こっそり嫁いびりをする姑、キレて道ばたで絶叫する嫁「あなたの番です」3話 人間関係が地獄絵図
メンチカツメンチカツメンチカツメンチカツメンチカツメンチカツメンチカツメンチカツメンチカツ……。
「あなたの番です」(新日曜ドラマよる10時30分)、今夜第4話。
「今日は朝から一日中、あなたのお母さんは絶え間なくメンチカツメンチカツメンチカツメンチカツメンチカツメンチカツメンチカツメンチカツメンチカツ…と唱えつづけておりました――」
「どうした!?」
「わたしはこのメンチカツ念仏がやむなら、もう何でもいいと必死でわらじ大のメンチカツを出しました――」 こっそり嫁いびりをする姑の幸子、キレて道ばたで絶叫する嫁。おろおろする旦那。地獄絵図である。
息子の顔を見ながら嫁をいびる姑
「その時のわたしの気持ちを少しは想像できるでしょうか―――――」 ためこんでいた思いが爆発して叫んでいるにもかかわらず、旦那は「大きな声を出すなよ、みっともない」と世間体を気にする始末。
すべてを呑み込んで、「いたらなくてすみません」と謝り、泣きながら他のものを買いにいく嫁。
502号室の赤池一家。嫁の美里を峯村リエ(大河ドラマ「真田丸」で「なりませぬ」の決めゼリフが印象に残る大蔵卿局を演じた名優。「ナイロン100℃」などの舞台、ドラマ多数出演)。旦那の吾郎を徳井優(「自転車キンクリート」など小劇場で活躍、「引越しのサカイ」のCMキャラクターでテレビ的にも知られ、テレビドラマにも多数出演)。姑役を大方斐紗子(劇団俳優座の付属養成所卒業、青年座をはじめ数々の舞台に立つ。劇場アニメ「太陽の王子 ホルスの大冒険」のホルスの声もこの人)。と、鉄壁の布陣。
姑は自分の息子の顔を見ながら嫁をいびる。旦那は姑がいびっているのを薄々感づいていながらも「気をつけろ」と嫁を注意する。どうしようもない嫁は「いたらなくて」と謝り続ける。姑はニヤリと笑うが、それ以上、自分の境遇をどうすることもできない。
本編でチラリチラリと映し出される地獄関係だけでも怖いのに、hulu配信のスピンオフ「扉の向こう」赤池家編では、じっくりとこの家庭が描かれて、想像していたよりも闇が深くてゾゾゾッとする。
スピンオフ「扉の向こう」赤池家編では
大手商社に勤めている吾郎は、愛情を込めてパセリを育てている。が、そのパセリに最近元気がない。
姑の幸子は、美里手づくりの青汁を飲み干して、わざとハシを落とす。美里がそれを拾うためにテーブルの下にもぐると、その頭にお茶をかける幸子。露骨に湯呑を落としたのを見ているのにもかかわらず母の幸子を怒れない吾郎。
悩みに悩んで吾郎は検索エンジンに「嫁 姑 仲良し」と入れると、「嫁 姑 仲良し 無理」「嫁 姑 仲良し 幻想」「嫁 姑 仲良し 不可能」と絶望的な検索予測ワードがズラッと並ぶ。
「嫁姑の仲良しブログ」を見つけて、のぞいてみるが、黒地に赤文字で書かれた姑に対する憎しみと狂気の書き込みがあふれてでてくる。自分の家の嫁姑問題はまだマシだなーと思う吾郎だが……。
わわわわ、殺したい人の名を書くゲームにそりゃ参加するよなーと思わせる恐怖の人間関係が描かれる。月並みだが、一番怖いのは人間だ、こじれて深みにはまっていく人間関係だ。
ストレートに考えると、赤池美里が殺したい人として書いた名前は、姑の赤池幸子だろうが、ここはもうひとつ奥をついて「赤池吾郎」の名を書いたのではないか。(と思ったけど、次回あらすじを読むと、浮田(田中要次)が引いた紙に「赤池幸子」と書かれていたことがわかるようだ)
第3話、タナカマサオが爆死
「お互いを殺したい人を殺すことでバレずらくなる」
第1話で、ほとんどの住民が嫌っていた管理人が死ぬ。第2話は、藤井淳史(片桐仁)が恨んでいたタレント医師のDr.山際(森岡豊)が殺される。そして第3話、藤井淳史が引いた「タナカマサオ」が殺されてしまった。交換殺人ゲームが連鎖しているのか。
「殺人教唆」「ルールはちゃんと守りましょう」「あなたの番です」と、藤井淳史のところに「次はお前が殺す番だ」と怪文書が次々と送られてきた。さらにバスタオルに包まれた頭部が自室の乾燥機で回っている!
メールが届き「ルール通りに行動しなければ、音声データとバスタオルを殺人の証拠として警察に届ける」と脅迫する動画が届く。しかし、藤井は「タナカマサオ」が誰なのか知らない。殺そうと思っても、殺すことすらできないのだ。
だが、医師である藤井のところに診察に来た男の名がタナカマサオ。しかも、住民のシンイー(金澤美穂)が勤めるブータン料理屋の店長だったのだ。ブータン料理屋の店長が日本人では繁盛しないということで、ドルジと偽名を名乗っていたが、本名タナカマサオ(名倉右喬)だったのである。
シンイーは、恋人のクオン(井阪郁巳)の不法滞在をネタにネチネチとタナカマサオに口説かれていたのだ。
口説くといえば、301号室の尾野幹葉(奈緒)。手塚翔太(田中圭)に連続プレゼント攻撃を実施中だ。第2話で「何でもいいから翔太の初めての相手になりたい」と言ったりして、オーガニックの手作りウェハースをプレゼント。第3話では、オーガニックの手作り雷おこしをプレゼントする。
管理人室にあった白いシュシュをつけている女性ということで何かやらかしている疑いは濃い。狂気を感じさせるキャラクターだが(というか、その狂気をまったく感じてない翔太も天然にちょっとヤバイ)、犯人よりも、殺したい人の紙に誰の名を書いたいのかがキーとなる人物ではないか。おそらく尾野幹葉は、翔太欲しさに「手塚菜奈」(原田知世)の名を書いたのだ。全体のクライマックスは、住民全員から命を狙われる手塚菜奈を救うために奮闘する手塚翔太が描かれるのではないか、と妄想する。
前回(「秋元康原案「あなたの番です」2話でわかった全真相、NGT48事件とも重なるメッセージから読み解く」)、管理人殺しの犯人は存在せずただの事故、だけど同調圧力のせいで交換殺人の連鎖が発生したと推理した。それを反証するできごとは起きていない。が、ちょっと気になるのはタナカマサオ殺しの描写。藤井が殺そうと決意したシーンから、シンイーが心配して電話する場面にカメラが切り替わり、ガス爆発でタナカマサオが死ぬ。ガスのホースが切断されたのだが、誰が切断したのかは描かれなかった。
わざわざ描かなかったということは、藤井は殺していないということか。藤井がやっぱり殺せないと諦めて帰った後に、藤井をつけていた誰かがガスのホースを切った。とすると、交換殺人の連鎖ではなく、黒幕がいるということだろうか……。
第4話、シンイーに脅迫状が届き、ついに翔太は殺人ゲームがあったことを知るようだ。
米光一成
ゲーム作家、デジタルハリウッド大学教授。代表作「ぷよぷよ」「はぁって言うゲーム」「はっきよいゲーム」等Twitter
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