レビュー
» 2019年07月14日 12時00分 公開

「サラリーマンと土器はお似合いだと思う」 縄文時代が日常にあるBL、同人誌マンガ『縄文だいすき』に土器土器する司書みさきの同人誌レビューノート

緩い作風だけど情報量が多い。

[みさき,ねとらぼ]
同人誌 本棚 図書館 司書 コミケ

 雨ですね。2019年は梅雨が長いようで、雨雲が毎日空を覆っています。新調した傘も大活躍してくれています。最近は通気性の良いレインコートや、おしゃれな長靴もたくさん見掛けるようになりました。日々を過ごしているうちに、どんどん便利になっていきますね。傘やレインコートがない頃はどうやって雨をしのいでいたのかしら……と思いを巡らせます。今回は傘やレインコートがまだなかった時代、縄文時代に心ひかれる作者さんが描かれた創作マンガをレビューします。

今回紹介する同人誌

『縄文だいすき』A5 32ページ 表紙1色刷り・本文モノクロ

『なんてったって縄文人』A5 40ページ 表紙1色刷り・本文モノクロ

作者:歯茎


同人誌 図書館 司書 縄文時代同人誌 図書館 司書 縄文時代 『縄文だいすき』と『なんてったって縄文人』

貝塚はデートスポット。縄文が日常にあるBL

 『縄文だいすき』は会社員の友野さんと、同じ会社の営業マン甲斐さんの、男性2人の現代の日常を描いたマンガです。縄文時代のことが好きなのは甲斐さんの方で、街中を歩いているときに貝塚を発見して目を輝かせる程の熱中っぷり。ですが、一方の友野さんも実は元カノが縄文時代好きだったという、縄文になかなかのご縁があるタイプです。

同人誌 図書館 司書 縄文時代 貝塚についつい目を輝かせる甲斐さん

同人誌 図書館 司書 縄文時代 元カノの置いて行った土器を糠漬けのタッパ入れとして活用する友野さん

 ここまでレビューを書いた時点で、縄文という文字が頻出しているのですが、作中にも縄文時代に関することや土器が随所に織り込まれています。例えば千葉県にあるマスコットキャラがかわいくてモノレールで行けるデートスポットと言えば……加曽利貝塚! 加曽利E式土器を頭に乗せたマスコットの“かそりーぬ”や千葉モノレールで行けることを嬉々(きき)として説明する甲斐さんの笑顔がいいです。大好きな友野さんと大好きな貝塚に出掛ける予定ができて、なんともうれしそうな甲斐さん。よかったねよかったね! と声をかけたいくらい、ふたりの恋愛はまた始まったばかりで、そこには常に縄文時代のことが絡んでいるのです。

ときめく出会いも、男女のなれそめも、土器と文化が絡んで……

 ご本の中では友野さんの元カノ話や、甲斐さんの学生時代のエピソードといった番外編的なお話も語られますが、描かれるのは2人ばかりではありません。

 なぜかタイムスリップで縄文時代に行ってしまい「縄文中期のムラは見方によっては夏フェスの会場みたい」と感想を述べるお姉さんは、すてきな縄文人にときめきかけるも、抜歯された姿を見て、現代感覚とのギャップに涙。

同人誌 図書館 司書 縄文時代 縄文時代の抜歯は麻酔なしで歯を抜くため、痛みに耐える強さの象徴とのこと……

 出張に向かいながら「やっぱ先輩の奥さん 土器作りうまいっすねー」と語る、謎シチュエーションのサラリーマンは、会社受付のすてきなお嬢さん(シンプルな土器がうまい)に一目でひかれて……と、いくつかの短編でご本が編まれています。それらのテーマを探すとしたら、ほのかな恋心、でしょうか。誰かが誰かを好きになるという、優しい気持ちをベースにしつつも、そこには必ず縄文時代が顔を出します。きっと作者さんは毎日毎日、土器と貝塚と土偶のことを考えて生活してらっしゃるに違いない! と言いたくなるような、縄文ネタの数々なんです。

同人誌 図書館 司書 縄文時代 この出会いが縄文と弥生の融合へ……?

縄文に恋する人たちは、みんなほんわか人間模様

 BLに限らず描かれる短いマンガは、どれも身近な現代の生活が出発点で、登場人物たちの気取ったところのない率直なゆるさが、力を抜いて読むことができます。そのなかにしっかりと主張される縄文時代ネタ。でもそれが決してくどくなく、意外にも日常にマッチしているように思えるのは作風が大きいのかもしれません。

 さっくりした線、テンポの良い短めのセリフが行きかう会話、さっぱりめの画面などが、ちりばめられた縄文ネタとちょうどいいバランスになって、ちょっとした緩やかなほほえましさと、本来ならとっぴな存在になってしまいそうな土器や貝塚とを上手にミックスしているのではないでしょうか。

 そしてあとがきに「サラリーマンと土器はお似合いだと思う」と、さらっと提案してしまう作者さん。何げなく書かれた短い文章故に、全く未知の組合せのものでありながら頭の中で何度も練られたものがぽろっと漏れてしまった、本気故の情念を感じます。縄文時代への興味と愛情がそこここににじんでいるのがまた味わい深く、ほのぼのする1冊です。

同人誌 図書館 司書 縄文時代 貝塚は夢の国。縄文時代のことが楽しくて楽しくて! という顔がとってもかわいいです

サークル情報

サークル名:千代とミドリ

Pixiv:はぐき

次回参加予定イベント:J.GARDEN47申し込み中



今週の余談

 ふと手が空いたときに、編み物をしています。ほんの少しの隙間に手を動かすだけで気分転換できて、すごく面白いですよー。夏っぽい素材のバッグが完成しました! 気分転換のつもりが熱中しすぎ……に注意ですね。

みさき紹介文

 図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10

  1. /nl/articles/2206/27/news056.jpg ちょっと窓を閉めただけで、ゴールデンレトリバーの表情が…… この世の終わりのようなお顔が抱きしめたくなる
  2. /nl/articles/2206/26/news057.jpg 「これだけでそうとう電気代が下がるはず」 シャープ直伝“エアコンフィルターの掃除方法”がためになる
  3. /nl/articles/2206/27/news105.jpg 原日出子、夫・渡辺裕之さん急逝から2カ月弱の心境明かす 「7月に入ったら ボチボチお仕事も再開できるかな…」
  4. /nl/articles/2206/26/news010.jpg 大好きなおじいちゃんと留守番をするシェパード、良い子にしてたけど…… 飼い主帰宅ではしゃぐ姿に「やっぱりさみしかったんだね」
  5. /nl/articles/2206/27/news110.jpg UTA、11年前に撮影の父・本木雅弘&母&弟のエモい3ショットに反響 「両親最強」「カッコ良すぎる全てが」
  6. /nl/articles/2206/27/news055.jpg 帰宅したら自作のシャア専用ザクがバラバラに壊れていて絶望 「ガンダムにやられた?」と悲しみの声集まる
  7. /nl/articles/2206/26/news006.jpg 「ニコニコ動画ってサイトが次世代のYouTubeになるかも!」インターネット老人が見たツイートがショックすぎると話題に
  8. /nl/articles/2206/24/news038.jpg 元ダンス&ボーカルグループの小湊よつ葉、SODstarデビューの理由 さらけ出した今だから言える「完璧じゃない自分」
  9. /nl/articles/2206/20/news164.jpg 渡辺磨裕美、急逝した父・渡辺裕之さんとの2ショット 英語で決意つづる「私は自信をもって前に進みます」
  10. /nl/articles/2206/27/news190.jpg 控えめに言って最高だ! 檜山沙耶キャスター、『SPY×FAMILY』ヨル・フォージャーのコスプレに挑戦

先週の総合アクセスTOP10

  1. ダルビッシュ有&聖子、14歳息子のピッチングがすでに大物 「球速も相当出てる」「アスリート遺伝子スゴい」
  2. 大家に「何でもしていい」と言われた結果 → 台所が隠れ家バー風に! DIYでリフォームした部屋の変化に驚きの声
  3. 中谷美紀、外国人夫の連れ子や元妻と楽しい団らん 国籍や目の色など何もかも違えど「これでも家族」
  4. デヴィ夫人、15歳の愛孫・キランさんが社交界デビュー 「山高帽にモーニング」華麗なる正装姿が超ハンサム
  5. 法隆寺がクラファンを開始 わずか1日で目標金額2000万円を達成「予想もしていなかった早さ」
  6. 元保護子猫に、ずっと欲しがっていたぬいぐるみをあげたら…… 予想外の反応に「人間の子供みたい!」の声
  7. 7歳息子が初おつかいに行ったときのレシート、よく見ると…… ママへの愛がつまったエピソードに「泣ける」の声
  8. 才賀紀左衛門、“親密な女性”の初顔出しショット公開 パッチリした目にスッキリした鼻筋で「想像通り美しい」「綺麗な方!」
  9. 愛犬に「子猫が大変です!!」と呼び出された飼い主、ついて行くと…… まさかの“無免許運転”発覚に「かわいすぎるw」
  10. 見事な「赤富士」を捉えた山中湖のライブカメラ映像に驚きと感動の声 葛飾北斎「凱風快晴」のような絶景……!

先月の総合アクセスTOP10

  1. この写真の中に1人の自衛隊員が隠れています 自衛隊が出したクイズが難問すぎる……「答え見ても分からない」と人気
  2. フワちゃん、指原莉乃同乗のクルマで事故 瞬間を伝える動画が「予想の10倍ぶつけてる」「笑い事ではない」と物議
  3. 人気動画ジャンル「ゆっくり茶番劇」を第三者が商標登録し年10万円のライセンス契約を求める ZUNさん「法律に詳しい方に確認します」
  4. この写真の中に2人の狙撃手が隠れています 陸自が出したクイズが難しすぎて人気 まじで分からん!
  5. 華原朋美、“隠し子”巡る夫の虚言癖に怒り「私はだまされて結婚」 家を飛び出した親に2歳息子も「もうパパとはいわなくなりました」
  6. 誰にもバレずに20年 別荘を解体中にバスルームから“とんでもないモノ”が見つかる 「わけがわからない」と困惑
  7. 名倉潤、妻・渡辺満里奈との結婚17周年に“NY新婚旅行”ショット 「妻には感謝しかありません」と愛のメッセージも
  8. 植毛手術のいしだ壱成、イメチェンした“さっぱり短髪”が好評 「凄く似合ってます」「短い方が絶対いい」
  9. 「ビビるくらい目が覚める」「生活クオリティ上がった」 品薄続く「ヤクルト1000」なぜ、いつから人気に? 「悪夢を見る」ウワサについても聞いてみた
  10. 渡辺裕之、66歳バースデーで息子と2ショット 合同誕生日会に「すごいお料理とケーキ」「イケメン息子さん」