70歳就業法案が持つ2つの課題
管理職だった人は定年後に会社で何をすれば……。
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月5日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。高年齢者雇用安定法の改正案について解説した。飯田浩司が休みのため新行市佳が進行を務めた。
希望者は70歳まで〜政府が就業促進法案を閣議決定
政府は4日、希望する人が70歳まで働き続けられるよう、定年の延長など就業機会の確保を企業の努力義務とする高年齢者雇用安定法などの改定案を閣議決定した。少子高齢化が進むなか、働く意欲のある高齢者が働きやすい環境を整え、社会保障制度の担い手を増やす狙い。
新行)高齢者や副業、兼業の増加など働き方の変化に合わせた改正で、今国会で成立すれば2021年4月から施行されることになります。努力義務という形で、雇用の上限を70歳にまで引き上げようということですね。
佐々木)大事なポイントは、働きたい人と働くのがつらい人の、両方の面倒を見ることです。働きたいのに定年して働く場所がないと困っている人もいれば、一方では疲れたからゆっくりしたいという人もいます。両方に対応できなければいけません。いま寿命が延びているということがあって、よくツイッターで話題になるのですが、半世紀くらい前の手塚治虫さんの漫画を見ると、「60歳の老婆」という表現が出て来るのですよ。ひっつめ髪で和服を着て、よぼよぼになったおばあさんが出ていてびっくりするのですが、いまは60歳と言えば中年です。それこそ昔は30代をおじさん、おばさんと言っていたのが、いまは30代も若者扱いですよね。中年の自覚が出て来るのは40代になってからです。高齢者は65歳以上と言いますが、70歳〜75歳くらいにならなければ高齢者ではないという意見も出ています。
健康寿命は男性70歳、女性73歳〜「70歳まで働かなくてはいけない」という抑圧になってはならない
佐々木)一方で日本の平均寿命は長く、男性は79歳、女性が86歳なのです。でも、健康寿命というものがあります。施設や病院に入らなければいけない年齢があって、それは男性で70歳、女性で73歳なのですよ。つまり70歳定年というのは、健康寿命ギリギリなのです。健康である人もいっぱいいるのですが、同時に健康寿命が終わってしまう人もいる。だからこの法律はいいけれど、70歳まで全員働かなければダメだという抑圧になるのはよくないので、切り分けて欲しいと思います。
定年間際はほとんど管理職〜70歳まで何の仕事をするのか
佐々木)もう1つ、大企業ではありがちなことですが、年齢が上がると専門職というよりもいろいろなところを回って、管理職になってしまいます。新聞社もそうで、新聞記者として定年まで働く人はめったにいません。だいたい40代になれば、人事部や総務部へ行って管理職になる。40歳で管理職になったとすれば、20年くらい管理職をしているのです。その間に専門職ではなくなってしまっている。この人を70歳まで働かせようとなったときに、何をやらせるのか。高齢の管理職は、若い人からすればつらいと思いますよ。もちろん優秀な管理職の人もいるとは思いますが、一方で「昔はよかった」とか「最近の若者は」なんて言うような人が、どんどん積み上がって行くのです。これはよくないので、技術者やエンジニア的な専門職の人が70歳まで働けるようになるのが理想です。管理職はできるだけ若い人に回して行く方向に転換させた方がいいと思います。
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