一番のSEO施策は「いいサイトを作ること」 SEO会社のクヌギが自社メディアの記事に本気を出しすぎている理由
「SEO施策をしないことが究極のSEO」という真理。
ネットに少し詳しい人なら一度は「SEO(Search Engine Optimization)」という言葉を聞いたことがあると思います。SEOとは「検索エンジン最適化」。簡単に言えば、Googleなどで検索した際にそのサイトが上位に表示されるように工夫する取り組みです。
無数のWebサイトが存在する現在、SEOはWebサイト運営で非常に重要と言われています。そのためSEO施策を専門に行う業者も多く存在しており、今回紹介する株式会社クヌギもそんなSEOコンサルティングを得意とする会社のひとつです。
クヌギでは自社のSEO施策をテストする目的で自社メディアを運営しているのですが、なぜかそのメディアの担当者が「SEOには特に興味ない」「いい記事を書くことが一番のSEO」と言っている、というのが今回のお話になります。何を言っているのかわからないかもしれませんが、ちゃんと話を聞くとものすごく納得できるのでネットを愛する皆さん、ぜひご一読ください。
というわけでクヌギのメディア運営に関わっている取締役、石川真太郎さんにお話を聞いてきました。
「ユーザーのためになる記事を書くのが一番のSEO」
――そもそも会社がなぜ自社でメディアを運営しているんですか?
石川さん:SEOコンサルといっても新しく発表された施策をいきなりクライアントに進めるってなかなか難しいんですよ。でも自社メディアを運営する中で成功した施策であれば「こういう成功事例があります」って説得力を持って伝えられますよね。最初はそういう施策を試すために始めた、というのがきっかけです。
――なるほど。他のSEO会社でもこういう取り組みはやってるんですか?
石川さん:珍しい事例ではないですね。コンサルしかやらないというところもありますけど。
――基本的な部分なんですけど、SEO施策って具体的にはどういうことをやるんでしょう。
石川さん:SEO施策って主に「内部施策のサイト構造」「外部施策のサイテーション集め」「コンテンツ施策の記事制作」の3つに分かれるんです。内部に関しては検索に引っかかりやすいサイトの仕組みになるよう直すような作業です。また、外部に関してはサイトが有名になり言及されるようなPR施策なので、イメージしやすいのはコンテンツ施策の記事制作の部分かもしれません。
――めちゃくちゃ偏見で恐縮なんですけど、「1記事何千文字以上書きましょう」とか「キーワードを何回使いましょう」とかそういう無意味なことをするイメージがあるんですが……。
石川さん:わかりますわかります! 「目次」を入れたら検索順位が上がるぞ、みたいなよくわからない都市伝説みたいなのありますよね(笑)。
――それです……! あれって実際効果あるんですか?
石川さん:「絶対違うだろ」と思いつつ一応最初はそういうことも実験としてやってみたりはしました。結論として、記事に関しては効果ないですね。そもそも、メディアの記事が上位に表示されるには、記事がユーザーの悩みを解決するものであるか、被リンクが多いとかの要因のほうがずっと大きいです。
――それはGoogleが公式に「こういう基準です」ってはっきり示してるんですか?
石川さん:検索の品質を評価するガイドラインというものがちゃんと発表されています。そこを見ると「ユーザーが求める情報を適正な量、高い質で提供するのがよい」となっているんですね。
無駄にキーワードを増やしたりすることをユーザーが求めているかといったら絶対にノーじゃないですか。だからそれを評価していくはずがないんです。
――でも現実として「調べてみたけどよくわかりませんでした!」みたいなサイト、いわゆる「いかがでしたかブログ」みたいなのが上位に表示されちゃってたりもしますよね。
石川さん:システム的に今はうまくいかなくてそうなっちゃってるという可能性はあると思うんです。でも5年後、10年後を考えたら絶対そういう記事は淘汰されていくはずだと信じていて。
あとは単純にその情報に対する答えがWEB上にないから変な記事が上にきちゃっているケースもあるかもしれません。例えば「○○芸能人 彼女はいるの?」と検索すると「わかりませんでした!」っていうブログが上位表示されてることってありますよね。
これはGoogleもユーザーに正しい情報を提供したいんだけど、Web上に答えがないのでしかたがなく「わかりませんでした!」っていうブログを上位表示させている気がします。実際に、ちゃんとした公式発表とかメディアの一次ソースが出ると、そういうものは自然と淘汰されていっていますし。
――じゃあ石川さんがメディアを運営する上で「こういう記事にしたらSEO効果があるよ」っていう具体的な方法ってなんなんですか?
石川さん:えーと、うちのメディアの記事に関してはSEOやってないです。
――バカな。
石川さん:SEO的っていう言葉がちょっとおかしいと思ってて、別にメディアはGoogleのために記事を書いてるわけじゃないじゃないですか。あくまで「読者が欲しい・役に立つ情報を提供しよう」とかって考えてるので、俗にいうキーワード詰め込むとかそういう関連のSEO施策は全くやってないです。
――そもそも会社のSEO施策を試すためにメディアを始めたのにSEOをやってないという。
石川さん:だってGoogleの基本方針に沿えば、ユーザーの検索需要を満たす記事を書くことが自然とSEO施策になるはずなんですよ。そしたらいわゆるSEOをやらずに検索順位を上げられるんじゃないかと。「ユーザーのためになる記事を書くのが一番のSEO」というところに至りました。
――めっちゃいい話だ……。なんとなくSEOってキーワードを入れまくるみたいな「小手先でズルをする」ってイメージがあったんですが、究極のSEO施策は「いい記事を書く」だと。
石川さん:そうしたら結局普通にメディアを運営するのと何も変わらなくなりました(笑)。
メディアの拡大ではなく「量より質」を目指す
――具体的にはどういうメディアを運営しているんですか?
石川さん:現在は主に「クレジットカードを知る」「お金借りるを知る」「フレッツ光ガイド」「これが日本のお寺・神社だ!」という4つのメディアを運営しています。
――ジャンルがバラバラですけどどういう基準で選んでるんでしょう。
石川さん:金融系に関しては市場規模で選びました。あとは近いテーマのものだったりクライアントさんとの兼ね合いで始めたりといった感じですね。
――いわゆるSEO施策はしてないって言ってましたけど、それでもちゃんと上位表示されるものなんですか?
石川さん:例えば「ETCカードでショッピングはできるのか?」って記事を書いたことがあるんですけど、これはそういう情報が欲しい方のために「こういうときはできます、こういうときはできません」ってことだけを書いた500文字くらいの記事なんですよ。でも「ETC 買い物」とかで検索するとちゃんと上位に表示されてます。
――確かに「いかがでしたかブログ」とかにありがちな余計な前置きとかもなくて、必要な情報が簡潔にまとまってます。
石川さん:ユーザーが知りたい情報ってこれだけじゃないですか。何千文字も書くほうがむしろおかしいなと。
――完全に普通のメディアだ。え、これをクヌギさんが運営することでどんな利益があるんですか?
石川さん:なんですかね。読者さんにいいコンテンツを届けるくらいしかないですね……。
――この厳しい資本主義社会でそんなことあります?
石川さん:メディアってテレビとかもそうですが、面白いコンテンツを提供するからそのかわりちょっと広告だけ差し込ませて、っていうビジネスじゃないですか。うちのようなWebメディアもそれと一緒で、ユーザーの知りたい情報に対して一定の解答をあげるかわりにちょっとだけアフィリエイト広告を入れさせて、っていう。ユーザーに役立つ情報を届けてそのバックで広告収入を得るっていう基本理念は同じですよね。
うちもメディアごとに売上目標は決めてるんです。でもそこを超えたらあとは何やってもいいよ、ということにしていてそれ以上の無理な拡大は目指さない方針なんです。
――すごい。普通これくらいもうかったら次はもっともうけようとなりそうなものですが。
石川さん:その分質だけは落とさないようにしよう、としています。ベンチャーだからこそできることでもあるとは思いますが。
――自分たちもメディアなのでわかりますが、質にこだわるってあらゆるメディアの理想にしてジレンマでもあるところですよね。売上を突き詰めようとするとどうしても、それこそ「いかがでしたかブログ」みたいな記事でもたくさん作ってたくさんアクセス集めたほうがえらい、となってしまいがちで。
石川さん:やっぱり売上重視で「もっとやれ、もっとやれ」とやると中の人が疲弊して辞めちゃったりするのでよくないんですよね。しかも、ユーザーに対してクオリティの低い記事やあまり面白くないものを提供するのは編集者としても心が痛みます。
メディアを続ける中でそうしたこともわかってきて、あるタイミングから「量より質」という方針にはっきり転換しました。本来の意味でのSEOとしてもそっちのほうが正しいと思いますから。
正攻法が通じなければ「仕組みがおかしい」
――質に特化したメディアにするためにやってることってありますか?
石川さん:うちはライター経験はあるけど編集は未経験という状態で入ってくる人が多かったんですね。もちろん金融の知識とかもゼロから学んでいく必要があって。なので私も含めて金融系メディアの編集者全員でファイナンシャルプランナーの資格試験を受けに行きました。
――ええっ、会社からそういう指示があったんですか?
石川さん:いや、私が言い出しました(笑)。別に資格が取れないと仕事をさせないとかではなく、そのために勉強することが大事だと思ったんですね。記事制作の際はもちろん専門家の方の監修とかもついてますけど、やっぱり自分たちの知識も深くなったほうがいい記事が作れるだろうということで。
――もともとSEO施策を試すために始めたメディアでそこまでする必要あります……?
石川さん:でも「読者のために」っていうとみんなちゃんと取り組んでくれるんですよ。やっぱり編集者ってそういうマインドがあるので。知識を身につける必要があれば経費はちゃんと会社が出してくれますし。
――みなさん自分のやってるメディアにすごい愛情があるんですね。
石川さん:あと他のSEO媒体さんに比べてですけど、1記事にかける時間は長いですね。1本3、4日とかかかっているのでメディアによっては月に新規記事10本くらいしか上がっていないです。
――どれくらいの人数で運営してるんですか?
石川さん:編集は1メディアに1人、ライターさんがそれぞれ3〜4人いる感じです。それが現在4メディアあります。あとは情報って古くなるのでそうした記事は再編集してなるべく新しい情報に更新しています。やっぱり正しい情報をできるだけ多くしたいので。
――話を聞いているとものすごい正攻法でSEOをやっている感じですよね。一方で「いかがでしたかブログ」みたいに検索の仕組みをハックするような方法のほうがお手軽だし誰でもできるといった側面もあるかと思うんですが、そこに「いい記事を作る」ってやり方で真正面からぶつかって本当に太刀打ちできるものなんでしょうか。
石川さん:できなかったら仕組みがおかしいんじゃないですか?
――真理だ……!
石川さん:Googleの基本方針がユーザーのためになるものを提供する、ということなので、そこがうまくいってないのであればどんどんGoogleにフィードバックしていくべきだと思います。近年の社会の流れ的にもインターネットをよくしようという方向にどんどんなってきているので。
たぶん正攻法で成功モデルになるメディアが1つ出れば、「これでもできるんだ」って続いてくれるメディアも増えると思うんですよ。そういうメディアが増えれば検索体験も豊かになってくる。その成功事例を作りたいって気持ちはありますね。
――小手先の技術に頼らず「インターネットをよくする」ってすごい壮大なSEO施策ですね。
石川さん:でもそれがユーザーの一番望んでいることですから。そうならざるを得ないと信じています。
クヌギではライター・編集者を募集中
そんなクヌギでは現在、メディア運営に携わりたいライター・編集者を募集しています。募集人材はずばり「読者のためになる面白い記事を作りたい人」。専門知識などはゼロからでも学んでいけるので、興味のある方はぜひ一度お話を聞きに行ってみてください。
ちなみに石川さんに欲しい人材について聞いてみたところ、「あんまりSEOに固執していない人」との回答でした。従来のSEO施策にとらわれない、「いい記事を作るSEO」に興味のある皆さんの応募をお待ちしております!
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提供:株式会社クヌギ
アイティメディア営業企画/制作:ねとらぼ編集部/掲載内容有効期限:2019年10月10日