金10山下智久「インハンド」 偏屈で無愛想で天才でロボットハンドな主人公は山Pのハマリ役となる予感
原作はまだ単行本3冊分、早すぎるドラマ化は吉と出る?
山下智久主演の金曜ドラマ「インハンド」(TBS系・金曜22時〜)が放送開始される。原作は「イブニング」で連載中の漫画。
作者の朱戸アオは本作をふくめ、医療をテーマにした漫画を繰り返し手がけており、『Final Phase』『リウーを待ちながら』はそれぞれ、日本でハンタウイルス、ペストのパンデミックが起こったら……というストーリーで、猛威を振るう感染症に等身大の医師たちが立ち向かっていく姿を丁寧に描いていた。
『Final Phase』が、PHPの「フューチャーサイエンスシリーズ」で連載されていたように、豊富な医療・科学知識に裏付けされたリアルなストーリー展開に定評のある朱戸アオ。ただ、パンデミックの恐怖をリアルに描くため、当然『ブラックジャック』『スーパードクターK』的な天才医師がズバーンと病気を治療してくれる……的な展開にはならず、どうしても登場人物たちのキャラクター性は弱めだった。
一方『インハンド』では、箱根の巨大植物園を買い取り研究室として引きこもっている、超変人だが天才な寄生虫学者・紐倉哲が主人公。しかも右手はロボットハンドの義手。もちろん、このロボットハンドに最近(作者が)話題の『コブラ』的なスーパー機能が搭載されているわけではないが、これまでの朱戸アオ作品と比べるとだいぶキャラクター性が強めだ。
寄生虫にしか興味がない変人・紐倉が、天才的な科学・医療知識を駆使ししてさまざまな事件を解決していく。ゴールを「病気との戦いに勝つ」ではなく、バイオテロなどの病を利用した事件の解決に設定したことにより、リアルな医療描写はそのままに、ズバッと事件を解決するカタルシスもあり、朱戸アオの代表作となりそうな作品だ。
とはいえこの『インハンド』、2018年に「イブニング」で本格的に連載を開始してから、まだ単行本は1巻しか出ていない。「月刊アフタヌーン」で短期連載していた時期のものをまとめた『インハンド プロローグ』(紐倉が主人公ではない作品も含まれる)も全2巻。
最近、ドラマもアニメも原作の青田買い傾向が強まっているが、それにしても早い! 紐倉が右手を失った理由などもまったく明かされていない段階だし、そもそも1クール放送するにはエピソード数も足りなそうだ。原作ファンとしては、ドラマ化されるのは楽しみではあるものの、もうちょっと原作が展開してからでもよかったのでは……とも思ってしまう。
菜々緒の顔面が原作そのまんま!
しかし今回のドラマ化、キャスティングに関してはバッチリだ。
主人公・紐倉哲を演じるのは山下智久。せりふ回しはともかく、表情のレパートリーが多い方ではなく、何を演じていても山Pになってしまうことでおなじみの役者だが、今回演じる紐倉はもともと山P感が強い。偏屈で無愛想で天才、そして右手がロボットハンドというクセの強いキャラクターは山Pのハマリ役になりそうな予感。紐倉に科学・医療関係の事件について調査を依頼してくる内閣官房サイエンス・メディカル対策室の牧野巴は、ビジュアル的にそのまんま菜々緒! 原作でのドSな言動も「菜々緒に言ってもらいたい!」と思ってしまう。
現在発売している「イブニング」で、原作者の朱戸アオが、ドラマのメインビジュアルを漫画のキャラクターに置き換えたイラストを描いているが、牧野巴は菜々緒の顔面トレス状態だ。紐倉の助手・高家春馬を演じる濱田岳は、原作のイメージと比べると、だいぶちんちくりんでマイルドなイメージだが、S傾向の強い紐倉、牧野と組み合わせるにはちょうどいいバランスかもしれない。
ドラマ・オリジナルエピソードのクオリティーが気になる!
ドラマ版の第1話は、クルーズトリパノソーマという寄生虫によって引き起こされるシャーガス病がテーマ。『インハンド プロローグ』第1巻に収録されている「ネメシスの杖」を基にしたストーリーだと思われる(原作では、紐倉はまだ主人公ではないし、牧野や高家も登場していないが)。
前述の通り、原作のエピソードがまだ少ないため、今後はドラマオリジナルのエピソードもガンガン入ってきそうだ。公式サイトを見てみると「監修・指導・取材協力」ということで医療関係者の名前がズラズラーッと並んでおり「リアルさ」に関しては間違いなさそうだが、その上で人間ドラマを巧みに絡めた原作に負けないクオリティーを保てるのかというのにも注目していきたい。
早すぎるドラマ化が吉と出るか凶と出るか?
北村ヂン
文章からイラスト、漫画、映像まで、あの手この手でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうハイパーメディアライターTwitter
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4月2日20時57分よりTBS系列でゴールデン初放送。
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