「その人の“良い部分”だけを抽出できれば、人間はもっと幸せになれる」 バーチャルライブアプリ「IRIAM」が目指すもの(1/2 ページ)
なぜ人はバーチャルなキャラクターに引かれるのか。バーチャルライブアプリ「IRIAM」を運営するZIZAIの塚本社長に聞きました。
架空のキャラクターになりきり、YouTubeやライブ配信アプリなどで活動する「バーチャルYouTuber(VTuber)」。その数はいまや8000人を超え、またスマートフォンだけで簡単にキャラクターになりきり、ライブ配信ができる支援サービスなども増えてきました。
バーチャルライブアプリ「IRIAM」もそういった支援サービスの1つ。「IRIAM」では150人以上の“Vライバー”たちが日夜配信を行っており、視聴者は配信中にさまざまな「ギフト」を送ることで、お気に入りのVライバーを支援することが可能となっています。「ギフト」はいわゆる“投げ銭”に相当するもので、運営元のZIZAIによれば、人気のVライバーはそれだけで食べていけるくらいの額を得ているともいいます。
バーチャルキャラクターは“仕事”になり得るのか、そしてなぜ人間はバーチャルなキャラクターに引かれ、バーチャルなキャラクターになろうとするのか。ねとらぼでは今回、ZIZAIの代表取締役CEO、塚本大地氏に取材。インタビューの中で見えてきたのは、人類が持つ「キャラクターになって表現すること」に対する根源的な欲求でした。
(聞き手:伊藤誠之介)
1カ月に20〜30人が、新たに“Vライバー”として配信デビューしている
――いま「IRIAM」で配信しているVライバーは何人くらいですか?
塚本氏:活動頻度は人によりますが、今は全部で150名くらいが配信できるようになっています(※編注:取材時点)
――サイトに募集フォームがありますが、誰でもすぐ配信者になれるわけではないんですよね。
塚本氏:募集という形はとっていますが、現状では希望する全員が配信できるだけの受け皿がまだないので、一定の基準に達している方に絞らせていただいている、くらいの感じですね。
――月にどれくらいの応募がありますか。
塚本氏:1月あたり100〜200名くらいで、その中から月によるんですが、今は20〜60名くらいの方がVライバーさんとしてデビューしています。潜在的な希望者はもっといると思っていて、今後はさらに増えていくと思います。
――キャラクターのイラストは自前で用意する必要がある?
塚本氏:細かい話をすると色々あるのですが、これは大きく2通りのパターンがあって、1つはすでに他所でVTuberとしてデビューしていたり、キャラクターとして活動していたりする場合。この場合はそのキャラクターを使ってそのまま配信していただくことが多いです。
もう1つは今までにキャラクターとして活動したことがないパターン。この場合はこちらでイラストを用意して、Live 2Dの動きなども調整したりしてデビューを支援する形になっています。
――キャラクターの性格や特徴なども一緒に考えたりはしますか。
塚本氏:いえ、プロデュースのようなことは一切していません。あくまでイラストだけですね。Vライバーさんになりたいという方々が、自分自身が出したいと思う個性を自分で引き出し、そこにファンがつくというのが僕は理想だと思っています。「IRIAM」はタレント事務所ではなくプラットフォームなので、個別にがっつりとしたプロデュースを行うことは今はありません。
――今後も募集という形は続ける予定ですか。
塚本氏:いずれは応募形式ではなくて、誰でも「やりたい」と思った瞬間にパッと配信できるような形にしていきたいと思っています。例えばキャラメイクを追加したり、イラストを用意するだけで配信ができる機能を用意したりとか。
「キャラクターが自分のすぐ近くにいる」という体験を重視
――他のライブ配信アプリと比べて、「IRIAM」の強みはどんなところですか。
塚本氏:外から見ると、機能面では他のライブ配信アプリとあまり変わらないように見えるかもしれません。ただ、運営している側としてはまったく別物だと思っていて、「IRIAM」は特に“コミュニケーション”と“コミュニティー”に重きを置いた作りになっています。
――具体的にはどんなところが違うんでしょう。
塚本氏:技術的な話をすると、「IRIAM」では“モーションライブ方式”という仕組みを採用しています。動画を転送するのではなく、キャラクターのモーション情報を転送して、それをアプリ側で再生するというやり方ですね。これだと動画に比べて通信量もかかりませんし、遅延もより少なくなります。うっかり“中の人”が写って顔バレしてしまう、といったこともありません。
――ライブ配信サービスというより、ゲームのオンライン対戦みたいな仕組みですね。
塚本氏:特に「遅延が少ない」というのは、コミュニケーションの質にものすごく影響してくるんです。例えばテレビのニュースなどで海外と中継をつなぐと、向こうのアナウンサーが2秒くらい遅れて反応したりしますよね。あれはコミュニケーションという観点で見るとものすごく気持ち悪く感じませんか?
――ネットの生配信でも、実際の配信と映像ってけっこうタイムラグがありますよね。向こうにコメントが届いた時にはもう次の話題に移っていたり。
塚本氏:そうなんです。これに対し「IRIAM」の遅延は現状で平均0.3秒くらい。これは電話の音声通話よりも遅延が少ない。
――ほぼリアルタイムで配信者とコミュニケーションができると。
塚本氏:今ちょうど配信しているこの子にギフトを贈ってみましょうか。レスポンスの早さが分かると思います。
(アプリを立ち上げ、配信中のVライバーにギフトを贈る塚本氏)
――おお、すぐに反応してくれましたね。
塚本氏:この体験の価値が高いんですよ。
それからもう1つ、「IRIAM」には“画質”という概念がありません。動画を転送しているわけではないので、圧縮による映像の劣化がないんですよ。絵師さんが描いたイラストそのままの、いちばんキレイな状態でキャラクターを見ることができます。
――ああ、そうか、それはそうですね。
塚本氏:同じキャラクターでも、イラストそのままの美しいキャラと、劣化してザラザラになったキャラとでは、見ている側の気持ちが全然違うんですよ。この髪の毛のツヤの感じとか、動画では絶対に伝わらないですよね。絵が細部まで見えることによって、「キャラクターが自分のすぐ近くにいる」と感じられるんです。
「ちゃんと配信できる人」なら、Vライバーの活動だけで生活できる
――もう少し突っ込んで、Vライバーの“お金”の話についてもお聞きしたいのですが、ランキングを見ると、視聴者から送られたギフトの総ポイントが表示されていますよね。これはそのまま、1ポイント1円ということですか?
塚本氏:そういうことです。
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