「どうしよう、脳が目覚めた」―― 作者の衝撃体験描いた実話漫画「交通事故で頭を強打したらどうなるか?」が壮絶【1〜3話試し読み】(1/3 ページ)
「ああーーこの世界は“健常者用”にできているのだ」
突然の事故で“普通の生活”から切り離される絶望、「私」ではない意識に体を動かされる奇妙な感覚、日常を取り戻した先に待つさらなる壁……。
事故で脳挫傷を負った作者によるノンフィクション漫画『交通事故で頭を強打したらどうなるか?』(KADOKAWA/著・大和ハジメ)が3月30日に発売されました。作者自身の強烈な体験を元につづられた同作は、人間という生き物がいかに脆く、そして強いかを教えてくれます。
作者の大和ハジメさんは、19歳でトラックにはねられ意識不明の重体に陥りました。奇跡的に病院で意識を取り戻した作者ですが、家族の話とおぼろげな記憶を照合するうちに奇妙な感覚に陥ります。「私は“私”でない時も動いていた?」
物語の前半では、作者が“19歳の意識”を取り戻すまでのエピソードが家族の視点から描かれます。事故から目覚めた当初、作者の精神は子供時代まで退行していました。幼児のように本能的に行動し、意識や記憶は喪失している。家族は動き回る作者に喜びながらも、言いようのない不安に苛まれていきます。
その後はっきりと意識が回復した作者は、事故にあう以前の“普通の生活”に戻ろうとします。ですが大学に戻った作者を待っていたのは、さらなる絶望でした。脳障害の影響で授業に全くついていけないのです。日本語を話しているはずの教授の言葉が理解できない。「ああーーこの世界は“健常者用”にできているのだ」と、作者は自分の置かれた状況をあらためて理解します。
それでも作者は立ち直り、必死の努力で大学を卒業。社会人として「とある目標」を叶えるために邁進していきます。最後には表題である「交通事故で頭を強打したらどうなるか?」という問いに対し、ひとつの答えを見出すのでした。
作者はあとがきで「事故のことはずっと考えないようにしていた。記憶にフタをし、目の前のことだけを考えて生きてきた」「そう、私は逃げてばかりだ。創作を始めた理由だって、そうしないと自分が潰れてしまうからにすぎない」と語っています。ですが事故にあったばかりの作者が幼児退行で心を守ったように、「逃走」もまた生命を守るため備わった機能にほかなりません。
交通事故により一瞬で人生を狂わされてしまう脆い肉体と、それでも営みを取り戻そうとするしなやかな精神。『交通事故で頭を強打したらどうなるか?』には、生物としての「人間」が抱える根源的な強さと弱さが描かれています。「もしも自分や、自分の大切な人が事故にあったら」と薄ら寒くなり、「どんな不幸に見舞われても何とかなるのかもしれない」と勇気が湧いてくる。そんな不思議な読後感が味わえる漫画です。
『交通事故で頭を強打したらどうなるか?』はKADOKAWAより書籍が発売しているほか、作者ホームページにて原作版が一部を除き無料公開されています。
『交通事故で頭を強打したらどうなるか?』1話〜3話試し読み
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