「わたし、定時で帰ります。」“帰れない”ではなく“帰らない”柄本時生の「もういいや、なんか疲れた」に共感 吉高由里子の「私たちには給料日がある」がしみる
「夢や希望はあるんですよね?」の質問に答えられない吾妻がつぶやきに胸が締め付けられた。
「わたし、定時で帰ります。」(TBS系)の第4話が5月7日に放送された。今回の主役・吾妻が口にした「夢がない」という告白には、多くの人が共感したのではないだろうか。
第4話あらすじ「私は給料日を楽しみに生きている」
福永清次(ユースケ・サンタマリア)は、常務・丸杉(岡部たかし)からひどいサービス残業をしている社員がいると忠告された。その社員とは吾妻徹(柄本時生)のこと。吾妻は深夜のオフィスで、まるで自宅にいるかのように過ごしていた。東山結衣(吉高由里子)らは非効率な仕事ぶりを本人に指摘するが、吾妻は聞く耳を持たない。そんな中、派遣デザイナーの桜宮彩奈(清水くるみ)が部署に配属される。桜宮が気になる吾妻はいいところを見せるべく結衣に相談し、仕事効率を向上させた。
ある日、吾妻は桜宮を食事に誘った。土壇場で吾妻は気後れし、そこに居合わせた結衣も誘われて行くことに。訪れたレストランのシェフは若くして自らの店を持つ夢をかなえた青年で、桜宮は目を輝かせてシェフの話に聞き入った。そして、「夢はないんですか?」と桜宮は吾妻に質問。圧倒された吾妻は、肩を落として帰宅した。
翌日、吾妻は午前半休を取った。その日は正午までにクライアントに納品しなければならないのに、前日、吾妻は誤ってテストサイトをアップしていた。この件は種田晃太郎(向井理)のフォローで事なきを得たが、福永から激怒された吾妻は気落ちし、オフィスに寝泊まりする元の生活に戻ってしまう。
心配した結衣が夜のオフィスに戻ると、そこにはやはり吾妻の姿があった。「なぜ家に帰らない?」と結衣に問われた吾妻は「家に帰ってもやることがない。家に1人でいるよりまし。何もない人生のことを考えるより気が紛れる」と告白する。そんな吾妻に「私は給料日を楽しみに生きている」「大きな夢じゃなくても、幸せを感じられることなら何だっていいんじゃないか」と語る結衣。後日、吾妻は会社帰りにコーヒーショップへ立ち寄って、豆と道具一式を購入した。
みんなが大志を抱いてるわけじゃない
初回からちょいちょい見切れていた吾妻。妙な存在感を放っていたので、彼を主役に据える今回のエピソードにはずっと期待していた。
今回、最も心に響いたのは、桜宮との食事を終えた吾妻がつぶやいた「もういいや、なんか疲れた」の一言だ。キャリアシートは未提出、目標欄に書くことが何も思い浮かばなかった吾妻。会社は目標の設定を義務付けるけれど、みんなが大志を抱いているわけじゃない。好きな女子から「夢や希望はあるんですよね?」と迫られ、思わず答えに窮してしまった吾妻。桜宮は桜宮で悪気はないはず。根っからのポジティブ志向の持ち主なだけ。吾妻は夢のない自分に引け目を感じ、同時に、価値観の相違で(勝手に)失恋気分に陥った。なんて、胸が締め付けられる一言だったか……。
「私たちには給料日がある。私はそれを楽しみにして生きてるよ」(結衣)
「夢を持とう」の価値観に押し潰されそうになった吾妻に、結衣が提示した価値観は新しかった。給料日があることなんて当然のはずなのに、どうして心にしみるのだろう。仕事の成功こそ生きがい、そんな人生観を持てない人たちにとって救いの言葉になるからだ。最大の楽しみは給料日、その日を糧に働いていく。そんな自分を肯定し、自分なりの幸せを見出す。夢を見つけられない人を優しく勇気付ける、新たな価値観だったと思う。
今回、吾妻はコーヒーという幸せを見つけた。希望を感じさせる変化だ。なんだかんだ、彼は一歩踏み出していた。
吾妻より晃太郎のほうが重症に見える
今回、吾妻と共に気になったのは晃太郎だ。
「報告遅れましたが、結婚決まりました」と、結衣から告げられた晃太郎。明らかに動揺していた。未練がある。でも、それ以上に、仕事に没頭し続ける自分と違い、別の男と幸せを掴み取ろうとしている元カノに置いてけぼりされる虚しさが彼からは見えたのだ。
結衣と交際していた頃に通った中華料理店へ訪れた晃太郎は、好物のタンメンを食べながらつぶやいた。
「いいんですかね、このままで……」
部下からの信頼は厚く、ハイスペックな晃太郎。なのに、吾妻より悩みが深く、重症に見えてしまったのだが。
「家に帰ってもやることがない。1人でいるよりはマシ」の吾妻がフィーチャーされた今回。彼は「帰らない」働き方を選ぶタイプだった。でも、現実には「帰りたいけど帰れない」というタイプのほうが多い。きっとこの先、「帰れない」苦しみも今作は描いてくれるはずである。期待したい。
1話見どころ
2話見どころ
3話見どころ
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