コンビニおでん中止・縮小のピンチ!〜きめ細かなビジネススタイルも限界?
人手不足もあり、物を届けていくことが難しくなっている。
ニッポン放送「ザ・フォーカス」(10月30日放送)に作家・ジャーナリストの河合雅司が出演。人手不足による物流、経営問題について解説した。
コンビニおでんが中止や縮小 人手不足が原因
大手コンビニの店舗を中心に、レジ横でのおでん販売を中止、縮小する動きが広がっている。調理時間が長いおでんは清掃や補充にも手間がかかることから、従業員の人手不足が加速するなか、店側が敬遠する傾向があると見られている。
森田耕次解説委員)コンビニのレジ横にあるおでんの販売ですね。これを中止、縮小する動きが広がっているということで、つゆに長時間浸すおでんは販売できる時間が短い、清掃や補充にも手間がかかるということです。大手コンビニによると、おでんのつゆというのは煮込んでから9時間が販売目安の時間とされていて、おでんのたねはつみれが3時間、さつま揚げやこんにゃく、ロールキャベツが5時間、大根や卵が8時間などと販売目安の時間が細かく規定されているのです。ですから、温度の管理、衛生管理、補充もしなくてはいけません。廃棄時刻も記入しなければいけないという細かいマニュアルがあるそうですよ。
河合)(おでんはコンビニ店員が)調理しているので、人手が足りないなかで細かなことをずっとやっていくのは難しくなってきているのでしょうね。
森田)大手コンビニのファミリーマートは食品ロス削減というのもあるのですが、おでんの販売、展開期間をこれまでの8ヵ月間から3ヵ月間に短縮します。来年1月からは個別注文で電子レンジを使って温める方式を取り入れる方針だということなのですね。コンビニは人手不足で細かいことはやりにくい。
地方の人手不足が深刻化
河合)外国人留学生のアルバイトの人は多いのですが、従業員そのものとして外国人労働者(が就業できる職種)の対象にして欲しいという要望が強い業種です。大都市のなかもそうなのですが、少し地方へ行くとアルバイトの方を集めるのが大変だということです。少ない人手でお客さんをたくさん捌かなければいけない状況のなかで、おでんまでやるのはなかなか負担が大きいですよね。この間〈おでんの仕込みをしている間〉に他のお客さんを待たせてしまうことにもなります。
森田)我々利用者としては、コンビニは24時間空いてくれていて、何でもそろって便利なのですが。
河合)おでんだけでなく宅配便の手続きとか、公共料金の支払いなどと便利なのですが。
森田)業務がどんどん広がっていますね。
河合)外国人のアルバイトの方にもお客さんからいろいろな要望が来るので、対応は大変だと思います。
森田)これから流通の問題も出てくるでしょうから、品揃えもしっかりできなくなるということが今後起こり得るということでしょうか。
顧客も減少 ビジネスが困難に
河合)人手不足に加えて、買い物に来るお客さんの不足も各地に広がると思います。
森田)お客さんも減るのですね。
河合)(お客さんは)減ってきて、(商品を)運ぶことも難しくなってくるということで、一部のコンビニでははじまりましたが、店舗の整理、合理化もこれからは増えていかざるを得ないでしょう。
森田)台風のとき、コンビニでは運送ができなくなったことによりお弁当などがなくなったりしましたからね。
河合)コンビニは(大きな)倉庫がない経営なので、何時に何個届けて何個売れるという見込みを立ててやっています。
森田)そういうきめ細かなビジネススタイルというのがこれから厳しくなっていくのでしょうか。
河合)これまでは人がたくさんいたから、(きめ細かな流通システムは)できていたのです。人が減ったらなかなかいろいろな仕組みが上手く機能しなくなるということでしょうね。
森田)ツイッターでも“くどけん”さん「おでんはレンジで頼んで容器に入れるので時間がかかるので、レジ前にはすぐ列ができてしまっていろいろ大変。できれば自分で入れるか、調理済みの袋に入ったものを買って欲しい」。それから“あしたトゥデイ”さん「おでんは確かに美味しいけれど、手間のかかることを考えたら縮小、廃止はやむなしか。でも私は年中おでんが食べたい」と来ています。
河合)(おでんに関しては)パックで温めるものにしてもらうしかないかもしれませんね。
政府は地方企業の共同経営を認める方針
森田)それから、29日の政府の未来投資会議では、経営環境の厳しい地方のバスの事業者や地方の銀行に対して合併や共同経営を弾力的に認める特例法案の概要を固めて、来年の通常国会に提出するようです。バスだと、統合する事業者が運行回数や路線を事前協議して調整し、収入を分け合う運賃プール制も認めると。これまでは独禁法で規制されていたのですが、路線や運行ダイヤを見直して、山間部も含めて分担したりするようにしなければいけないと、政府も動き出しましたね。
河合)いま東京の都バスも運転手不足で、運転間隔を広げるという対策が始まっているのですね。地方では路線バスに荷物を載せて運ぶこともやっていて。
森田)宅配のような運送業者みたいなことをバスがやっているのですね。
河合)バスの前の方はお客さんを乗せて、後ろの席を荷棚にして集配所まで持って行くような、運転手の不足をカバーするような方策は考えているのですけれども、そもそもお客さんの数が減ってくると統合だけではうまくいかないので、未来投資会議のアイデアは過渡期の政策という位置付けになってくると思います。そもそもバスに乗らなくてもいろいろなことが自分の近所で機能していくようなコンパクトな街づくりまで考えていかないといけなくなるでしょう。(今後は)目的の場所まで行くことが難しくなる地域が増えてくるでしょうから。ある程度人が集まっていれば、そこへお店の方が来てくれる巡回型(配送サービス)ができるのですが、最後はそういうところまでやっていかなければいけなくなるでしょう。
森田)ある程度狭いエリアのなかに病院や学校などがあって。
河合)そこに商店街だったり、そこへ(商品などを)運んでくる事業をやるということです。運んで物を売る商売もいま赤字になっていて、どんどん撤退しているのですよ。ある程度数の消費が見込める状態をつくっていかないと、(巡回型の配送サービスも)人口の急減が予測されるエリアはやっていけません。ただ(銀行やバス会社が)規模を大きくするだけではうまくいかないでしょうね。
森田)そうすると、それこそ山間部みたいなところからある程度違うところにまとまって。
河合)地区ごとにそういうところをつくるのがいちばん現実的だと思います。せめて500人や1000人くらい人が住んでいる状況をつくっていかないと、(多くのサービスの立地は)難しいですね。
森田)コンビニなんかもそういうところに1つあるけれど、という。店舗に関しても、縮小統合みたいな形になってくると。
河合)物流だけでなく行政サービスも含めて、物を届けていくことが難しくなっていますので、社会のあり方も考えていかなければいけません。これが今後の内政の大きな課題になるだろうと思います。
森田)この「コンビニおでん曲がり角」なんていうのは、まさに象徴的ですね。
河合)(おでんの話は)あの頃そんな話をしていたな、という風に思い起こすような事例になると思いますよ。
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