秋元康原案「あなたの番です」2話でわかった全真相、NGT48事件とも重なるメッセージから読み解く
全真相、そして今後の展開予想を記す。
暴行事件に関して、山口真帆さんは個人として情報を発信し、運営会社と対立した。同調圧力を求めているように見えてしまったNGT48の運営会社の対応は、ファンを苛立たせた。
秋元康は、何もコメントしていない。
だが作家秋元康は、一貫して発しているメッセージがある。秋元康原案の「あなたの番です」(日曜よる10時30分)でも、そのメッセージを踏まえることで真相がはっきり見えてくる。NGTの事件についてのメッセージとも読み取ることができる。
「あなたの番です」すべての真相を見抜いた!
交換殺人ゲームのきっかけになった管理人はどうして死んだのか?
交換殺人を引き起こした黒幕は誰なのか?
何でも話し合える夫婦に描かれているのに、どうして手塚菜奈(原田知世)は交換殺人のことを手塚翔太(田中圭)に話さないのか。
手塚翔太(田中圭)がミステリーのオチをうっかり話してしまうという設定は、なんの伏線なのか?
すべて解き明かした。以下に、その全真相、そして今後の展開予想を記そう。
その前に。
「あなたの番です」が、山口真帆さんの事件に対するメッセージだというのは時系列的に無理があるという反論に答えておこう。もちろんドラマの企画は、この事件の起こる前にスタートしている。この事件を受けて、ドラマが企画されたわけではない。
その通りだ。だが、メッセージというものは、時系列にとらわれることない。秋元康は、欅坂46の「ガラスを割れ!」で、目の前のガラスを突き破れと少女に叫ばせた。空気を読むな、同調圧力に負けるな、やりたいことあきらめるなと若者を鼓舞した。
秋元康が、一貫して発しているメッセージがある。それは、普遍的な何が起きようと変わることないメッセージだ。だから、それが後から生み出された作品であろうとも、ある件に対するメッセージになりえるのだ。
基本的な物語の流れ
まず基本的な物語の流れを復習する。
第1話。マンションに引っ越してくる手塚菜奈(原田知世)と手塚翔太(田中圭)。手塚菜奈が15歳年上で、そのことを気にしているためにまだ婚姻届をだしていない。が、熱々の新婚っぷりだ。その日に、菜奈が出席した住民会はトンデモないものだった。
ただの雑談が、「殺したい人間がいる者同士が交換殺人をする」という話題になってしまう。
「死んでほしい人」をメモに書いて交換しようという提案に誰も反対できず、「ただの遊びだから」と「死んでほしい人メモ」の交換会が行われる。だが、その夜。管理人が死亡。マンションの掲示板に死んでほしい人メモ「管理人さん」が掲示される。
交換殺人ゲームのスタートである。
第2話のあらすじ「ルールはちゃんと守りましょう」
第2話。管理人は脳腫瘍だったことがわかり、自殺説も浮上。臨時住民会が開かれ、藤井淳史(片桐仁)は「死んでほしい人を殺してもらったんだから、その人も自分が引いた紙に書いてある人を殺さなければルール違反になりますよ」と言い出す。
藤井が書いた殺してほしい人物は、タレント医師の山際祐太郎(森岡豊)。大学の同期で、好きだった女性を取られ、たびたび馬鹿にされていたのだ。「どんどん殺したくなってきた」と力説する藤井の後ろのテレビが、山際の死を報道する。
藤井が受け取った殺してほしい人の名はタナカマサオ。誰だかもわからない。その彼のところに「ルールはちゃんと守りましょう」「あなたの番です」と次々と手紙やメッセージが届く。帰宅した藤井が乾燥機の奇妙な音に気づき、そこをのぞくと、男の頭部が!
管理人を殺したのは誰か?
管理人が死んだ状況をチェックしてみよう。パラボラアンテナのコードにからまって宙吊りになり、気を失っているところを手塚菜奈と手塚翔太に見つけられ、意識をとりもどし暴れたために落下し、死亡。
その後、マンションの掲示板に交換殺人メモ「管理人さん」が掲示される。このために交換殺人の1件目が起こったと判断し、メモに「管理人さん」と書いた人は、義務感で、もしくは自分が殺してほしい相手を殺してほしいがために殺人を犯すのだろう。
だが、管理人の死を「殺人だった」と断定していいのか?
「他殺」か「自殺」かしか問わない
第2話で、物語的に不自然な部分がある。管理人さんの死について、登場人物たちは「他殺」か「自殺」かしか問わない。これは不自然だ。
パラボラアンテナのコードにからまって宙吊りになっている状況から推論すると、ただの事故死だとも考えられる。つまり管理人は自分の職務に忠実に、マンションのパラボラアンテナを修理しようとしていた。夜だということもあって誤って、屋上から転落。パラボラアンテナのコードにからまって宙吊りになった。
そう考えてもいい。
あたかも「他殺」か「自殺」かしか選択肢がないように物語は展開する。「事故死」であることを視聴者に想起させないように仕向けている。
事故死だと考えると、交換殺人メモ「管理人さん」が貼られていたのは何故か。交換殺人メモ「管理人さん」を受け取った人物は殺していない。だが、メモを交換した直後に管理人が死んだ。これを利用しない手はない。管理人さんが死んだのを利用して、自分が殺したいと思っている人物を殺してもらうために、自分が受け取ったメモを掲示板に貼ったのだ。
物語のテーマから推理すると
繰り返し描かれるのは、マンション内の同調圧力だ。懇親会のお菓子代はカンパでいくらでもいいとしながら、202号室の黒沢紗和は「1000円以上入れないと後で何かちょっと言われたりします」ともらす。
交換殺人メモも、反対しようとした人もいたが、完全に拒絶できず、場の空気に流されてしまった結果だ。同調圧力に流されてしまう人々を描いたドラマなのだ。とすると、事件が起こってしまった主要な原因は「同調圧力」であるべきだろう。誰かが仕組んだという展開にするよりも「事故死で犯人などいなかったのに、マンション内の同調圧力のせいで連続殺人が巻き起こる」という皮肉な展開になるべきなのだ。
物語の構造から推理すると
このドラマは2クール続くことが宣言されている。だが、交換殺人ゲームに参加したのは13人。つまり殺されるのは13人以内。しかも「毎週、死にます」なので、交換殺人ゲームで毎週死んだとしても13話にしかならない。2クール26話だとすると、まだ半分だ。
つまり、「管理人の死が事故であり、そこから皮肉な連鎖で交換殺人が巻き起こった」という真相がわかるのは、ドラマの真ん中。第一部にすぎない。では、後半の展開はどうなるのだろうか。ここで、手塚翔太(田中圭)がミステリーのオチをうっかり話してしまうという設定が生きてくる。手塚翔太がミステリーのオチを話して、菜奈がちょっと怒って喧嘩した、なんてことがありそうだ。
そして、手塚菜奈は、「いかにも殺したい人なんていなさそう」な人物として描かれる。実際、第1話で、「殺したい人いなさそう」と藤井に言われる。そう。手塚菜奈には殺したい人などいないとしたら。だけど、目の前のガラスを割ることはできず、同調圧力に負けて、何らかの名前を書いてしまったとしたら。
誰の名を書くか。
まったくの赤の他人の名を書くのははばかられる。そして、つい最近、翔太にミステリーのオチを言われてしまった。その、ちょっとした仕返しに、冗談のつもりで、殺したいなんて微塵も思っていないのに、手塚翔太の名を書いていたとしたら……。
だから、翔太には、住民会の交換殺人メモのことは隠しているのだとしたら。
同調圧力との戦い
秋元康は、自分が自分らしくあるために同調圧力と戦う姿を描き続けてきた作家だ。それは同時に「自分が自分らしくある」とはどういうことか、「同調圧力」の正体はなにか、見えない真実に振り回される恐ろしさはどういったものか、そういったことにつながっていくだろう。
後半は、全員の口を塞ぐために交換殺人を完成せんとする同調圧力の化物とかした住民たち全員が、手塚翔太を殺そうとする展開になるのではないか。その魔の手から逃れるために戦う手塚菜奈と手塚翔太が描かれる。
と、自信満々に真相解明と展開予測を書いたが、当たっているかどうか。この予想が間違っていて、もっとすごい展開になることを望む。
米光一成
ゲーム作家、デジタルハリウッド大学教授。代表作「ぷよぷよ」「はぁって言うゲーム」「はっきよいゲーム」等Twitter
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