「どれだけ研鑽を積めばウメハラの領域にいけるのか」 東大卒プロゲーマー・ときどが語るeスポーツ界の新たな課題と“最強”への道筋(4/4 ページ)

» 2019年11月02日 13時00分 公開
[イッコウねとらぼ]
前のページへ 1|2|3|4       
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

日本で「若きスーパースター」が出てこない理由

ときど:もうねー……今の若手は頑張ってると思いますよ。ゲームの腕前という意味では、昔の僕なんかよりも上を行ってますから。ただ、格闘ゲームってリアルタイムで考える時間がほとんどないので人間味がプレイを決めるんですよ。そういう意味では、若手に色んな経験をさせてあげられてないなとは思います。僕も昔は先輩のゲーマーにムチャなことさせられて、それが人間力を上げる良い経験になったこともありましたから(笑)。

――海外の格闘ゲームシーンを見ていると、20代前半以下のプレイヤーがスタープレイヤーとして大活躍していますが、日本では「スマブラ」のザクレイさんなどの例外はいるものの「若きスーパースター」と呼べるプレイヤーの輩出は遅れている印象です。

※ザクレイ:「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズで活躍するプレイヤー。もともと国内での評価は高かったが、2019年からは積極的に海外大会に出場し、優勝を含め好成績を残し続けている。高校生ながら、日本最強スマブラーとの呼び声も高い。


ときど:……現状、上の世代のプレイヤーが別け隔てなく切磋琢磨でき過ぎていると思うんですよ。今は戦国武将が江戸に全員集まって、毎日「合戦じゃあ!!」ってやってるわけですから(笑)。そんな中で若手が強くなろうとすると、上の世代の影響は絶対に受ける。格闘ゲームの世界にもトレンドがあるじゃないですか。流行りの戦い方が。

 「ストV」では海外のパンクメナに勢いがありますが、彼らの国の場合は上の世代が集まって切磋琢磨する空間がなかったですし、彼ら自身が引っ張っていかなければいけない存在だった。だから自分の感性・スタイルを伸ばしやすい環境だったんですよ。その影響で、彼らには僕らには無い独自の考え方がある。

※パンク:アメリカで活躍する21歳。EVO2017ではときど選手と決勝で戦い、惜しくも敗れたことでも知られる。今季も絶好調で既に6つの大会で優勝している。


※メナ:正式なプレイヤーネームは「MenaRD」。ドミニカで活躍する弱冠20歳のプレイヤー。世界最高峰のバーディー使いとして知られ、「ストリートファイターV」の公式世界大会「カプコンカップ」での優勝経験もある。


――なるほど、海外では一つの地域に強いプレイヤーが集中していなかったと。

ときど:これが日本になると、独自のスタイルが若手の中にあったとしても、一緒に練習すると僕らの世代が勝ってしまうのでその可能性をつぶしてしまう。これは経験が少なかったり技術が追い付いてないだけだったりするのですが、若手は「このやり方じゃだめなのかもしれない」と思って、上の世代の考え方やトレンドを取り入れて追随せざるを得ない。


ときど

――……ということは、少なくとも日本のストリートファイター界においては、ベテランプレイヤーが若手の成長を阻害している可能性があると。

ときど:まぁそうなってますね。でも、これは本当に難しい問題ですよね、一人で練習を続けたり若手だけが集まって練習しても、海外の大会でTOP8に残るような実力が得られるかというと、僕はそうじゃないとも思いますし。

 それに、僕らも現役なんですよ。まだまだプレイヤーでやっていきたいですし、自分が強くなりたくてオープンにそういう練習をしているんです。若手は頑張っているんですけど、上がこんなに真面目にゲームに取り組んでいるので、それ以上のやり方をしないと難しいと思うんです。本当にハードルは高いんですが……。



「楽しくないとこんな生活やってらんないですよ」

――ところで旬な話題なので聞かねばならないのですが、JeSU(日本eスポーツ連合)に関してはどう思います?

ときど:これね……僕は全体でみたら法整備をしてくれる団体は必要なのかなと思ったので、ライセンスを受け取ったんですよ。まぁ僕らがというよりは、僕らよりも下の世代が恩恵を受けられるような仕組みができてほしいなと思って、今は見守っているというか……(笑)。

――すごく答えづらいと思うのですが……ももちさんの件はどう思われます?

※JeSUを巡る騒動:9月の国内大会で優勝した「ももち」選手が、JeSUが交付するプロライセンスを保持していないことを理由に本来の賞金500万円を10万円に減額された問題のこと。ももち選手はJeSUによるプロライセンス制度が発表された際、その正当性を疑問視する意見を表明したことがある(関連記事)。


ときど:むしろももちの意見が聞きたいぐらいですよ。……話し合いとかどうなってるのかなあ。

――ご本人と共演する機会もありますが、そういった話になったりしないんですか?

ときど:……いや、聞けないんですよ(小声)。やっぱりねえ……僕にとってあいつは“ゲームでぶっ倒したい奴”なんですよ。そういう人と、そういう話はしたくないんですよねえ。

――とても競技者らしいコメントですね……。

ときど:あいつ、対戦していても「こいつにはどんなバックボーンがあるんだ……?」って思うくらい我慢強いし、意思の強いプレイヤーなので……解決すんのかなあ……。

――ときどさんは以前は多タイトルで活躍していましたが、現状ストリートファイターをメインに活動していますよね。今後他のゲームへの進出する予定は?

ときど:予定はないですけど、やらないとも言ってないという感じですね(笑)。

 人が多いゲームはうらやましいなと思うので「鉄拳」とか、ゲーム性は違いますけど「スマブラ」とか。やっぱ複数のタイトルを同時にやるよりは、やるんだったらストリートファイターから離れる覚悟でやることになるだろうなと。

――それはつまり、他のゲームに行っても活躍する自信はあると?

ときど:時間がすごくかかる自信もあります(笑)。時間さえかければやれるぞという意気込みはありますけど……「やってないやつが何を言ってるんだ」とコメントされる未来が見えますね。まぁいいか(笑)。


ときど

 ストリートファイターには倒したい奴が多いんですよね。梅原さんだけでなく、ももち、ボン、マゴ、ネモとか。みんな必死でやってますし、面白い奴らも多いですから。

――では最後に、今後の目標はありますか?

ときど:目標ですか……短期的な目標でよければカプコンカップ(カプコンが開催する公式世界大会)優勝になりますけど。長期的な目標としては、業界を背負えるような存在にならないといけないなと。それと同時に「ゲームって良いものだぞ」……って言いたいんですけど、世間の目は厳しくて世間の認知とギャップがあると受け入れてくれないので、「ゲームはそんなに悪いもんじゃないんだぞ」っていう言い方をしようと思っています(笑)。

――ありがとうございました。今日一日話を聞いていて思ったんですが、ときどさんは本当に根っからゲームを楽しんでるんだろうなあという印象ですね(笑)。

ときど:そうですね。楽しくないとこんな生活やってらんないですよ。ゲームやってジム行って筋トレしてつらい思いして、食べ物もナッツをポリポリ食べてると「餌みたいだな」って言われたりして(笑)。それでも続けられるのって、ゲームが好きだからなんですよ。


ときど

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/19/news043.jpg 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に【大谷翔平激動の2024年 「お菓子」にも注目集まる】
  2. /nl/articles/2412/18/news131.jpg 「昔モテた」と言い張るパパ→信じていない娘だったが…… 当時の“驚きの姿”が2900万再生「おおっ!」「マジかよ」【海外】
  3. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  4. /nl/articles/2412/18/news047.jpg トイレットペーパーの芯を毛糸でぐるっと埋めていくと…… 冬に大活躍しそうなアイテムが完成「編んでるのかと思いきや」【海外】
  5. /nl/articles/2412/19/news056.jpg 「何故バレないと思ったのか」 アニメグッズ購入が“親にバレた人”にツッコミ殺到 ひと目で分かる原因に「そりゃバレますって」
  6. /nl/articles/2412/17/news060.jpg 100均のファスナーに直接毛糸を編み入れたら…… 完成した“かわいすぎる便利アイテム”に「初心者でもできました!」「娘のために作ってみます」
  7. /nl/articles/2412/18/news016.jpg プロが教える、年末までにしたいお風呂の掃除術 目からウロコのワザに「なるほど」「これは保存だ!」
  8. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  9. /nl/articles/2412/17/news047.jpg 遊ばなくなった“シルバニアのおうち”を大改造したら…… 娘が喜んだ“すてきなアイデア”に「なんということでしょう」
  10. /nl/articles/2412/16/news079.jpg “プラスチックのスプーン”を切ってどんどんつなげていくと…… 完成した“まさかのもの”が「傑作」と200万再生【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」