「コイツさえ倒せば、俺が世界一だ」 快進撃を続けるプロ格闘ゲーマー・GO1は”全米史上最高の天才”をどうやって倒したのか(1/2 ページ)

悟空とベジータのようなライバル関係。

» 2020年02月02日 15時00分 公開
[イッコウねとらぼ]

 「次はソニックフォックス、お前だ」――2018年2月24日、大阪を拠点に活動するプロゲーマー「GO1(ゴーイチ)」の発言が世界中の格闘ゲームコミュニティーで大きな注目を集めた。


GO1 「次はソニックフォックス、お前だ」と宣言したシーン。このときのGO1の強さは他のトッププレイヤーから「他のどのプロゲーマーがやり込んでも倒すことができないのではないか」と言われるほどだった(画像はYouTubeより)

 GO1のこの発言は、当時発売したばかりだった格闘ゲーム「ドラゴンボール ファイターズ」の国内イベントで優勝した際に残されたもの。そしてこの“宣戦布告”の矛先は、アメリカの格闘ゲーム界で目覚ましい活躍を続け“全米格闘ゲーム史上最高の天才”とも評されるプレイヤー「ソニックフォックス」に向けられていた。この2人はこれ以降何度となく激突し、そのライバル関係は今も続いている。

 格闘ゲーム界において最も権威のある大会「Evolution」(EVO)では2年連続で決勝で戦うなど、2人のライバル関係は「ドラゴンボール ファイターズ」の人気の原動力ともなっているが、GO1はソニックフォックスとのライバル関係と彼の非凡な才能をどう捉えているのか。「ドラゴンボール ファイターズ」の公式世界大会を2月8日に控えた今、GO1本人に話を聞きながら2人のライバル関係をひもといていく。


画像 GO1:CYCLOPS athlete gaming所属のプロ格闘ゲーマー。2000年代から活躍を続けており、「ドラゴンボール ファイターズ」の他にも「MELTY BLOOD」「ストリートファイターV」「電撃文庫 FIGHTING CLIMAX」などさまざまなタイトルで結果を残すマルチゲーマー。EVO2019の「ドラゴンボール ファイターズ」部門では、決勝戦でソニックフォックスとの激闘を制し、見事世界一に輝いた。格闘ゲームを本格的に始める前は音ゲー勢としても有名だった

ソニックフォックス(Sonic Fox):現在21歳。アメリカで活動し、EVOで5度の優勝をはじめ数々の実績を残しているプロゲーマー。ディフェンス力が特徴的なGO1とは対照的に、リスクを恐れない大胆な攻めが持ち味。楽しんでゲームをプレイする姿や人間性の素晴らしさから、今では日本国内でもファンが多い。The Game Awards 2018ではベストeスポーツプレイヤーに選ばれた。


「コイツさえ倒せば、俺が世界一だ」

――GO1さんは「ドラゴンボール ファイターズ」の発売以降、現在に至るまで大活躍を続けていますね。

GO1: そうですね。「ドラゴンボール ファイターズ」が2018年2月に発売されてから、5月末まで負け無しでした。ただ、それ以降もTOP8には常に入れていたんですけど、優勝できないことが少しずつ増えていったんです。そのころは、トップに立つための成長とトップに居続けるための成長の違いを理解できてなかったので、取り組み方に問題があったと考えています。2019年は優勝し続けていても常に上を目指すよう心掛けていたので、良い成績を残すことができましたね。

――GO1さんが注目を集めるきっかけになったのは、2018年に大阪のイベントで優勝した際に残した「次はソニックフォックス、お前だ」という発言だと思いますが、なぜこの発言を?

GO1: 僕は発売直後からこのゲームで「日本最強」と言われていたんですが、アメリカではソニックフォックスが色んな大会で勝ち続けていて「アメリカ最強」という状況でした。そのころ「GO1とソニックフォックスはどっちが強いんだ?」とネットでも言われていたので、「こっちからプロレスを仕掛けてやるか」と思って言ったんです。そしたら向こうも配信上で「GO1、お前はもう死んでいる」と言ってくれて、乗ってくれましたね(笑)。実際かなり意識してたんですよ。「コイツさえ倒せば、俺が世界一だろう」と。

――その発言をきっかけにライバル関係が続いていくわけですが、ソニックフォックス選手のキャリアの中でもEVO2019の結果は素晴らしかったですね。「ドラゴンボール ファイターズ」部門ではGO1さんに決勝で破れて2位でしたが、「Mortal kombat 11」では優勝していて、あわや2冠だったわけで。

GO1: 実は僕も「Mortal kombat 11」をやってみたんですけど、当然そんなに簡単に勝てるゲーム性じゃないんですよ。攻略も進んでいますし強いプレイヤーもたくさんいるのに、それでも彼は「ドラゴンボール ファイターズ」や他のゲームでも結果を出しながら勝ち続けている。それに、ソニックフォックスは学生で勉強もちゃんとしているので、専業プロゲーマーとは違いますからね。

――何度も戦ってきたGO1さんにあえて聞きたいのですが、ソニックフォックスの強みはどういったところにあると思いますか?

GO1: そうですね……ちょっと説明が難しいんですけど、例えばじゃんけんで2回連続でグーを出されたら「3回目はもう一度グーなのか、変えてくるのか」と考えるじゃないですか。格闘ゲームではそういう「相手が対応してくるかどうか」という基本的な駆け引きがあるんですけど、彼と戦うとそこから一歩先を読まれているような感覚があるんですよ。同時にアメリカンスタイルというか、大雑把なプレイをする大胆さもありますし、フィジカル面も強い。色んな人と戦ってきましたけど、今までに見たことがないプレイスタイルなんですよね。

――直近の2人の対決で言うと、GO1さんは大会11連覇中だったところを2019年11月の「Red Bull Dragon Ball FighterZ Spain Saga」でソニックフォックスに破れました。どこに敗因がありましたか?

GO1: まず、ソニックフォックスはそれまでは上位プレイヤーが使うことがほとんどなかった「黒ベジータ」というキャラクターを使用してきたんです。キャラ変更をしたということは知っていたので、一応技を調べたりもしたんですけど、実際に戦ってみると想像以上に強かった。彼は本当にキャラクターのポテンシャルを見抜く力があるんだなと実感しました。しかも、ソニックフォックスは大会で戦う前に黒ベジータの強さをプレゼンしてくれたんですよ。「このキャラクターマジで強いんだよ!」って(笑)


画像 ※黒ベジータ:ゲーム中の正式名称は「ベジータ」。超サイヤ人に目覚める前の“黒髪の”ベジータを指す。高威力かつ高難度コンボが特徴。もともと評価が低かったわけではないが、トッププレイヤーが使用する例はほとんどなかった(画像は「ドラゴンボール ファイターズ」公式サイトより)

画像 「Red Bull Dragon Ball FighterZ Spain Saga」で優勝した後、インタビューに応じるソニックフォックス。ゲイであることを公言する彼は、試合中もトランスジェンダー旗をまとって戦っていた(画像はTwitchより)

――レアなキャラクターは相手の意表を突くことが可能なはずですが、逆に大会前に手の内を明かしたってことですか?

GO1: そうなんです。全てを明かした上で「これでお前を倒すから」とか言われて(笑)。ソニックフォックスは本当にゲームを楽しんでいるだけで、何も隠さないんですよ。普通は逆ですけど、彼の場合は「全部教えた上で楽しく戦って、そして勝つ」ということができてしまう

――他の競技でもそうですが、格闘ゲームにおいても「天才」と呼ばれるプレイヤーは存在します。お話を聞いていると、ソニックフォックスは誰もがうらやむような才能を持っているんだとあらためて感じますが、格闘ゲームで活躍するために才能は必要だと思いますか?

GO1: ある程度の才能は必要かもしれませんが、最終的に重要なのはやはり努力だと思いますよ。例えば、格闘ゲームでは強いプレイヤーの条件として「天性の反応速度をもっているかどうか」が語られがちですが、反応速度はそこまで重要じゃないと思うんですよね。結局は人と人との戦いなので読み合いや経験が結果につながっていますし、そういう部分は経験を積むことで身についてくる。結局、楽しんで続けることができれば自然と強さはついてくるんです。


画像

 僕も負けると悔しいですし気持ちが折れてしまいそうになるので、それを乗り越えられるようなモチベーションを維持する努力をしています。もちろん、必要な努力はそれだけではないですけどね。

――なるほど。しかし、ずっと続けているのに強くなれないプレイヤーもいますよね。

GO1: それは向上心の差です。「自分はここまでで大丈夫」とか「身内の中では強いからこのくらいでいいか」とか思ってしまうプレイヤーも居ますけど、そういった人は「世界一を目指す」と思っている人には絶対にかなわないですからね。

――「効率的に努力するべき」という話はさまざまな分野で聞かれますが、GO1さんもソニックフォックスもそれを体現しているのかもしれませんね。

GO1: そうですね。ただ、僕は彼と最初に戦った時かなりの大差で勝てましたが、一週間後にやったら負け越すことになったんです。彼の場合はさまざまなタイトルで活躍しているところからも分かりますけど、攻略スピードも尋常じゃないのでシンプルに頭が良いのかもしれないですね(笑)。もちろん、努力もしているはずですが。

――ただ、ソニックフォックスの場合は直近のEVOでほぼ毎年優勝していますし、努力でどうこうできるレベルじゃないような気もしますね……。

GO1: まぁ……彼に限っては天才ですね(笑)。あの戦績はちょっと異常だと思うんですよね、はっきり言って勝ちすぎです

※ソニックフォックスの戦績:まだ21歳という若さでありながら、年々レベルが上がっている近年のEVOで5回優勝(2014年、2015年、2016年、2018年、2019年)。EVO以外の国際大会でも「Injustice」「DEAD OR ALIVE」「MARVEL VS. CAPCOM」「スカルガールズ」「ソウルキャリバー」「UNDER NIGHT IN-BIRTH」など数多くのタイトルで優勝経験があり、「鉄拳」「ストリートファイター」でも好成績を残している。(参考:格ゲープレイヤーwiki


マルチタイトルで活躍するリスク

――GO1さんは複数タイトルで活躍する「マルチ格闘ゲーマー」としても有名でしたが、「ドラゴンボール ファイターズ」のリリース以降はほぼこの1本に絞って活動していますよね。今も他のゲームをプレイすることはあるんですか?

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/31/news019.jpg “部屋が汚すぎて”彼氏に振られた女性→1人孤独に片付けを続け、600日後…… まさかの光景に「感動しました」
  2. /nl/articles/2501/29/news009.jpg 高校生のときに出会った“同級生カップル”→「親に頼らん!」と必死に貯金して…… 19年後、現在の姿に反響
  3. /nl/articles/2502/01/news088.jpg 「痩せた」 大谷翔平、“最新ショット”に驚きの声 “寝ぐせ”にツッコミも……「うわ凄い絞ってる」
  4. /nl/articles/2501/28/news188.jpg 「やられたな」 ベトナムで「FUJITSU」だと思って購入した家電→“衝撃の正体”に思わず戦慄
  5. /nl/articles/2502/01/news039.jpg 生え際後退で老けて見える25歳男性、プロが大胆カットしたら…… 「不可能を可能にした」「35歳から15歳に」大変身が740万再生【海外】
  6. /nl/articles/2501/30/news026.jpg 普通の折り紙1枚を、パタパタ折っていくと…… プレゼントにぴったりな美しいアイテム完成に「すげぇつくりたい」「かわいい」
  7. /nl/articles/2501/31/news041.jpg 水道検針員から直筆の手紙、確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生→大反響から1年たった“現在の様子”を聞いた
  8. /nl/articles/2502/01/news008.jpg 【ハギレ活用】「もう最高……」 着物のハギレをリメイク→わずか30分で“すてきなアイテム”が完成! 「私にもできそう」
  9. /nl/articles/2502/01/news047.jpg 【編み物】彼氏のために、緑と黄緑の毛糸を正方形に編んでつなげると…… 圧巻のおしゃれな大作完成に「息をのむほどすばらしいよ」
  10. /nl/articles/2501/31/news215.jpg 「こういうの大好き」 ユニクロ“3990円パジャマ”が発売前から話題騒然 「最高」「シンプルで良い」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  2. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  3. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議
  4. スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
  5. 東京藝大卒業生が油性マジックでサンタを描いたら? 10分で完成したとんでもない力作に「脱帽です」「本当にすごい人」
  6. 定年退職の日、妻に感謝のライン → 返ってきた“言葉”が約200万表示 大反響から7カ月たった“現在の生活”を聞いた
  7. 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
  8. 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  9. 「すんごい笑った」 “干支を覚えにくい原因”を視覚化したイラストが勢いありすぎで1700万表示の人気 「確かにリズム全然違う!」
  10. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  4. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  9. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  10. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議