ミュージアムショップが面白い! 気になるグッズまとめや作り手へのインタビューも充実な同人誌『MUSEUM GOODS PASSPORT』司書みさきの同人誌レビューノート

「作品に出会ったときの感動を持ち帰る」というすてきな考え方。

» 2019年08月11日 12時00分 公開
[みさきねとらぼ]
同人誌 本棚 図書館 司書 コミケ

 先日、照りつける日差しのもとを歩いてイラストの展示会を見に行ってきました。蝉の声を耳にして、アスファルトの照り返しを感じながらなんとか入口にたどりついて、会場で作品の前に立った途端、ふっと暑さを忘れました。作品の力ってすごいですね。そして展示を見て回った後の、グッズのコーナーになると「わっ!」と気持ちが楽しくなって。今回は、そんな美術館や博物館のミュージアムグッズに着目したご本です。

今回紹介する同人誌

『MUSEUM GOODS PASSPORT ミュージアムグッズパスポート』Vol.1 Vol.2 A5 16ページ 表紙・本文カラー

作者:大澤夏美


同人誌 図書館 司書 美術館 ミュージアム 思わず見せて歩きたくなるような、カラフルでかわいい表紙です

夏の旅先で出会うのもいいかも! 第1弾は北海道のミュージアムグッズに注目

 こちらの同人誌は、美術館の一画で販売されているグッズに着目した内容です。巻頭はミュージアムグッズやショップなどに携わる方のインタビューからスタート。そして世の中にあまたあるグッズからこれは、というグッズの紹介があり、ラストはグッズを作る作家さんにもスポットを当てていらっしゃいます。

 Vol.1では作者さんの地元だと言う札幌にゆかりのあるショップ、グッズを中心にされています。例えば巻頭の北海道大学総合博物館のショップ「ぽとろ」は、とってもおしゃれな雰囲気で、本物のアンモナイトから型を取ったというキャンドルアンモナイトもすてき。そしてそんなショップの設立の経緯、学生さんの企画についてなど、ちょっと立ち寄っただけでは分からない、商品の狙いやショップの裏側を読むことができます。背景を知ると、その商品やお店がぐっと身近になりますね。

同人誌 図書館 司書 美術館 ミュージアム ふんわりとした黄色のキャンドルアンモナイトの他にもオリジナルグッズがたくさん

 他にも美術館を中心に文学館や博物館、動物園までを範囲に入れて、さまざまなショップとグッズが紹介されていて、その多様さを知ると、旅先で寄ってみたいな、なんて気分も高まります。美術館や博物館がお出かけの目的になるのはもちろん、そこに併設されているショップもお楽しみの一つに入るなんて、一石二鳥、旅の楽しさ倍増ですね。

同人誌 図書館 司書 美術館 ミュージアム かわいかったり、すっきりとデザインされていたり、どれも思わず目を引くグッズたちです

同人誌 図書館 司書 美術館 ミュージアム

インタビューも充実。「作品に出会ったときの感動を持ち帰る」グッズづくり

 Vol.2では、全国へと対象を広げてグッズを紹介。またミュージアムグッズの作り手である開永一郎氏(East)にインタビューされていますが、その中の一言にはっとしました。それは、ミュージアムショップ、グッズにおいて大切にしていることは、という問いへの答えで、

(前略)どうしたら作品の良さのほんの一部だけでも持ち帰ることが出来るかとか、どういう方法で作品に出会った時に感じた感動を記憶に留める手伝いができるかとか。その為に、実はとても沢山の工夫をしています”(『MUSEUM GOODS PASSPORT ミュージアムグッズパスポート』Vol.2より)


とありました。作品そのものに敬意をはらうのはもちろん、手にして持ち帰った後にまでその作品の良さを伝えたいという視点に胸を突かれます。

 そしてこのように印象に残る言葉がこうして本に残されるまでには、お相手を決め、アポイントを取り、インタビューをしてまとめて……という数々の段階を踏んで形にされた、作者さんのミュージアムグッズへの思いがあり、その情熱がこのご本全体を照らしているのを感じます。

同人誌 図書館 司書 美術館 ミュージアム 「ミュージアムショップのグッズは誰が作っているの?」という疑問からインタビューがはじまります

グッズの良さの奥にある、作り手の気持ちに光を当てて

 作者さんはミュージアムグッズが好きすぎてコレクションしたグッズは500点を超えるのだとか。大学ではデザインを学び、博物館経営論をベースとしてミュージアムグッズの研究に取り組まれたのだそうです。現在はフリーの愛好家さんとして活動されているそうです。

 ミュージアムグッズが好き、ミュージアムショップって面白いですよね! という作者さんの声があふれるようなご本ですが、ただの商品紹介にとどまらず、「なぜこのグッズはこんなにすてきなのか」「手にとってみたくなる魅力はどこにあるの?」と一歩踏み込んで、作り手の気持ちにまで目を配っているのが、読み手の私もぐぐっと楽しい世界の内側にひっぱられるみたいです。

 全ページカラー、とってもきれいな写真も豊富、そして程良い厚みで手触りのいい紙に印刷されていて、読みながらページに触れる指先すらもちょっと心浮き立つような。そんな細やかな部分にまで気を配られたご本、それはミュージアムグッズが作品の感動を持ちかえる宝物のかけらだとしたら、このご本は宝へと誘う旅先案内人ですね。

 すてきな作品と、すてきなグッズに出会える旅へと、パスポートを握って、みなさま良き夏の休暇をお過ごしください!

同人誌 図書館 司書 美術館 ミュージアム 各地のマスキングテープ特集は個性際立ちます。ダイオウイカのマステ、どう使いましょう?

サークル情報

サークル名:百物気

Webサイト:http://momonoke.wpblog.jp/

Twitter:@momonokeMuseum

Instagram:@momonoke

現在入手できる場所:ネットショップ、北海道大学総合博物館内ミュージアムショップ ぽとろ(現地での販売のみ)

次回イベント参加予定:「NEVER MIND THE BOOKS 2019」2019年9月1日(日)さっぽろテレビ塔2F



今週の余談

 みなさま、夏を満喫されてらっしゃるでしょうか。夏の大型イベント真っ最中! という方も多いでしょうか。手に入れたお宝を、おうちでのんびり眺める至福のひとときを目指して、暑さに負けずに過ごしたいですね!

みさき紹介文

 図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/19/news150.jpg 「情報を漏らされ振り回され……」とモデラー“限界声明” Vtuberのモデル使用権を剥奪 「もう支えられない」「全サポート終了」
  2. /nl/articles/2411/20/news028.jpg 「うどん屋としてあるまじきミス」→臨時休業 まさかの“残念すぎる理由”に19万いいね 「今日だけパン屋さんになりませんか」
  3. /nl/articles/2411/20/news224.jpg “ドームでライブ中”に「76万円の指輪紛失」→2日後まさかの展開に “持ち主”三代目JSBメンバー「誰なのか探しています」
  4. /nl/articles/2411/19/news169.jpg 高畑充希と結婚の岡田将生、インスタ投稿めぐり“思わぬ議論”に 「わたしも思ってた」「普通に考えて……」
  5. /nl/articles/2411/20/news031.jpg 「本当に同じ人!?」 幼少期からイボをいじられていた男性→美容師の“お任せカット”が衝撃 「めちゃくちゃ大変身」
  6. /nl/articles/2411/19/news022.jpg 「おててだったのかぁああああ」「同じ解釈の人いた笑笑」 ピカチュウの顔が“こう見えた”再現イラストに共感続々、464万表示
  7. /nl/articles/2411/20/news042.jpg 「腹筋崩壊」 ハスキーをシャンプー&パックしたら…… “予想外のハプニング”に「こ〜れは大変だわ」「沼にでも落ちたのかとwww」
  8. /nl/articles/2411/20/news216.jpg “歌姫”ののちゃん、6歳現在の姿に驚きの声「あれっ!?」「ビックリしてます!」 2歳で「童謡こどもの歌コンクール」銀賞受賞
  9. /nl/articles/2411/20/news041.jpg 黄ばみのある68年前のウエディングドレスを修復すると…… 生まれ変わった姿に「泣いた」「受け継ぐ価値のあるドレス」
  10. /nl/articles/2411/18/news107.jpg 走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた