懐かしの「赤チン」、ついに市販品1社のみに 製造も2020年で禁止 最後の赤チン製薬会社が語る思い
赤チンこと「マーキュロクロム液」が5月31日をもって日本薬局方から削除。関連してTwitterでは赤チンへの思いを振り返る声が相次いでいます。
年配の方の中には、保健室でひざ小僧に塗ってもらった人も多いかもしれません。“赤チン”の俗称で知られる薬「マーキュロクロム液」が、2019年5月31日をもって日本薬局方(厚生労働大臣が定めた医薬品の規格基準書)から削除されます。2020年12月31日には「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」によって国内での製造も規制される予定で、最盛期には100社ほどが生産していたという赤チンが、手に入れられなくなるのも時間の問題となってきました。
日本薬局方から外れた薬は現行の「日本薬局方」を記載したパッケージでは売れなくなり、あらためて承認審査を通さなければなりません。それでも2020年まで、マーキュロクロム液を局方外医薬品にリニューアルして製造販売し続けることを決めた製薬会社が、日本に1社だけ存在します。1953年に創業した三栄製薬(東京都世田谷区)です。国内最後の赤チンメーカー、その思いを取材しました。
5月で局方品の赤チンとさよなら Twitterで懐かしむ声
マーキュロクロム液は、有機水銀剤「マーキュロクロム」の1〜2%水溶液。粘膜・傷口の消毒に使用され、薬品の色が緑がかった赤褐色であったため「赤いヨードチンキ」の意で“赤チン”と呼ばれました(※ヨードチンキと化学的組成は全く別物)。
内藤記念くすり博物館の公式サイトによると日本薬局方に初めて収められたのは1939年。明治以降に衛生教育が進んで消毒や殺菌の重要性が認識されるや、家庭や小学校の保健室に手軽な消毒薬として常備されるようになりましたが、水銀公害が問題となった1960年代以降は製造過程で水銀の廃液が発生することから敬遠され、1973年には原料の国内生産が中止されます。
それでも原料を輸入することは禁止されていなかったため、愛用者に応える形で平成に入っても一部企業は製造販売を続けていました。2015年に政府が行った製造事業者2社へのヒアリングによれば、1社の年間製造量は1万6500〜3万本程度。薬局や保健室で赤チンを見る機会は激減しましたが、年配者を中心に多くの一般使用者がいたのです。
しかし2016年6月に公布された「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」で、マーキュロクロム液が2020年12月31日をもって製造禁止になることが決定。さらに2017年12月、厚生労働省は「マーキュロクロム」「マーキュロクロム液」の2つを2019年5月31日をもって日本薬局方から削除することを発表しました。
マーキュクロム液「コザカイ・M」を販売してきた小堺製薬(東京都墨田区)は局方品でなくなることが決定打となり、2018年12月に同薬の製造を中止。その後も出荷分は市場に出回っていましたが、外箱に「日本薬局方」を表記したままなので2019年6月以降は販売できなくなります。
これに伴いTwitterでは4月半ばから「赤チンが販売できなくなる」「5月に返品で棚から消える」と報告したツイートが注目を浴びることに。厳密には日本薬局方を掲げる赤チンのみが販売中止となるわけですが、Twitterではこれをきっかけに「まだ赤チン売っていたのか」「そうか、完全に無くなるのか」と驚く声や、「幼少の頃の膝はいつも赤チン色に染まってた」「ABCの替え歌懐かしい」と思い出を振り返る声が相次ぎました。
愛用者のため最後まで製造を決意
小堺製薬の製造中止によって、国内の赤チン製造事業者はマーキュロクロム液「サンエイ-S」を扱う三栄製薬のみとなりました。代表の藤森博昭さんに取材したところ、今後「サンエイ-S」は「日本薬局方」の表記を外した新しいパッケージにリニューアルし、2020年いっぱいまでは原料がある限り製造し続けるといいます。すでに4月から出荷も始め、各店頭では順次入れ替えている段階。
三栄製薬は戦後となる1953年に渋谷で創業、1958年に幡ヶ谷に工場を設置し、「サンエイ-S」を主力商品として製造販売してきました。最盛期となる1965年ごろは月10万本。現在は主力工場を長野県に移しながらも、赤チンは本社工場で月3000本ほど作り続けています。主な販売ルートは薬局への取り寄せ、Amazon.co.jpでのオンライン販売など。
現在は医療機器、化粧品などが主力で、赤チンの売上は1%にも満たないとのこと。それでもリニューアルしてまで期限ギリギリいっぱい販売し続けるのはなぜなのでしょうか。
「やはり60代・70代の赤チンファンのみなさんから、電話や手紙で『いつまでも作ってください』と激励をいただくからです。2020年12月の規制はしょうがないな、とは思いますが、これだけファンがいるのに作れなくなるのは大変さみしいです。それでも規制が始まるまでは愛用者のために製造し続けようと思います」(藤森さん)
参考:内藤記念くすり博物館「医薬品 いつもこどもの膝小僧に−マーキュロクロム−」、北多摩薬剤師会「昔はこんな薬もありました 10」
関連記事
- なぜ土屋鞄製造所のランドセルにアクセスが集中したのか―― 人気の秘訣と、創業者が語るかばんへの思い
7月1日にアクセスが集中し話題となった土屋鞄のランドセル、その裏側を探ります。 - 「さらっとしぼったオレンジ」復活と値上げの理由をダイドードリンコにさらっと聞いてみた
「青春の味」。なるほど確かに。 - 瓶入り「明治フルーツ」4月1日をもって生産終了 ファンからは「銭湯名物なくなる」と悲鳴
明治を取材しました - 「重さ2キロの腫瘍ができた」 闘病体験をハイテンションでつづった漫画が笑い呼ぶ
作者のメンタルの強さが半端ない。 - 昭和の駄菓子がまた1つ 「梅ジャム」が2017年末に製造終了、唯一の作り手が体力の限界で引退
1948年に紙芝居の駄菓子として生まれた、梅の花本舗の「梅ジャム」が製造終了に。 - 東京・新宿のカプセルホテル「グリーンプラザ新宿」が12月に営業終了 「便利だったから残念」「これからはどこに泊まれば」
営業終了の理由を聞いてみました。 - 「こち亀終了」編集部は当初難色も あえて「華々しい引き際」選んだ作者の“両さん愛”
日本中に衝撃を与えた「こち亀」連載終了。その発表が行われた、神田明神での絵巻物奉納式の様子をレポートします。 - 秋田港の「うどんそば自販機」、営業終了を惜しんで並ぶ客への店主の気づかいにほっこり 最終日には生放送も
3月31日が最終日。連日、名残を惜しむ人が訪れている。 - レトロさが人気:岩手県花巻市の老舗デパート「マルカン百貨店」が閉店へ 名物「箸で食べる特大ソフト」も見納めに
本当に歴史になってしまうのですなぁ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「マジで復活してくれ」 日清が7年前に終売した「人気カップ麺」→“まさかの現在”に「えっ?」「まじ?!」
-
「博物館レベルのレア物」 ハードオフに8万8000円で売っていた“驚がくの商品”に騒然 「PS5よりも高い」
-
七五三で刀を持っていた少年→20年後には…… “まさかの進化”に「好きなもの突き進んでかっこいい!」
-
ホテル従業員が教える「部屋でやっていいこと、よくないこと」 常識と言えば常識だけど……?
-
「これは切れるわ」 引き出しで見つけた“現金”の封筒を開けたら…… “ブチ切れ必至”なまさかの中身が話題「吹いたwww」「良いセンスw」
-
モグラに似てる“ヤベぇ虫”を、2カ月育ててみたら…… 感動の展開に「これはマジで凄い」「学術発表レベル」
-
野良猫が窓越しに「保護してください」と圧をかけ続け…… ひしひし感じる強い意志と表情に「かわいすぎるw」「視線がすごい」
-
余りがちなクリアファイル、“じゃないほう”の使い方で食器棚がまさかのスッキリ 「目からウロコ」「思いつかなかった!」と反響
-
「どうしてそうなった」 コスプレイヤーの「普段」→コスプレの“ありえない振れ幅”に思わず二度見 「ギャップで風邪ひいてる」「同一人物ですか!?」
-
「脳がバグるww」 顔面が3分の2になる“禁断の小顔メイク”を試したら……? “とんでもない仕上がり”が290万再生「腹痛い」「ほんとおもろいw」
- ネットで大絶賛「ブラウニー」にカビ発生 業務スーパーに7万箱出荷…… 運営会社が謝罪
- 「全く動けません」清水良太郎がフェスで救急搬送 事故動画で原因が明らかに「独りパイルドライバー」「これは本当に危ない!!」
- トラックがあおり運転し車線をふさいで停車…… SNSで拡散の動画、運転手の所属会社が謝罪
- 「ヤヴァすぎる!!」黒木啓司、超高級外車の納車を報告 新車価格は5000万円超 2023年にはフェラーリを2台購入
- そうはならんやろ “ドクロの絵”を芸術的に描いたら…… “まさかのオチ”に「傑作」の声【海外】
- 「ウソだろ?」 ハードオフに3万円で売っていた“衝撃の商品”に思わず二度見 「ヤバいことになってる」
- 「結局こういう弁当が一番旨い」 夫が妻に作った弁当に「最強すぎる!」「絶対美味しいビジュアル」
- “メンバー全員の契約違反”をライブ後に発表 異例の脱退騒動背景を公式が釈明「繋がり行為などではなく」
- 「言われる感覚全く分からない」 宮崎麗果、“第5子抱いた服装”に非難飛び……夫・黒木啓司は「俺が言われてるのかな?」
- 大沢たかお、広大プールを独り泳ぐ“バキバキ姿”が絵になり過ぎ 盛り上がる筋肉の上半身に「50代とは思えない」「彫刻みたい」
- “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
- 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
- 友人に「100円でもいらない」と酷評されたビーズ作家、再会して言われたのは…… 批判を糧にした作品が「もはや芸術品」と490万再生
- 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
- 「ま、まじか!!」 68歳島田紳助、驚きの最新姿 上地雄輔が2ショット公開 「確実に若返ってる」とネット衝撃
- 荒れ放題の庭を、3年間ひたすら草刈りし続けたら…… 感動のビフォーアフターに「劇的に変わってる」「素晴らしい」
- 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
- 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
- 「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
- 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声