草刈りし続けたら…… 感動のビフォーアフターに「劇的に変わってる」「素晴らしい」
- 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
- 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
- 「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
- 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声