欠点は肯定的に捉えることで美しさになる――ティム・バートン監督が実写版「ダンボ」に込めた思いとは
ダンボとティム・バートンが"勇気の魔法"をかけてくれる映画。
古くは「シザーハンズ」のエドワード・シザーハンズや「チャーリーとチョコレート工場」のウィリー・ウォンカなど、常に”アウトサイダー”を描き続けてきたティム・バートン監督。そんな鬼才が新たに手掛けたのは、大きすぎる耳を持つためにサーカス団の笑いものだった子象のダンボが大きな耳を翼にして空を飛び、やがて自らの手で幸せをつかむというディズニー往年の名作「ダンボ」の実写作品です。
今回ねとらぼは、3月20日から公開の映画「ダンボ」の全国ロードショーに合わせて来日したティム監督を直撃。「ダンボ」の魅力や、監督自身が込めた思いを聞きました。
―― 監督の作品はアウトサイダーを個性として描き続けており、今回の「ダンボ」はまさにぴったりだったと思います。
ティム・バートン監督(以下、ティム) 本当にそう思います。だからこそ僕はこの作品を作りました。自分自身が、ダンボというキャラクターを本当に理解できたように感じています。今回はそれを“耳が大きい”という単純なもので表していますが、僕も含め、人間というのは周りから見ると欠点や短所と呼ばれることを自分なりに乗り越え、肯定することで生きている。だから、「欠点は肯定的に捉えることで美しさになる」ことを描きたかったのです。
―― 監督として、「ダンボ」の魅力はどこだと思いますか。
ティム アニメーション版の「ダンボ」は、僕自身とても大好きな作品の1つですが、今回は単純な“リメイク”にはしていません。それは、アニメーションは時がたつと状況が変わり時代に合わないことも多いから。だから、感覚や感情を捉えて今回の実写版を作りました。
―― リメイクではなく、新たな物語として「ダンボ」を作り出すときに一番大事にした部分は?
ティム 常に念頭に置いたのは、感情をリアルに描写することです。例えば、サーカスの元スターでダンボの世話係であるホルト・ファレル(コリン・ファレル)が戦争に行ったことや腕をなくす描写は劇中では一切描いていませんが、彼を見ていれば彼の心情などは理解できると思います。
―― アニメーション版の「ダンボ」といえばピンクの象が出てくるエキセントリックなシーンがとても印象的でしたが、今回監督はこのシーンをしゃぼん玉を利用して描いています。この意図を教えてください。
ティム 私もあのシーンはとても印象的だったと感じています。しかし、アニメーション版ではあの象たちが突然出てきてしまうので、今回の実写とは合わない。今回はよりリアルに描くため、サーカスショーの一部として描くことにしたのです。
―― ダンボを実写として生み出す上で、フォルムや動きなど大切にしたことはありますか。
ティム リアルでありながらファンタジーというのは、奇妙なものになってしまうリスクはありましたが、結果はかわいらしい、まるでハートのような存在を生み出すことができました。ただ、動物だからといって決して擬人化しないようには気を付けました。
―― 監督にとって、オリジナルがあるものを自分なりに作り変える楽しさや面白さはどこにあるのでしょうか。
ティム オリジナルがあると、みんなが知っていて、それに対する思いや解釈がそれぞれあるでしょうから、僕が作り変えることで残念に思う人もいるでしょう。でも、僕もそれらの作品はとても大切に思っていますし、それらの作品にインスピレーションを受け、今も作り続けているので、僕の作品も少しでも誰かへのインスピレーションのきっかけになればいいなという思いです。
―― 最後に。ダンボが空を飛べるようになったのは、羽根のおかげでした。監督にとって、羽根を手に入れ空を飛べるようになった瞬間があれば教えてください。
ティム たとえ物理的なものでなくても、それが見えなくても、みんな背中に羽根を持っていると思います。僕はずっと絵を描くことが大好きでしたが、嫌いになりそうだったこともあります。でも、「細かいことは気にせずとにかく楽しもう」と思った瞬間が自分にとって羽根のような存在となり、今日でも絵を描き続けられています。皆さんも、そんな羽ばたける瞬間を見つけてほしいし、見つけることができたなら、ぜひそれを大切にしてほしいと思います。
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