鎌倉「銭洗弁天」をまるごとVR化……! 写真から制作した“建築デジタルアーカイブの試み”が驚きの再現度
文化的空間をデータとして残す技術。
神奈川県・鎌倉にある有名な神社「銭洗弁天(ぜにあらいべんてん)」を、カメラの写真から丸ごとVR化した「銭洗弁天VR」が作られ話題になっています。自由に歩き回れるのすごい……!
正式名称は「銭洗弁財天 宇賀福神社」で、四方を崖に囲まれた特別な雰囲気が漂う同神社。銭洗弁天VRでは、その入口となるトンネルから境内全域が自由に歩き回れるようになっており、お金を洗うと金運アップの御利益があるとされる「銭洗水」が湧き出る奥宮(岩窟)にも入れたりと、簡易的な観光気分を味わえる内容となっています。
公開したのは、建築に関連したVR等のプロジェクトに携わる、龍 lilea(藤原龍/@lileaLab)さん。今回のVR化は、現在ある建築物・空間をデータとして保存する「建築デジタルアーカイブ」の試みとして行われ、「フォトグラメトリ」と呼ばれる手法に挑戦。その知見を共有できればという思いから制作したとのこと。
フォトグラメトリ(写真測量法)は、複数枚の写真から3Dオブジェクトを作成する技術。龍 lileaさんによると、銭洗弁天VRでは3500枚近い写真から、写真計測用ソフト「3DF Zephyr」を使用して3D化。3月末から撮影を開始し、初めての試みということもあり、何度もトライアンドエラーを繰り返した結果、完成までには2カ月ほどかかったそうです。
詳しい作り方については、「銭洗弁天VR」も公開されている、VR空間が作れるWebサービス「STYLY」のMagazineにて連載されています。それによると、3D化したときに破綻しないよう、できるだけ一筆書きルートで撮影。他にも環境が変わる前に素早く撮り終えることが重要だったりと、魔法のようにも感じられる“VR化”の裏側を知ることができます。
龍 lileaさんが今回の制作時に苦労したのは最初のトンネル部分で、暗い上に似た写真が繰り返されるため「フォトグラメトリ処理(※厳密にはカメラ位置の算出パート)」がなかなかうまくいかなかったとのこと。逆にうまくいったのは、メインともいえる奥宮を破綻なくきれいに再現できた点。ちなみにVRChat版では柄杓やザルを手に持つことも可能ですが、アップデートで“銭”を追加して本当に「銭洗い」ができるといいなと構想しているそうです。改めてVRの可能性を感じる……!
今後の課題は、今回敷地を12分割して行った3D化時の処理の仕方で、理想は一括処理をしたかったと龍 lileaさん。しかし、一括処理だと極めて膨大な時間がかかるため、「トライアンドエラーするにも1回あたり20時間以上かかってしまい最適解にたどり着けなかった」と振り返っています。
動画が投稿されたTwitterでは、実際に訪れたことがあるユーザーから「再現度高い!」「まんまだ」と驚く声が上がり、また「私は車いすに乗ってる関係で行けない場所も多いので、こうした試みは行けない場所に行けるという希望があってステキだと思います」といった声、さらにVR動画をきっかけに銭洗弁天に興味を持つ海外ユーザーの声など、さまざまな反響を呼んでいます。
作者情報
龍 lilea(藤原龍/@lileaLab)さん
xR(※VR/AR/MRなどの総称)と建築の可能性を探るコミュニティー「xRArchi」に所属。同コミュニティーでは「VR建築コンテスト」や、VR空間デザインコンテスト「VR Architecture Award(VRAA)」を主催。
6月30日まで募集中のフォトグラメトリを使った作品コンテスト「STYLY Photogrammetry Award 2019」にて審査員を務める。
画像提供:龍 lilea(@lileaLab)さん
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