星はたくさんあるのに、なぜ宇宙は暗いの?【オルバースのパラドックス】

確かに宇宙の写真は黒っぽい。

» 2019年03月26日 11時30分 公開
[QuizKnockねとらぼ]

2019年4月18日:追記

記事中「オルバースのパラドックス」の解説について、記述に誤りがあると読者からご指摘いただいたため、津村耕司氏(東京都市大学天文学研究室准教授)のご協力のもと、本文を修正いたしました。


 現代において「宇宙」といえば、100人中99人は



 これをイメージすると思う。漆黒の空間に星の光が散らばっているこれ。

 ところが、宇宙のことがそれほど分かっていなかった昔、ある人は「宇宙が暗いのはおかしい」と疑問を抱いたという。

 現代ならそんなことを言った方がおかしいと思われそうだが、説明を聞くと本当におかしい気もしてくる。そんな「オルバースのパラドックス」について考えてみよう。


オルバースのパラドックスとは

 パラドックスの内容は、

  • 宇宙が無限に広がっていて
  • 恒星が均等に散らばっている
  • ならば、宇宙は明るいはず

 というもの。

 なかなかピンとは来ないが、地球は無限の宇宙空間に取り囲まれており、そこに無限に星があるのだから、地球から見たら星星の光がそれこそ無限に入ってきてまぶしい、という話だ。


もう少し詳しく……

 とはいえ、ここまでの説明はアバウトだ。もう少し詳しく見ていこう。

 「星が無限の宇宙空間に均等に存在するため、宇宙は明るくなるはずだ」、というところまでは説明した通り。ただ、そうカンタンには行かない。

 車のライトや電灯の灯りは、同じ強さの光を放っているならば当然遠くにあるもののほうが暗く見える。これはみなさんもご存じだろう。これは星についても同じだ。光は分散するので、遠い星の光は近くの星ほど明るくは見えない

 これだけ見ると「遠くほど暗いのだから、空全体が明るくなったりはしないのでは?」と思えるが、それだけではまだこのパラドックスは崩せない。

 恒星の見かけの大きさ(明るさ)距離の2乗に反比例するが、同時に恒星の数が距離の2乗に比例するため、遠いところ(つまりはより広いところ)には一つ一つは弱いがたくさんの光があるのだ。球体の表面積は半径が大きいほど広くなるため、遠いところのほうが多くの星が位置できる、というわけである。

 よって「宇宙全体の明るさ」という観点からすると、距離による一つ一つの星の減光は、距離が離れるほど星がたくさん位置することによって相殺される。

 つまり、上で述べた仮定が正しいとすれば、無限の宇宙空間は四方から明かりに照らされるピカピカ空間になるだろう、というのがこのパラドックスである。

 そういわれれば確かに……と思わないだろうか。


何が間違っているのか?

 無論、みなさんが今見ているように、宇宙は暗い。となると、パラドックスの説明のどこかが誤りである。

 提唱当初から多くの科学者がこの説明を試みたが、ここではその中でもより分かりやすいものを紹介する。

 すなわちそれは、「われわれが『見ることのできる宇宙』が有限であるから」というものである。


光速が意外と遅いので……

 宇宙にはビッグバンと呼ばれるはじまりの瞬間がある。これは、現在からおよそ138億年前だといわれている。

 そして、その宇宙にはわれわれから見えていない部分が存在する。「宇宙誕生から現在までに光が到達できる距離」よりも遠くにある星は、その光がまだわれわれに届いていないがゆえに見えないのだ。


地球からは見えていない星がある

 ゆえに、宇宙にある全ての星のうち、われわれが見えているものは一部である。つまり有限であり、われわれの見ている宇宙の全てが光で埋め尽くされるようなことは起こらないのだ。


まとめ

  • 宇宙が無限に広いと思われていた時代に、
  • それならば宇宙は明るいはずだと考えた人がいたが、
  • われわれから見える宇宙が有限であることが分かり解決した

 となる。

 このような思考実験が行われていたのは、宇宙の広さも、宇宙空間が真空かどうかも分かっていなかった時代のこと。このような「〜だとしたら……」を足掛かりとしながら、数多の科学者が宇宙の謎に挑んでいったのだ。

制作協力

QuizKnock


監修

津村耕司(東京都市大学天文学研究室准教授)

参考文献

吉岡 一男, オルバースのパラドックスについて, 放送大学研究年報 第17号, 2000


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  2. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  3. 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
  4. 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  5. “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
  9. 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
  10. 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」